今日は土用の丑の日である。旧くからの逸話に、「うなぎ屋の前を通るごとに「さても甘い匂いじゃ」と嗅いで店の前を通っていたら、大晦日にうなぎ屋から呼び込まれて、「毎日の嗅がせ代六貫文で御座る」とうなぎの嗅ぎ賃を要求された。それに対して「それは安いものでござる」と、懐より六貫文取り出して、「これこの音を聞き給え」と投げ出した。
『富久喜多留』の小咄が面白い。さて、絶滅危惧種になってしまったこの魚を将来食べられるのかの心配も出て来ている。歌人斉藤茂吉に、
「もろびとのふかき心にわが食みし鰻のかずをおもふことあり」との短歌を想い出すにつけたらふく食べていた頃の「まむし」の美味が忘れられない大阪の土用の丑の日である。折しも再放送で新日本風土記「うなぎ」が放映されていた。
腹裂きて背びれ尾びれをそのままに焼けと教えし鰻屋のこと

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