新型コロナウイルスによる感染者の衰えが見えないのが気にかかるのだが、梅雨の集中豪雨による出水の各地に被害をもたらされる状況も辛く遣る瀬無い。テレビに映し出されている河川の氾濫の怖ろしさに震えが止まらない。人吉に国宝の青井阿蘇神社がある。檜皮葺の慎ましやかな佇まいの神社だが、調べるともう鳥居の上部しか見えない。熊本地震での被害も受けており、残念な事である。
かつて、家を流され大阪の親戚を頼って来た中学の同級生があり、音楽の授業の際、さり気なく女教師がその様子を訊ねたところ教室にいた一人の女子生徒が大声で泣き出してしまった。私が気が付かずにすみませんと、女教師は平信低頭して謝ったことがあった。ところが、大声で泣いていた生徒が、「先生違うのです、家を洪水で失ったことと、空襲の焼夷弾で家が焼け落ちたことが重なってしまったことです。」と言った途端に教室にいた男女の生徒たちがおいおい泣いて授業するどころではない状態になっていて授業は終りますということになった。女教師は、「皆さんが、こんな気持ちを持ってることを知って感激しました。」と言い、「二度と云うまいと、思っていたが、少しだけ言います」と、「ひめゆり部隊」に属していたことを語り出した。中学生にはさっぱり分からないことであったが、後年、沖縄での激戦の背景などを知って、その純真な様子が理解できた。
あの日の同級生は、生存するものは八十才を越えているが音楽の先生は生きておられたら卒寿は過ぎている筈だが杳として分からないことになってしまった。沖縄県立一女の出身者だけは風聞として残されていた。
ひめゆりのことを知りたく書物繰る梅雨寒という夕心地して

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