『眉山』
2007年5月12日公開 東宝
監督:犬童一心 脚本:山室有紀子 (原作:さだまさし)
どーも犬童映画は、ワタクシには合わないみたいです。かったるい映画です。宮本信子演ずる河野龍子が死ぬ前に、こっちのほうが昇天してしまうかと思ったヨ。
でも、阿波踊りの大群衆シーンはよかったです。あれは圧巻でした。映画撮影のために行われた阿波踊り大会であっても、やっているのは本物の方々なのだから、やっぱり見ごたえがあります。腰の決まった男踊り、鳥追い笠密集軍団の女踊り、阿波踊り見に行きたくなったなぁ。その総踊りの列を横切るヤツなんてありかよ、ったく。警備員はおらんのか。陳腐な歌謡曲みたいなマネするなって、原作がさだまさしだから仕方ないか。(原作読んでないよ。)
“かったるさ”を演じて突き抜けていたのは、旅行代理店の守口クン(本田大輔)。いるよねぇ、ひょろ〜ぬぅっとして、やる気があるのかないのか、わかったのかわからないのか、「おい、お前にまかせてええんか?」みたいなヤツ。
ヒロイン咲子(松嶋菜々子)が勤める旅行代理店の上司・綿貫秀雄(本田博太郎)も、あまり仕事ビシバシではなさそうやね。なんとなく顔の造作が垂れ下がって見える・・・と思ったら、上の縁のないめがねを掛けてて、下に凸の曲線が強調されてるせいですね。
まーこの二人は、咲子の有能さを印象付ける引き立て役。その“有能”な咲子が、母親が入院したからと突然休みを取って郷里へ行ってしまう。それでも、全然困らないらしいから、実は旅行代理店では咲子の有能ぶりを持て余してたかもしれんな。
「河野先輩がいないと、仕事しやすいっすネ」「うん。すぐに戻ってこなくてもいいって電話してやろう」とかネ。
咲子の母親・龍子は、大変見事な女ということになってます。しかし、小気味いい啖呵を切って正論をぶつ(といえば聞こえはいいが、看護師・麻帆ちゃんに難クセつけていびってるようなもんじゃん)、浄瑠璃を語る、凛と背筋を伸ばした龍子と、咲子に父親のことをひた隠しにし、そのくせ男から送られた現金書留封筒や書簡を全部取っておく(これって不気味に執念深くオソロシクない?)龍子とどうも結びつきません。1シーン1シーンは、さすがに宮本信子はうまいけれど、トータルとしての人間像が浮かびません。
咲子も咲子で、いい年して、それまで知らなかった父親のことなど、どーでもよいではないか。金を取って見せる映画なんだから、このどーでもいい事柄であるんだったら、なんか斬新な切り口で見せるとかどーにかしてほしいものです。また、それはそれで、松嶋菜々子に切実さ、生身の人間らしさがあれば、ちょっとは面白くなったかもしれない。彼女は、すらりとしてキレイでお人形みたいだけど、それがこの映画のうそっぽさに貢献(?)してしまってる。
検体の慰霊祭で終わってるのが、オヨヨ・・・でしたね。それならそれで、“How to献体”映画として、ちゃんと献体を取り上げればいいのに。龍子は立派な人で献体を申し出ているとか、さもしい。
慰霊祭のシーンで、おっとびっくり。病院長・小畠剛(中原丈雄)のそばに河原崎健三がいるではないか!それまで出てた?エンド・クレジットを見ると、結構な役者の名前がゾロゾロ。名のある俳優たちを何人も無駄に使った映画でもあるのかな?
円城寺あや、山田辰夫はいい感じでした。
客の入りは上々。ただし、おばはんばっか。そういう映画だったのかい。

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