2014/7/28
紀元前から続くバザールで 旅の一場面


(写真 パキスタン・カイバルパクトゥンクワ州 ペシャワールにて)
2014/7/26
細部に宿る伝統織物の技と魂 染織


製作地 ミャンマー・チン州
製作年代(推定) 20世紀半ば
民族名 ティディム族
素材/技法 木綿、染料 / 平地(経地合)、一部綾地、緯紋織、片面縫取織、二枚接ぎ
ミャンマー中西部のチン州に生活する「ティディム族」の手による、祝祭儀礼用の木綿縞織ボディクロス”タウノック”。一見するとシンプルな縞織物のようにも思えますが、細部(下画像)を目にすると様々な高度な技巧が加えられている様子を確認することができます。
平地(経地合)の織りを主体としつつ、部分的に綾地へと切り替わり、緯浮きと経浮きを駆使して織り表される”菱綾(diamond twill)”の紋織が見事(画像上から1・2番目)。
また白縞上に黄・桃と緑で文様が表された箇所(画像上から3番目)は、桃・緑の経糸と桃・緑の絵緯(縫取織)を巧みに交えて、肉眼では確認することのできない細密さでモザイク様の端整な文様をつくり上げている様子が、数倍に拡大した画像によりはじめて判ります。
接ぎ合わせの精緻なクロス・ニット・ルーピング(画像上から4番目)を含め、作り手の神経は細部にしっかりと及んでおり、作品からは儀礼用の特別な布としての濃密な精神性が薫ってきます。




●本記事内容に関する参考(推奨)文献
2014/7/24
街中の市場で 旅の一場面


(写真 タイ・チェンマイ県 チェンマイにて)
2014/7/20
民族衣装の行き交うバザールで 旅の一場面


(写真 インド・グジャラート州 カッチ地方にて)
2014/7/18
お祭りの日に 旅の一場面


(写真 中国・貴州省 従江県にて)
2014/7/16
彫刻・彫金の護符として表された”陰陽魚” 生活と祈りの意匠
●堅木彫刻の護符

製作地 中国・貴州省
製作年代(推定) 19世紀後半
民族名 ミャオ族
●シルバー彫金の護符(ブレスレット)

製作地 中国・貴州省
製作年代(推定) 20世紀初め
民族名 トン族
”陰陽魚(双魚)”は古代中国の道教に由来するデザインで、白黒の勾玉が組み合わされた陰陽対極図を原初としますが、中国西南に生活する少数民族の間では、自然・精霊信仰及び先祖崇拝と結び付いた”吉祥の護符”として独自の意匠上の発展がなされていきました。
”田鯉”は稲作の豊穣を象徴する生き物であるとともに水と大地を司る”龍”とも混交するもの、さらに龍は先祖崇拝と結び付き、先祖の姿(魂)そのものを表すものと指摘することができます。


2014/7/8
北部チン族・絹縫取織スカート 二景 民族衣装


●ハカ族

製作地 ミャンマー・チン州
製作年代(推定) 20世紀初め
素材/技法 木綿、天然藍、絹、天然染料/経縞織(経地合)、縫取織
●ザハウ族

製作地 ミャンマー・チン州
製作年代(推定) 20世紀前期
素材/技法 木綿、天然藍、絹、天然染料主体/経縞織(経地合)、縫取織
●本記事内容に関する参考(推奨)文献
2014/7/6
インレー湖上の寺院に伝わる五体仏 仏神像


●インレー湖上に建てられた寺院(仏塔)”ファウンドーウー”本尊の五体仏
原初的にはパガン王朝期の11世紀にスリランカからもたらされた香木から作られたとする伝承を有する”ファウンドーウー”の五体仏(現存する像の製作年代は不詳)。
長い年月にわたり参詣者の手で膨大な数量の金箔が貼り続けられてきたため、仏像としての原型は既にとどめておらず、丸々とした珠のような姿となっております。

仏像に貼るための金箔


●”ファウンドーウー五体仏”が象られた民間信仰の漆仏
製作地 ミャンマー・シャン州
製作年代(推定) 20世紀初め
素材 漆、(金箔貼り)
歴史ある五体像(本尊)を象り、シャン州インレー湖エリアを中心とする民間で奉られてきたのが上掲画像のような漆仏や薬木仏で、家庭の仏壇(祭壇)に置かれ、日常のお祈りとともに本尊と同じように金箔貼りが繰り返されていったものとなります。
●本記事内容に関する参考(推奨)文献
2014/7/4
カンボウジュ種絹と天然染料による玉虫織布 染織


製作地 カンボジア南部
製作年代(推定) 20世紀前期
素材/技法 絹(カンボウジュ種)、天然染料 / 平地・玉虫織、緯絣
カンボジア原産のカンボウジュ種絹を、ラック染めの臙脂赤と藍・黄の掛け合わせによる緑に染めた糸を経と緯に配して”玉虫織”とした、20世紀前期作の儀礼用腰衣”チョンクバン”。
布左右には絣文様の入った二本のボーダー縞が織り込まれ、全体としてはプレーンな色彩の絹織物ながらも、この煌びやかかつたおやかな表情の玉虫光沢と精緻な絣・縞により、儀礼用の特別な腰衣としての格調の高さが全長3mにわたる布全面から伝わってまいります。
天然染料で染められた絹で織られた”玉虫織”、さらに上質な黄金繭(カンボウジュ種絹)が用いられた作例として、世界的にも稀有と言える染織作品です。


●本記事内容に関する参考(推奨)文献
2014/7/2
小ぶりながらもスケール感のある仏教儀礼用の織物 染織

製作地 タイ中部 チャイナート県
製作年代(推定) 20世紀半ば
民族名 ラオ・クラン族
素材/技法 木綿、天然染料 / 緯紋織、縫取織(浮文織)


経に無染の木綿糸、緯に黄の木綿糸を配した平織をベースに、絵緯の紋織と縫取織の浮文により精緻な幾何学文様と端整な”象””馬”の具象文様が描き出された小サイズの織り布。
ラオ・クラン族が仏教儀礼用の頭布(供物用の敷き布ともされる)として織り上げたもので、可憐な色柄表情の小ぶりな織物ながらも、作品からは伝統に培われた高度な手仕事のモノならではの意匠の完成美、スケール感、そして信仰の織物としての濃密な精神性が薫ってまいります。

●本記事内容に関する参考(推奨)文献