いやはや・・。
大変な登山だった。
ちょっと考えが甘かった。
久重山系の中でも人気の高い大船山。特にミヤマキリシマの咲く6月は山全体がピンク色に染まり、10月は紅葉で紅く染まるので、格別らしい。
いろいろとルートがあるが、もっともポピュラーと言われる長者原から雨ヶ池経由で坊がつるに至り、そこから大船山に登るルートをとった。
朝、8時前に長者原の湿原に足を踏み入れる。まずは奥に見えている三俣山の横の樹林帯を抜けて行くと2.5`で雨ヶ池に到達する。約1時間ちょっと。

樹林帯も最初はこんな感じで明るいのだが・・。

雨が降ると池になるという雨が池

先はまだまだ遠い。

この湿原を越え、また山を越え、延々と歩いていく。

坊がつるにようやく到着。スタートして2時間20分位。

テントの向こうの山の中腹に法華院温泉がある。今回の大船山登山の多くは前日か当日にここに泊まっている。我々は日帰りだ。^^;
山の端の落ちた部分、谷に大きな砂防ダムが連なっている。その横を登り切ると北千里浜が広がり、目の前に硫黄山がモクモクと白煙を上げている。その手前の巨岩を登り詰めるとすがもり越えに到る。真っ直ぐに進めば久住別れに到る。

もう充分歩いたのに、これから大船山を目指す。
とにかく、強行軍は知っての挑戦だったが、この山、きつすぎる。
クネクネと巻いて登るのではなくて直登だ。それも、すごい急坂で岩がガラガラ、ゴロゴロ。
取り合えず頂上付近の鞍部である段原(ダンバル)まで行けばなんとかなるのだが、あまりの急坂に大丈夫か?という思いと、何が何でもという思いで写真を撮る余裕さえ無い。初めての山はペースがつかめない分プレッシャーがかかる。
途中、下ってくる60代後半と思われる単独のご婦人とすれ違ったが、その人の「御池の紅葉がとても綺麗でしたよ」という言葉に我々4人はとても力を頂いた。山頂付近にある火山湖御池と四国の山まで見えるという360度の大展望こそが我々の目的だった。

そんな訳で段原に着いた我々は、沢山の人々が楽しそうに昼食をとっている姿に早速溶け込み、この上ない弁当を食べて幸せに浸ったのだった。
そして、幸せすぎて?その時の写真さえ無い。
これは、いきなり頂上付近。

雲に隠れる段原からここまで登ってきた。

頂上に人影が二つ。

左の尾根を伝い頂上を目指す。

一瞬、雲が切れて坊がつるが見えた。

頂上付近はガスで展望ゼロ。御池も見えず残念だったが、この美しい紅葉が見れただけで満足。

標高1786mの山頂でおいさんとおばさんのツーショット。

さあ、下山。もう一度振り返る。大船山最高!

坊がつるに降りてまた振り返る。この下山がどれだけ辛かったか!
両膝が痛くて踏ん張りが効かない。右くるぶしも痛い。左股関節も痛い。
下半身ガタガタ・・。^^;
下山は普通の人の2倍以上の時間がかかった。たぶん。
この時間にここに居る人達の殆どは法華院温泉に泊まるらしい。それなのに我々はこれから2時間もかけて戻らなければならない。最初の予定では法華院温泉の上の谷を登ってすがもり越えで帰る予定だったが、すでに濃いガスで覆われていた。それだけでも危ないのに途中で暗くなったら・・ヤバイ。
雨ヶ池コースは雲一つ無い。安全を期してこのコースで帰ることにした。されど、その時点で3時半。疲れ、痛くなった足取りでは2時間半かかるかも知れない。そうなると樹林帯で暗闇だ。
膝が痛くて下りだけでなく、登りもヤットコサ。道のりの長いこと、長いこと。
雨ヶ池は丁度中間位置になる。その辺まではまだ余裕があったが、時間を逆算すると途中で暗くなるはず。樹林帯は薄暗いが空はまだ明るい。
しかし、このままでは・・。
ワタシは言った。
「ちょっとペースをあげないと山は日が落ちるのが早い。油断しているとアッと言う間に暗くなってしまう。」
それでも、女性陣はペチャクチャ喋りながら歩いている。
ワタシは痛い足を我慢して先頭を歩いた。枯れ葉が積った踏み跡も、ともすれば見失ってしまう。
ゴロゴロとした石も殆ど見えなくなっていく。早く樹林帯から抜き出さなければ・・。
こういう時に30数年間の渓流釣りの経験がものを言うのだと思っていた。
踏み跡が分かりつらくても、足場が見えなくても勘で見えてくる。
どんどん暗くなってきて、ついには殆ど見えなくなってきた。それでも歩く。
いつの間にかケモノ道に入っていた。動物的勘で歩いていたから、それも当然か?(笑)
ようやく林道に出た頃は真っ暗。その時、後ろの樹林に光が見えてきた。
後続者が追い付いてきたのだった。ヘッドランプを付けた3人組がワタシらの後から前を照らしてくれて、ようやく湿原の木道までやってきた。

あと、50メートルで到着だ。あんしんした途端に膝や股関節が痛くなってきた。いや、もちろん、それまでも痛かったけど、暗くなるまでに早く着きたいという思いが痛さを超越していた。
『暗くなるまで待って』じゃなくて、『暗くなるのは待って』という感じだったな。(笑)
でも、判っていたのに結局こういうことになった。
これからは余裕のある計画を立てねば。
それにしても、ここまで辛い思いをしても、もう次の山に思いを馳せている。
『どS』なのか?
結局、この日10時間半、山を歩いていた。

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