夏の終わりを告げる雨がショボショボと降り続いている。昔とはまた人種が違う買い物客がまだまだざわつきを伝えてくれる「でんでんタウン」日曜日の午後である。
近年、漫画やアニメ、ゲーム、ライトノベルの挿画など日本発のポップカルチャーが世界から大きな注目を浴びている。そうした領域で活躍する画家は、江戸時代の浮世絵師になぞらえ、「絵師」と呼ばれている。そんな案内文を見て、
「絵師100人展04」と題する展覧会がわが街、日本橋でんでんタウンで催されているので出掛けてみた。
だが、会場は、商業施設に一角を仕切った、雑踏のなかにあって、絵師が描く独特の世界、高い技術に裏づけられたクオリティとポテンシャル、そして今日の日本を席巻する価値観に迫るという意気込みには程遠い雑駁な卑猥感があった。
今回のテーマは、「かわいい」ということらしい。このテーマなら若者と老人の間にかなりの価値観の乖離があるはずだと思っていたが、やはり世代間の感覚を埋めてくれる秀作は発見できなかったのは致し方あるまい。
「複写ということは、すなわちそこにある種のマイナスがあるわけです。ですから、ビデオなり映画なりで、自分で自分の舞台を見た時、この複写の製品を見て満足する人はおそらくないでしょう。が、非常に参考になります。」とは、2世尾上松録が「踊りの心」を説いたことばである。上手いと上手げは違い、写実と創造もまた然りであろう。だが模倣は創作であろうか。達者な作品群ではあるが、感動させてくれるものがあったと言えるものの発見はなかった。

第2会場があるというのでリストバンドを嵌められた。厭な強制をさせられたが、100人の絵師の力作に興味が無さそうな連中に取り巻かれていたらこの上の興味を失念させてしまった。雨に濡れて会場を後にした。
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