だんだん年がつまって来る。年末の挨拶をと、やって来たのに長々と話し込んで行く人は、今年定年で再就職した会社と気分が合ったのか、以前勤めた会社と比べ得々と能弁を振り撒いて、幸せの絶頂を謳歌している。
「数へ日の数へるほどもなくなりぬ」という鷹羽狩行の俳句を想い出して指折り数えるほどになった年内の日数を思い、新年を迎える希望に胸を躍らせているのであろう。凡そ書き終えた年賀状を確認しながら、そのなかに、長年の交情が途絶えてしまった人のことを偲び淋しさを感じるのもこの頃でもある。散歩の途次、この冬の季節に緑色をした青木を眺めるのは嬉しいことである。そして、その厚い光沢のある葉の陰に、真紅の楕円形の実が房状に垂れ下っているのを見かけることは楽しいことでもある。
「かぞへ日となりし日ざしや青木の実」とは久保田万太郎の句であるのだが、歳末の慌しさのなかにも年を惜しむ風情のあることを例年感じることではある。
ちらちらと餌欲しに来る野良の猫あわれなるかな年行かむとす

1640

2