きょうもまた真夏を思わせる暑い日である。昨日は思いついて住吉大社の神事に使われる卯の葉のために植えられている卯の花が満開の見ごろと聞いたので、「卯の花苑」を訪ねた。池に架かる太鼓の形をした木橋を渡り、筒男三神と神功皇后を祀る住吉造りといわれる国宝の社殿を参拝。神域を抜けたところにある、第一本宮の南側に石の玉垣に囲まれ、なかに杉の大木が聳えらる「五所御前」と呼ばれている場所がある。ここは、神功皇后が住吉大神を祀る地を選定するとき、この杉の木に鷺が三羽とまったのを見て、大神がこの地を望まれているのだとひらめいてこの場所に祀ることに決めたとの伝承があると聞く。そんな呪縛に支配されたのか、玉垣内には玉石が敷きつめられてあり、その玉石の幾つかには『五』、『大』、『力』のいずれか一文字が書かれているというので、その文字の書かれた玉石を探している人が多数見かけられた。文字の書かれた玉石の数は少なく、簡単には探し当てられないようである。それぞれ、五、大、力と書かれた三つの玉石を集めると『五大力』即ち、@体力A智力B福力C財力D寿力の徳を一願叶えてくれる心願成就のお守りになるとされているらしいが、ルソーがいう
「人は、つねに自分の幸福をのぞむものだが、つねに幸福を見わけることができるわけではない」という皮肉に誑かされながら、それではと、戯れに玉垣の間に手を差し伸べて、玉砂利を掻き混ぜて掬いあげてみたら、あら不思議や一個の石に三文字『五大力』と記された石があった。
この文字を書いている人も戯れに書いたものであろうかと、その微笑みを想像してその前の池に架かる橋を渡り、来月14日に、「御田植神事」がある田を望んでいたら多くの人が蛇がいると大騒ぎしていた。成るほどかなり大きな蛇がとぐろを巻いていた。大阪市内の中心地で生活するものには、もう何十年もお目にかかっていない懐かしい光景であった。何を食べているのかとの誰かの声に蛙ですよ、ここは、御田植神事のときに八乙女が舞う「田舞い」の田楽に謡われたことばが、
『枕草子』にもあるのだから、平安時代からの田植えが連綿と続けられているのだから蛇も棲息しているのも当然のことであろう。
帰宅したら、中庭に通じる戸が開いていて猫が出ていた。三匹のうち一匹が見当たらないので、外に逃げたことを知った。本来の飼い猫は外を散策して来ても帰巣本能があるからきっと帰って来るだろうと、昼間の疲れで寝てしまった。朝起きると思った通り帰っていた。住吉大社の境内にある「楠珺社」の初辰さんの猫詣りが功を奏したと思ったところである。
・きょうのわが駄作詠草
掌(て)のなかの小石の文字は「五大力」かがまりて立つ腰の重さよ
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