まだ2リットルの水が入ったペットボトルを持ち歩かねばならないのか、残暑がきびしい。路上に飲み終わった空のペットがいとも無造作にポイと捨てられた。そして一本100円(税込み)と表示された2リットルの水に手が届いた。100円で買われたペットボトルの水を抱えた男はそのまま何処ともなく立ち去って行った。そこへやって来たベンツがそのペットを踏み潰して止まった。車から降りて来た女は咥え煙草のまま100円ショップに入って行った。流石に禁煙のルールがあることが分かっているのか、路上に煙草をポイと捨てて店内に消えた。ベンツに踏み付けられたままの先ほどのペットと女が咥えていた、まだ火が消されていない煙草が路上に転がっていた。公徳(社会生活をよくするために守るべき道徳)はどうなってしまったのだろうと、考えていると件(くだん)の女が、100円のカップラーメンや牛乳、ウーロン茶などをいっぱい買い込んで店から出て来た。まさか貧困者への施しものを仕込みに来たのではないようだが、ベンツでの買物の様子を見るにつけ、哀しい寸感が湧いてきたのは寂しい限りではある。ベンツを乗り付けて、100円ショップで買物をすませる違和感の滑稽さに愛(かな)しさを感じる。二人の若い中国女性がたこ焼きを分け合いながら路上で立ち食いをしている。インバウンドで観光旅行に来ていて覚えた日本での光景を摸倣したのであろうか、変な文化の輸出はご法度にして欲しいものである。
偶然、目にした路上での寸描である。
・きょうのわが駄作詠草
魅力ある知性の深さ例えれば純白の花束抱えて歩け

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