昨日は天気良かったですねえ。
こんな日は、里川の土手をのんびりと歩きながらヤマメのライズを探すのが、フライフィシングを愛する者にとって正しい有り方…なのだ。(笑)
それに治療の予約も入っていなかった。午前中、あれこれしながら予約電話を待ったが、待ち人来らず。女房の忙しい日程を考えても、チャンスは今日しかない。
なんて考えていたら、「こんなうららかな気持ち良い日に予約電話などあるはずがない」と思えてきた。(笑)
それで、急遽、臨時休業にすることにした。迷ったけれど電話も転送にしないで留守電にした。
竹田の里川はやや水量が少なくて、綺麗に澄んでいた。春の里川は枯れた葦が陽光に照らされ黄金色に輝いている。
青い空。緑の木々。黄金色の土手や中州。おだやかな風。小鳥の声。
歩く川に飛び交うカゲロウ。そしてライズは…ない!
こんな天気の良い日中はヤマメ達も警戒しているのか水面で捕食しない。何ヶ所か良いポイントを見て廻るが、どこもライズをしていない。
もっとも期待出来るポイントは、もっとも期待出来る時間までとっておいた。そして、その時間がついにやってきた。
流れを蹴らないように、石の踏み音を出さないように、そっとポイントに近寄る。
西日が逆光になって水面がギラツク。黒と銀が織成す複雑な流れ模様がいきなり割れた。
音もなくヤマメのライズがあった。
「おおっ」
このライズは本当にトキメク。
数分、様子を見るが、その後ライズしない。川面にはいつのまにかミッジと呼ばれる超小型の羽虫から5mm位のコカゲロウが何種類も飛んでいる。ときおりやや大きめのカディスが水面から羽ばたく。
さっきライズをしたあたりの複雑な流れを読み取る。そして、その水面の動きや鏡の出来具合で水中の大石の配置具合を想像する。ヤマメがライズした場所の60cm上流の流れにフライを落とす。フライを何10センチ上流に落とすか? それは、流れの早さや川の水深、ヤマメが定位しているであろう位置の有り様などを考慮する。しかし、それは一瞬の判断であって勘である。
逆光にギラツク水面にフライは見えない。でも、どこを流れているか、想像は出来る。距離も流れも風も関係ない。キャストしたフライがどこに落ちたかは判っている。自分が見ている所、落とそうと思った所に間違いなく落ちて、イイ流れに乗って、それをヤマメが見ている。
さっきライズがあった場所にフライが差し掛かった時(見えていない)、突然水面が割れた!!
その瞬間、たぶん0.3秒くらいでラインを持った左手を引き、軽く右手首を返す。強い力でロッドが引き込まれる。この瞬間だよね。かなりの大物だ。右に左に、深く浅く逃げようとするヤマメを次第に引き寄せる。バンブーロッドはこの辺のやり取りがとても気持ち良い。増してや、それが自作であればなおさらだ。
今年初めての釣行で、たった1度のライズを見つけ、たった1度のキャストで釣る。他に何を望むというのか?
丸々と太り、ギンケがかったヤマメのウロコの下にうっすらとパーマークが浮かんでいた。私はここ10年、年間に何100匹釣ろうが全部リリースしている。ただ1つの約束ごとを除いて…。
その年、初めての釣行で最初に釣ったヤマメが28cm以上だったら、その1匹のヤマメは持ち帰って食べることにしている。最初のヤマメが25cmで2匹目が30cmであっても、その年は1匹も持って帰らないことにしている。これはワタシ流の儀式だ。
それで、ちょっと自慢の報告しておくけどこの10年間で初日に持って帰らなかった年は1〜2度しかない。 つまり、毎年、最初の1匹が28センチ以上だってこと。(笑)
今年の1匹目は29cm。泣き尺って言う奴。 約束ごとに該当するので、その場で内臓を取り出して胃の内容物を見たら、虫関係は全部消化されて真っ黒い残骸だけになっていたが、なんと8cm位の小魚が未消化で出て来た。
それで、「悪いことをしたなあ」と思ったのは、卵を孕んでいたこと。産卵は秋なのに、この時期に卵を持っているって、どういうことだろう? ヤマメって10ヶ月位、卵を育てるんだったっけ? それとも温暖化で生態に異変が起きているのか?
いやあ、しかし、たった1匹のヤマメで引っ張るなあ!(爆)

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