奈良国立博物館での正倉院展の会場をあとに、東向商店街の一つ西の小西通りの料理飲食店で昼食を予約してくれていたので訪れた。車椅子での拝観ではあったがこの正倉院展での宝物の世界の遭遇には例年にはない疲労を覚えてしまった。
奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿のこゑきく時ぞ秋は悲しき
小倉百人一首にある猿丸太夫(さるまるがゆう)の有名な一首がある。秋になると雌を求めて鳴く鹿の声を聞くと、人恋しさが募って秋の物悲しさをより際立たせるということであろうか。春の山焼きで有名な若草山などがある奥山を孫たちはめぐったことがないとかで絶好の小春日和にも恵まれているので上ることになった。春日奥山の原生林は赤や黄に彩られた美しい紅葉の山の情景とは対照的な作者の心情の秋の悲しさも伝わって来てその静けさを楽しんでいた。
高円の秋野の上の朝霧に妻呼ぶ牡(を)鹿出でたつらむかとは『万葉集』にある大伴家持の詠草であるが、この碑が眺望のよい高円ドライウエーの好地に建てられていた。
此処からは信貴山までの道も至近の距離である。孫のなかに来年の干支の寅年生まれがいるので、大きな張子の寅の模型があるのだが行ったことがないと言うので出掛けた。24年振りの大虎との対面に子虎が2頭加わっていたのはお愛嬌であった。
わが姿歩けばゆれてその影を見つつ歩きぬ消えて悲しく


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