『シャブ極道』
公開:1996年5月28日 大映 DVD PIBD-1099
監督:細野辰興 脚本:成島 出(山之内幸夫)
劇場公開時には『シャブ極道』、ビデオ化の際には上巻が『大阪極道戦争・白の暴力』、下巻が『大阪極道戦争・白のエクスタシー』。日本ビデオ倫理協会(ビデ倫)が、“シャブ”という言葉をマズイと考えたもののようです。
このことについての細野監督自身による報告は↓
http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Stage/1493/biderintenmatu.htm
で、DVD化されるときには原題の『シャブ極道』。2時間44分の長大作品ですが、DVDなら上下に分かれることもない。
覚せい剤が手放せないヤクザ、厳竜組の真壁五味(役所広司)の昭和48年から阪神・淡路大震災直後までのおハナシ。彼は、日本一の組織・松田組の幹部・神崎辰己(藤田傅)の妾・鈴子(早乙女愛)に一目ぼれして彼女を略奪。そして、20億の借金を作って雲隠れした組長を脅して厳竜組を乗っ取ります。
博太郎さん登場はその直後。
DVDのチャプター16、タイトルは、“汚職刑事”と身も蓋もない。確かに、おしょくじ中のシーン。料亭の座敷で、真壁と弟分の下村四郎(渡辺正行)を前に、お椀をズーズーすすっている浦島刑事がその人。お行儀悪い。下村が札束の入った封筒を浦島の前に置くと「いやー困ったな、これは」。公務員の薄給をボヤいてみせて、結局、「ほな、手付として」と懐にしてしまう。厳竜は大阪で下から数えて何番目という小ちゃい組という浦島刑事のヤらしい感じが、ワタクシ的にはかなりツボ。あちこちの組が入り込んできたらとても太刀打ちできない。その対策を勿体ぶってナカナカ話さない浦島刑事、コンパニオンのおねえさん2人がやってくると、大ニコニコ。松田組に中に入ってもらえばとサジェスチョン。見た目、シャブ中のはずの真壁より浦島刑事のほうが何かの中毒者のよう・・・
真壁はシャブで皆を幸せになどと覚せい剤常用&取引に邁進(邁進なんて言葉を使っていいものか?しかし、役所広司演ずる真壁五味は、ハイテンション&上機嫌で、天晴れに見えてしまう。やはり、劇場公開時、成人映画指定というのは妥当)。
次に浦島刑事がちらっと出てくるのは、チャプター23 真壁、パクられる。
16歳の少女の売春相手として真鍋がパクられたと下村の家に知らせにやってくるところ。シャブでパクられたのなら、ウチでどないかなったんやけど・・・だってサ。
何で下村の家かというと、鈴子が真壁に愛想を尽かして家出、下村の家に身を寄せていたため。
その下村も、覚せい剤取引のため滞在中の博多で殺害されます。その後、真壁は常軌を逸しはじめるし、今や松田組の組長となった神崎を下村のカタキとして殺害を目論むし、加納(菅田俊)ら幹部たちは真壁に引退を促すよう鈴子に直訴したりします。
途中にもあったかどうか忘れたけど
忘れがたいのは、チャプター46、汚職刑事の脅し。
真壁がヒットマンに襲撃されて、仕返し準備中の真壁と下っ端組員たち(幹部たちはすでに雲隠れ)のところへ浦島刑事「抗争になったら、ワシの首、飛んでしまうがな」。真壁が神妙にするワケもないですが、いうことをきかないと逮捕すると、浦島刑事、木刀(鞘におさまった長ドス?)で机を叩きつつ、逮捕容疑を列挙します。覚せい剤取締法違反、麻薬及び向精神薬取締法違反、大麻取締法違反。しまいにゃ、唸り声をあげて木刀をビュンビュン振り回し、強制わいせつ罪、恐喝、公務執行妨害。パクったら浦島刑事の行状をあらいざらいしゃべるという真壁に「難儀やなぁ」。
あとは、大地震のさなか真壁は出て行き、鈴子は大震災の神戸で真壁を見つけて、浦島刑事に電話し真壁を助けるため逮捕するように頼む。松田組って神戸が本拠地だったようですネ。鈴子にどアホと怒鳴られて、「はい・・・はい、わかりました。何とかやってみましょう」。
で、船で神崎を襲った真壁の潜伏先に何故か鈴子も落ちあって、彼らを包囲するパトカー。どこのパトカーでしょうね?拡声器で真壁五味と呼びかけるのは浦島刑事。
結末は、真壁と鈴子が手を取り合って外へ飛び出し、『明日に向かって撃て』になるかと思ったら・・・さにあらず、でした。
やっぱり、役所広司演ずるシャブ極道の真壁五味はチャーミングないい奴にみえすぎる!

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