いつの間にやら中元の時期になっている。東京に本店がある古い取引が続く問屋の律儀なあいさつがあった。中国では正月十五日を上元、七月十五日を中元、十月十五日を下元と称していろいろな行事が古来からあったそうだが、現在の日本では年末の歳暮と夏の中元に際しての贈りものを云うようになっている。江戸時代から在る旧来からのしきたりが続いている関西支店の代表が、もう定年で来れなくなるでしょうと、中元のあいさつにやって来た。その話題は自ずから新型コロナウイルスのことである。長年この業界に携わって来た者が定年を間際にしてコロナ騒動に巻き込まれるとはと、取引先の廃業問題の深刻さを縷々訊かされてしまった。大方は売り上げ高の減少、密なる来客の排除、家賃の高騰感などコロナ以前には可なりの業績があった店が廃業している状況が明らかになって来る。倒産による悲惨性はないが、旧に戻るまでの低速が気になって苦心していると他人事ではない苦悩が伝わって来る。 テレワークばかりの会議に現場の厳しさが伝わって来ないのではと発言すると、もう若い社員には通用しないことになってしまったのではとコロナ後の現象を歎いていた。
終日をビル潰される音響く新築までは喧しき街

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