『夏草の女たち』 VTS-F504V
公開:1987年8月8日 六塔社
監督:高橋 勝 脚本:高際和雄(原作:落合恵子『東中野ハウスの夏』)
しぶとくて可愛くて哀しくてたくましい・・・というと、本日公開の『パーマネント野ばら』の女たちのようだけれど、夏草生い茂る大草原の中の襤褸アパート東中野ハウスの女たちもそう。出てくる男たちのほとんどがいい加減で自分勝手、さもなければよんどころない事情で女を置いていなくなってしまう、というのもよく似ています。『パーマネント野ばら』に比べると、ずっと淡白で叙情的。映画『パーマネント野ばら』だって原作に比べれば毒気が足りないけれど、『夏草の女たち』は毒気0。
時代は、昭和27年夏。東中野一帯はあんな風だったのか!ポレポレ東中野まで『ブレスレス』を見に行ったけれど、“夏草や兵どもが夢の跡”の逆パターン、夏草がなくなって兵どもが夢のまっさかりというべきか。
東中野ハウスの住人は、
稲垣雅代(阿木耀子)と友子(神田亜矢子)母子、元芸者の岡野初江(今陽子)、仲居の市川信子(片桐夕子)、米兵のオンリーのミーこと竹内イネ子(山岸真弓)、お互い束縛し合わない自由な関係のヒモがいる戸山瞳(高樹澪)。
彼女たち、それぞれ戦争のせいで婚約者といっしょになれなかったり母子家庭になったりイロイロありまして、自殺未遂とか修羅場みたいなものもあったりします。別れた夫のところから信子が息子・謙一(中垣克麻)を連れてきたりとか、連れ去られたりとか、初七日とかネ。それが、おおむね友子の目を通して描かれます。
それに中学教師の柴田恭一(本田博太郎)と弟。柴田先生は誠実でいい人。『パーマネント野ばら』のみっちゃんのおとうちゃんもそれなりに誠実でいい人なんだけど・・・。柴田先生は、普通の意味の好青年です。雅代といい関係というのはアパートの住人誰もが気づいています。二人の関係をちょっと複雑な思いで見ている友子。
柴田先生のいい表情。
ミーが酔っぱらって帰ってきて、ダーリンが朝鮮の戦地へ行ってしまったと大泣きしてると、住人皆が集まってくる。雅代ももらい泣き(あまり泣いてるようにみえないけど)していると、柴田先生がハンカチを差し出す。あとで友子が思い出すカットのほうが印象的ですが、それは印象的に見えるよう挿入されているからでしょう。
ちょっと面白い柴田先生は
友子と謙一に「コッカドゥドゥルドゥー」を教えているシーン。
これは本田博太郎か?というのは
ミーのダーリンが持ってきてくれた冷蔵庫に氷を届けに来た氷屋さん。歩き方がよく似ているけど麦わら帽で顔がよく見えない!・・・ちょっと見えそうな一瞬があるのであとからまたよく見てみよう。
クレジットに古尾谷雅人の名前が大きく出ていますが、どこに出てたんだろう?たぶん、雅代が回想する友子の父親、結婚しているヒマがなかったという相手ですね。やたら背が高くてひょろながいから。

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