処暑。二十四気の一つで、暑気がやむの意とか。そのためか朝から涼しい風が頬を撫ぜてくれている。
「おしなべてものを思はぬ人にさえ心をつくる秋の初風」 と西行法師が無風流な凡人を悟らせようと詠んだ新涼の歌が心憎い。
家人が先日入った新車の慣らし運転をするとかで、新涼の山陽道を走ってくると岡山まで出かけたので、留守番中である。
明後日、東京の雑誌社から「おじさんと猫」というテーマで取材があるというので、恰好の勉強時間が出来た。たまたま、通俗性のなかに詩を見出し、人生を揶揄する、皮肉に富んだ作風で知られている現代歌人で同年代の浜田康敬の歌集
『旅人われは』のなかに、
「猫死なば次に犬飼い犬死なば鳥飼い鳥が死なばまた猫」 という短歌があるのでこのあたりから入るのも面白かろうと思っているところである。
いま、わが家には三匹の猫が飼われている。何処より闖入して来たか、何が気に入ったのか野良猫の分際を忘れて居ついてしまった。涼しくなったのか三匹が三様どこで一服しているやら姿を見せていない。それぞれが新涼の居場所を見つけて夏の疲れを癒しているのだろう。
・きょうのわが駄作詠草
サルビアの朱の塊り美しく猫が尾を立てそのなかを行く

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