小雨がそぼ降るなかを、でんでんタウンプレミアム商品劵(1セットが1000円劵11枚、500円劵1枚、12枚綴りで10,000円)
「でんでん小判」と称する、10,000円で11,500円分の買い物が出来る商品劵を求めるために家族に頼まれて長蛇の列に入った。あさましきかなではあるが、20万円の―を買って、3万円のテレビかパソコンがその上に買えると、家人にけしかけられて無駄使いの片棒をかつがされてしまった。4人の係員が売る劵を先頭が購入してその最後尾が購入するまで約45分間を要したと聞く盛況ぶりであった。こんなことでは暮の総選挙で某政党がいうデフレを脱却して2〜3%のインフレに導けるのか、日銀劵を刷りまくって後顧に憂いを残すのかと、怪しいことである気がするのだが。
行列から帰って、書架から
『図説―アメリカ軍が撮影した占領下の日本』「太平洋戦争研究会編」を取り出してくる。終戦直後の日本の様子を戦勝者の目で撮られた日本人の姿が満載されている。
今日を生きるためには「いったい何時間待たされるのか・・・」と上野駅で長距離列車を待ち続ける長い行列は関東、東北の農村地帯へ食糧を買い出しに行く人々の行列の群れ。着物など金目のものを持参し、それを農家で食糧と交換する、食うための切実な行列があったのだ。
また、ヤミ市場があった。当時はほとんどが配給制度になっていたが、主食以外はヤミ活動は大目にみられたので、それを求める群集がヤミ市場にあふれた。高見順が
『敗戦日記』に綴った
「昔はなかった風景」が出現していたのだ。
そして、シベリアから日本人はスクラムという行列を組んで帰国してきた。強制連行した日本兵を過酷な労働に従事させ、資本主義打倒、天皇制粉砕の「民主運動」をも強制し、共産主義者へと洗脳していった、終戦一週間前に参戦して勝利者になったソ連の仕打ちが憎い。抑留者は帰国を意味する「ダモイ」を胸に秘めて、厳しい環境に耐え抜いたという。祖国の土を踏み、家族との対面再会のよろこびが伝わってくる。
行列とは、多人数が順序よく並んだ列。また、そういう列を作って進み行くことと、ある辞書にある。が、その列が一旦崩れたならば戦争が始まるのである。実際、あいつは割り込んだからつまみ出せという声が後方でした。ああ、あさましきことにならないでほしいと念じながら寒風に身をさらしていた。
―今日のわが愛誦短歌
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澄むことのたえてあらじよこの冬も
まなこすさびてものをみるべく 坪野哲久
―今日のわが駄句
・列にある他人と自分くしゃみかな

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