2015/6/30
代々受け継がれてきた織物の道具 生活と祈りの道具

(写真 インドネシア・スラウェシ島 タナ・トラジャにて)
繊細な彫刻による意匠付けがなされた腰機の背当て
2015/6/29
バティック・サロンを纏って 旅の一場面


(写真 インドネシア・スラウェシ島 ママサ・トラジャにて)
2015/6/28
インド国外で出逢ったグジャラート染織・刺繍 民族衣装

「宮廷・貴族向け モチ刺繍スカート」
製作地 インド・グジャラート州
製作年代(推定) 19世紀
●蒐集地 パキスタン・パンジャーブ州
インドとパキスタンの分離独立前のスィンドの地で、モチ共同体の手により宮廷・貴族向けに手掛けられ、20世紀半ばの分離独立時にパキスタン側に渡った(或いは残った)と推察されるもの
「貴族・富裕層向け 絹ブロケード肩掛け(ヴェール)」
製作地 インド・グジャラート州
製作年代(推定) 18世紀
●蒐集地 インドネシア・スラウェシ島 タナ・トラジャ
海洋交易の対価とされる高級染織品として、18世紀に東インド会社等の交易船によりスラウェシ島にもたらされ、トラジャの地で”聖布マア”として保存・継承されてきたと推察されるもの


2015/6/26
樹皮布に染め描かれた生命樹と生命の意匠 染織

製作地 インドネシア・スラウェシ島 南スラウェシ州
製作年代 近年
素材/技法 樹皮(クワ科)、染料(天然染料+化学染料) / 木版捺染






●参考画像 樹皮布”シガ”を製作するための道具 石槌”イケ”
※一枚の樹皮布を完成させるには凹凸形状が異なる多数の”イケ”が用いられる

●参考画像2 中央スラウェシ州で用いられた叩き棒(beater)及び石槌イケ

※上画像はTUTTLE刊「TEXTILES OF SOUTHEAST ASIA」より転載いたしております
2015/6/25
生命樹を想起させる屋根 装飾


(写真 インドネシア・スラウェシ島 タナ・トラジャにて)
2015/6/24
儀式の濃密な空間で 旅の一場面



(写真 インドネシア・スラウェシ島 タナ・トラジャにて)
2015/6/23
儀礼行為としての炊飯 旅の一場面

(写真 インドネシア・スラウェシ島 タナ・トラジャにて)
空間、火熾し、装束、所作... 伝統儀礼としての気と美が集約された炊事場
2015/6/22
海洋交易の時代の浪漫薫るカード織ベルト 染織

製作地 インドネシア・スラウェシ島 南スラウェシ州
製作年代(推定) 19世紀
民族名 製作者:ブギス人 / 使用者:サダン・トラジャ人
素材/技法 木綿 / カード織(本体)、カード織(補修:白地の布)、平織(補修:赤地の布)
この帯状の布は、先端に重厚なループを有し内部が空洞となるチューブ状に織られた”カード織”の一作例で、スラウェシ島南部に生活する”ブギス人”が19世紀に手掛けたものとなります。
”ブギス人”は航海術・造船術に長け、中近世には”マカッサル人”とともに、この海域の香料・香辛料の交易において重要な役割を担ったことが知られますが、海の向こうから様々な染織技術を受容し、自身の染織文化を形成していったものとなります(現在もカイン・ブギスの織物が著名)。
本品はタナ・トラジャでの蒐集品で、海洋交易の時代にスラウェシ島内陸部のサダン・トラジャ人にもたらされ、祝祭時に聖剣クリスを身につける際の儀礼用ベルトとして使用され、代々継承される伝世品とされる中で残存したものと推察することができます。
帯裏側に全体の3分の1程度の長さで、白地・藍文字のブギス人の手による別織のカード織帯片が付され、裏の残りの部分には経緯木綿双糸で構成される平織の赤布が付されており、トラジャ伝世品として同時代の上質な素材により大切に補修が繰り返された様子が伺えます。
ブギス人が手掛け、サダン・トラジャ人が使用・伝世した、今では失われし古(いにしえ)のカード織作品、海洋交易の時代の浪漫が薫るアンティーク染織の逸品です。



2015/6/21
陽の下で行われる伝統織物 旅の一場面


竹べらで経糸を掬い絵緯を織り入れる”緯紋織=スンキ”のママサ伝統織物。

(写真 インドネシア・スラウェシ島 ママサ・トラジャにて)
ママサの幾つかの村で、穀物倉アランを小さくしたような舟形屋根の小建造物を目にしました。
村共有の多目的スペースとして用いられているようでしたが、縦横に配された柱は腰機での織物に最適なつくりであり、織り場を主目的に発達したものかもしれません。

2015/6/20
カルンパン作・トラジャ使用の儀礼用経絣布 染織

製作地 インドネシア・スラウェシ島 西スラウェシ州カルンパン
製作年代(推定) 20世紀前期
民族名 製作者:カルンパン(マッキ)人 / 使用者:サダン・トラジャ人
素材/技法 木綿、天然染料 / 経絣、二枚接ぎ
西スラウェシ州に生活する”カルンパン(マッキ)人”は、南スラウェシ州に生活する”トラジャ人””ロンコン人”と多くの点で共通する習俗を有し、さらに”ロンコン人”とは、古来より域内交易のための”絣織物”を手掛けてきたこと等、染織文化の面においても共通項を見出すことができます。
この大判の絣布”セコマンディ(ロンコンでは”ポリ・シトゥトゥ”)”は、カルンパン(ロンコン)内での祝祭及び葬祭儀礼用として用いられるとともに、中央スラウェシやタナ・トラジャに交易布としてもたらされ、タナ・トラジャにおいては聖布マアに類する伝世布として保管・継承されてきたことが、残存する作例により確認することができます。
本布は、一見すると藍の鉤状文が主模様とも思われますが、良く観察すると藍の鉤状文で区画された内部(茶部分)に”水牛テドンの顔”及び身体に白斑(十字文部分)を持つ”水牛テドンの全身(俯瞰図)”が描かれているようにも思える作品です。
特筆すべきは藍の鉤状文は単色ではなく巧みな藍濃淡が加えられていること、上下ボーダーの鋸歯文等小モチーフの括り染めが緻密でメリハリが利いていること、太目の紡ぎ糸ながら織り密度が高いこと(カルンパン絣の特徴)で、20世紀後半以降に手掛けられたもの、取り分け当初から販売目的で生み出された汎用的作品とは明らかに異なる意匠の力強さと完成美、細部に宿る生命感が感じられるところとなります。トラジャ伝世布として大切に保存・継承された一枚です。




2015/6/19
トラジャの古朴な木造民家(2) 旅の一場面



(写真 インドネシア・スラウェシ島 ママサ・トラジャにて)
挽いたコーヒーの粉に直接お湯を注ぐのがトラジャ・コーヒーの現地での飲み方。
コーヒーの粉がゆっくりと底に沈んでいくのを眺め... 上澄みを少しずつ口に含み...
村の時間に身と心を任せます。

2015/6/18
トラジャの古朴な木造民家(1) 旅の一場面


(写真 インドネシア・スラウェシ島 タナ・トラジャにて)
2015/6/17
野外儀礼に荘厳美を演出するビーズワーク 技巧・意匠・素材





(写真 インドネシア・スラウェシ島 タナ・トラジャにて)
繊細かつ華やぎ溢れる意匠に目を惹かれる多色ビーズワークの装飾品”カンダウレ”は、トラジャの人々の祝祭及び葬祭儀礼の際に、円錐形の吊り下げ飾りとして、また来賓の歓迎・案内の役割を担う女性の背肩装身具として用いられ、セレモニーの場に荘厳な空気感を演出します。
ビーズワークは数百年を遡る時代にインド更紗等とともに交易品としてこの地にもたらされたものと考えられていますが、天からもたらされたものという主旨の文言が神話に記され歌に詠まれ、またビーズワークの模様がトンコナン(住居)やアラン(穀物倉)の彫刻に転化されるほどトラジャの人々の感性・美意識を刺激し、その魂の内に深く根付いてきたものと言うことができます。
トラジャの儀礼に用いられる染織の多くは今では手仕事から離れていきましたが、この見事な細工・造形のビーズワークは、ママサ等の地方村で伝統手仕事として技術が継承されております。
2015/6/16
天と地を橋渡しする”水牛”と”蒟醤” 技巧・意匠・素材
●噛み嗜好品”キンマ”に用いる石灰を入れるための木と水牛の角製の箱

製作地 インドネシア・スラウェシ島西スラウェシ州 ママサ
製作年代(推定) 20世紀前期
●噛み嗜好品”キンマ”に用いるキンマの葉等を収納するバッグ

製作地 インドネシア・スラウェシ島西スラウェシ州 ママサ
製作年代 近年
聖牛(水牛)”テドン”と、蒟醤(キンマ)”ボル”は、古来よりトラジャの人々の伝統宗教アルク・ト・ドロ”において密接な繋がりを有してきました。トラジャにおいて”キンマ”は単なる噛み嗜好品ではなく、儀礼行為としての要素が大きいことは明らかです。
水牛テドンは天界(神々)と地上界を繋ぐ”乗り物”を象徴し、蔓植物である蒟醤ボルは、乗り物である水牛及び人々の祈りや死者の魂を天界へと送り届ける”はしご”を象徴すると考察することができます。この”はしご”は”生命樹”とも同一視される(交混する)意匠となります。
キンマの葉やビンロウジ・石灰等の噛み嗜好品としての”蒟醤”の諸道具を収納するためのバッグ(セプ)には、技術的に高度かつ手間隙の掛かる”カード織”で文様が織り描かれた紐が付されますが(※現在は失われつつある)、この手の込んだカード織紐を織る行為も、天と地を繋ぐ”はしご”をつくる宗教的行為と看做すことができるように思います。
●キンマ道具容れの本体(水牛の角)に描かれた”キンマの蔓葉”の意匠


2015/6/15
日々の暮らしの質朴な竹橋 旅の一場面

(写真 インドネシア・スラウェシ島 ママサ・トラジャにて)