朝焼けの空が美しい。日本一のあべのハルカスの高層ビルが燦然と輝いているのを通天閣の下から眺めているのは奇異な気分ではある。石田波郷が詠んだ、
「鳩とゐて朝焼雀小さしや」の情景を見ながら、あべのハルカスと通天閣との対比の妙を愉しむのは如何なものだろうか。
そういえば、昨日、開催のとある商店街の総会に先立った、理事会でアーケードに巣くう鳩のフンで来客から苦情があるので、何とか対策してほしいとの要望が取り上げられていた。
「ハトにエサをやらないで!」の注意を促すステッカーがアーケードの柱に貼られていてこの問題は解決したのかと思っていたが、鳥の繁殖期を迎えたのだろう、またぞろ来街者のことを考えねばならないことになっているようだ。
唐突ではあるが、「エンジンの音轟々と隼は征(ゆ)く雲の果て・・・」とは
『加藤隼戦闘隊』という今は昔の軍歌を思い出した。昭和17年(1942)の今日。「加藤の前に加藤なく、加藤の後に加藤なし」といわれた名パイロットの隼戦闘隊の加藤建夫隊長が、ベンガル湾上で自爆して戦死した日である。加藤は操縦技術と射撃技術にすぐれ、太平洋戦争開始以後200機以上を撃墜破し、合計七度の感状を受けている「軍神」である。
さて、この軍歌のなかで、
「干戈(かんか)交(まじ)ゆる幾星霜(いくせいそう) 七度重なる感状の いさおの陰に涙あり ああ今は亡き武士(もののふ)の 笑って散ったその心」の詩句を今読めば、軍歌の域を越えた秀吟が光っているような感情が湧いてくる。
はやぶさ(隼)を
『大辞泉』では「全長42センチくらい。背面が青灰色、服面は白に黒色の黄斑があり、目の下に暗色斑が伸びている。くちばしは鋭く曲がり、翼は長くて先がとがる。直線的に速く飛び、獲物を見つけると翼をすぼめて急降下し、足でけり落として捕える。断崖に営巣、世界中に分布し、鷹狩りに用いられた」とある。
ハヤブサは「速い翼」が転じた和名と考えられているが、主にスズメやハト、ムクドリ、ヒヨドリなどの体重1.8キログラム以下の鳥類を食べるので、通天閣上に隼の人工営巣を設ければ、ハトは居なくなるだろうと考えてはみたが、あまりにも荒唐無稽すぎるので発言を控えることにした。この発言を笑いものにされることを考えたからであり、他愛のない発想を思い付いた幼稚を恥じいっているところである。
―今日のわが愛誦俳句
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何という風か牡丹にのみ吹きて 細見綾子
―今日のわが駄作詠草
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鳩はただぼーぼーと啼く鳥なるぞ
怨むものなき世を啼きいたる

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