今年は夕涼みも打水の風情も八月が来るのにまだない。新型コロナウイルスと梅雨明けが遅れているためであろう。大阪では夏の夜は近所界隈が外の大通りの歩道に縁台を出して夕涼みしたものだが、多分電力不足で停電がしばしばあったためだろう。大人はそこで、将棋にうつつをぬかしていたものだが、それを観て将棋を覚え、簡単な詰め将棋が伝授されたものだ。駒の並べ方と使い方を教わったあと、歩三つで勝負しようと、からかわれ、そんな馬鹿げたことはないと思ったのだがあっというまに味方の陣地がずたずたにされ王将の逃げ場がなくなっていた。
「打水や夕べせはしき木挽町」とは、上方舞の名手武原はんの余興を愉しんでいる一面がうかがわれる。そして、大阪では紅い灯青い灯の道頓堀や心斎橋、戎橋をそぞろ歩く時代はもう少しあとになるのだが、今では、クーラーの効いた部屋でナイターを愉しむ時代になってしまった。
夏ながら黒きマスクの人多し炎天真夏の日が近きかな

3