2015/9/29

組織と絣が生み出した特殊な色彩  染織



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製作地 カンボジア南部  製作年代 20世紀前期
素材/技法 絹(カンボウジュ種)、天然染料/綾地・緯絣


布中央部の”オリーブ掛かった山吹色”、この鮮やかかつ深みのある色合いの美しさが印象的な長辺3m強サイズの儀礼用チョンクバンとしての絹絣。

掲載画像の上から下へ... 布の全体から細部へと目を移していくと、プレーンな色(オリーブ掛かった山吹色)と思っていた箇所が、実際には相当に複雑・繊細な経緯の色構成と組織により表現されたものであることに気づき、驚かされることとなります。

具体的には、黄×藍の綾地組織の中に、ラックの赤、掛け合わせの臙脂や黄緑、班状の絣糸(緯糸)が適度に散りばめられることにより、微妙な色の凹凸と立体感が加わり、全体として”何色とも形容しがたい”独自の色表情を呈する色彩が生み出されていることが判ります。

上下のボーダー部分は文様が描かれた絣ですが、布中央の一見すると単色と思われる部分も実は手の込んだ絣である... ここに本作品の素晴らしさ、そしてクメール染織・絹絣の技術の真髄(の一端)を見出すことができるようにも思われます。




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2015/9/27

カンボジア渡りの青花”飛龍・鉢花文”碗  技巧・意匠・素材



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製作地 中国 景徳鎮等の民窯  製作年代 17世紀 明朝末〜清朝初期
渡来地 カンボジア
サイズ 口径18.5cm、高さ8.5cm


粗野とも言える大らかな筆致ながら、器からはみ出す勢いの奔放で生命力あふれる”龍”の染め意匠に心惹かれるカンボジア渡りの青花碗(鉢)。

”蛇龍神ナーガ”が王国・仏教の守護神として崇められてきたクメール王国において、”龍”の染付けはとくに好まれたものと思われます。そして見込みに描かれた”鉢花文様”はカンボジアの絹絣に描かれる”供花文様”と符号点を見出すことができます。




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●参考画像 クメール絹絣に描かれた龍(ナーガ)と鉢花としての供物文

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※上画像は福岡市美術館刊「カンボジアの染織」より転載いたしております

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2015/9/25

チャム人のモザイク文様絹絣  染織



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製作地 カンボジア・コンポンチャム  製作年代 20世紀初め
民族 チャム人
素材/技法 絹(カンボウジュ種)、天然染料/綾地・緯絣


カンボジア南部のコンポンチャムに生活する”チャム人”の手による、格子織物を思わせるモザイク様のデザインが新鮮な腰衣(サンポット)としての絹絣作品。

高度な天然染色によって表現された色彩の美しさが筆頭に挙げられる作品ですが、拡大画像で確認できる、綾織による斜めに走る畝、繊細な色グラデーション(ラックの赤〜掛け合わせ色の臙脂)及びランダムな絣足が、この絹絣に絶妙な躍動感とリズムを与えていることが判ります。

遊び心を交えつつ、絣の特性を巧みに生かした織物表情が見事と言える一枚です。



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下は同じカンボウジュ種絹とラック・プロフー等の天然染料主体でつくられた絹格子織物で、均等平地でタイトに織り上げられた組織表情が美しく、経・緯の色の配色が秀逸な古手の作例です。

拡大画像で目に出来るように、色を染め分けた糸が用いられているかのごとき経・緯の色の溶け込み(同化)具合は興味深く、高度な視覚効果の計算がなされているようにも思われます。


●参考画像 同じカンボウジュ種絹と天然染料(主体)でつくられた絹格子織物

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製作地 カンボジア南部  製作年代 20世紀前期〜半ば 1940−50年前後
民族 チャム人 若しくは クメール人
素材/技法 絹(カンボウジュ種)、天然染料主体、化学染料(紺紫)/均等平地・格子織

2015/9/23

クメール絹絣 ナーガ卍繋ぎ文様の変遷  染織



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製作地 カンボジア南部  製作年代 19世紀半ば〜20世紀前期まで
素材/技法 絹(カンボウジュ種)、天然染料/綾地・緯絣


具象から抽象へ... 儀礼用の絹絣上に描かれた、クメール王国と仏教を守護する”蛇龍神ナーガ”の文様の変遷を伺うことができる作品たち。

一見すると抽象化が進み卍の記号と化したと思われる文様も、点・線・色で構成されるディテイル部分に”ナーガの目や口”(の名残)を潜ませるように染め描いている様子を確認できます。

並々ならぬ信仰(祈り)の強さ、並々ならぬ括り・染め・織りの技術の高さがなければ現われ出ることのない、クメール染織固有の唯一無二の絣文様であり表現方法です。

2015/9/21

仏教供物用のボウル型・竹編み籠  技巧・意匠・素材



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製作地 カンボジア南部  製作年代 20世紀前期
素材/技法 竹、樹脂/組み編み、織り編み


組み編みと織り編みの技法を巧みに交え、ふくよかなボウル型の胎が見事に成型されたカンボジアの竹編み籠。クメールの人々の織物の才が発揮された作品とも感じられます。

組織(編み)変化の部位は弧及び尖塔状の文様ともなっており、托鉢ボウルを想起させる形状を併せ、事前知識が無くとも”仏教に縁のもの”という匂いを感じ取れるようにも思われます。

両手で持った際の、掌(てのひら)の馴染み感でも愛着の深まる一品です。




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2015/9/19

失われし古の色 19cクメール絹絣  染織



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製作地 カンボジア・コンポンチャム  製作年代 19世紀半ば〜後半
素材/技法 絹(カンボウジュ種)、天然染料/綾地・緯絣


19世紀半ば〜後半にカンボジア南部の“コンポンチャム”で手掛けられた、120〜150年を遡る時代の貴重な宮廷・寺院儀礼用の腰衣”チョンクバン”としての絹絣です。

織り布のきめの細かさ・滑らかさが際立っており、19c当時の最も上質な種類(ランク)のカンボウジュ種絹の手引き糸が用いられたと推察されるもの、そして”格子・四弁花文様”の絣柄を目にすると、通常連続文様で構成される絣の場合、絣糸を一括して括り染めすることが一般的な製作手法であるところ、本布は絵柄の全体が単独で括り染めされた並々ならぬ手の込んだ作品であることが、文様の細部及び単調ではない躍動的なリズムのある絣表情から伺うことができます。

地色の”緑”、格子・四弁花の”赤紫”、”黄””濃藍”... 実際には何色とも名付け難い豊かな奥行きのある色彩を奏でつつすべての色が見事に調和しており、布が発する濃密な精神性と荘厳美に目と心を奪われます。今では再現することのできない”古の色”を有する染織作品です。






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2015/9/17

仏教信仰の祈りが込められた彫刻と染織の意匠  技巧・意匠・素材



●噛み嗜好品”キンマ”の諸道具・材料を置くための脚付き盆
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製作地 タイ・イサーン地方南部 スリン若しくはブリラム  製作年代 20世紀前期〜半ば
民族 クメール系タイ人
※下の絹絣はカンボジアのクメール人(或いはチャム人)の手によるもの


側面のパネルが彫刻と彩色により装飾されたこの木箱状の品モノは、噛み嗜好品”キンマ”の諸道具・材料を納める(置く)ため脚付き盆となります。

スリン若しくはブリラムに生活するクメール系の人々の村で手掛けられたもので、装飾の意匠は染織(絹絣)の文様と符号するものであることが確認できます。

古来よりキンマの慣習は仏教(宗教)儀礼との結び付きが深く、四面上下のパネル毎に少しずつ異なる卍格子と生命樹の表情、いずれからも豊穣や平安の祈りとともに手掛けられたものとしての力強い生命感と濃密な精神性が薫ってまいります。




●仏法を守護する卍繋ぎ菱格子文(菱格子は蛇龍神ナーガの身体を表わす)
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●農作物の豊穣を祈願する生命樹文(供花を表わすものでもある)
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2015/9/15

イサーン南部のクメール染織 絣入り絹格子布  染織



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製作地 タイ・イサーン地方南部 スリン  製作年代 20世紀前期〜半ば
民族 クメール系タイ人
素材/技法 絹(カンボウジュ種)、天然染料/平地・格子、経絣及び緯絣


タイ東北(イサーン)地方の南部、現カンボジアと国境を接するブリラム・スリン・シーサケットの各県は、クメール王朝時代の遺跡が残り、クメール系の住民が多く住む土地柄となります。

いずれも絹織物を主体とする伝統染織の産地ですが、取り分けスリンは黄金繭として知られるカンボウジュ種絹繭の養蚕が小村で継承され、手引き・手紡ぎ、天然染料の準備と染め、簡素な木杭作りの機での手織り、の昔ながらの表情を保つクメール織物がつくられてきました。

クラン(ラック)の赤、カエラエの黄、マクルアの黒、天然藍等により深く染められたカンボウジュ種絹の緻密な平地・格子で織られた本布は”アウン・プロム(Aum Prom)”と呼ばれ、スリンの女性が寺院詣での際などの日常行事の正装用の腰衣(パー・シン)として用いたものとなります。

遠目で目にする限りは落ち着いた色表情の質朴な格子の布ですが、近づいて見ると色格子の中に無数の白班が経糸・緯糸双方の絣として散りばめられている様子を確認できます。

”アウン・プロム”はスリン小村で作られ用いられたローカルな織物ですが、この控え目ながら手間隙の掛かる経緯の絣は、「私たちは繭を育て、糸を紡ぎ、自然から染料を戴き、一糸一糸を大切に染め、祈りとともに織り上げ...」という手仕事の証と誇りが表わされていると感じます。

本布は60〜70年を遡る時代の作例で、残念ながら今では失われし素材感・技巧のものですが、こういう織物があったことを記憶に留めたいと思う、懐かしく愛おしい表情の染織作品です。





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(参考画像) イサーン南部のクメール絹織物に用いられたカンボウジュ種絹繭
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2015/9/13

チャム人の失われし細密織物 絹格子・浮織布  染織



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製作地 カンボジア・コンポンチャム  製作年代 19世紀末〜20世紀初頭
民族 チャム人
素材/技法 絹(カンボウジュ種)、天然染料/平地格子、地組織での両面浮織


ルーペで5倍程度に拡大することでやっと組織の構成が明らかになる、この特殊な絹格子織物はカンボジア南部のコンポンチャムに生活する「チャム人」が百年程前に手掛けたものとなります。

肉眼では”算崩”のように見える格子文様は、地経の黄糸を浮かす(裏では地緯の藍糸が浮く)ことによって生み出していることが判りますが、拡大画像で目にすると浮織部分は特殊な組織表情となっており、手仕事によりここまで細密な織りを破綻無く完成させていることに驚かされます。

カンボジアの格子織物では木綿及び絹(現在では化繊も一般的)で織られる多目的の布”クロマー”が広く用いられ、良く知られるところですが、その原初はマレー系チャム人の織物にあると考えられており、本布はクロマーのプロトタイプとも言える存在となります。

20c前〜半ばの植民地下〜大戦期、それに続く1950年代からのインドシナ戦争〜ポルポト圧政期、チャム人の苦難の時代は長く続き、彼らの優れた織物の多くは失われてしまいました。


”両面浮織”の緻密な格子文様... 琉球のある種の”花織”を彷彿させる表情の織物...

数百年を遡る海洋交易の時代、古チャム人の王国”チャンパ”と”琉球王国”は密接な交流・交易を行っていたことが知られており、時代物語(想像)の浪漫が頭に駆け巡ります。



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2015/9/11

仏教儀礼用絹絣 絵絣系ピダン・二景  染織



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製作地 カンボジア南部  製作年代 20世紀前期 1920〜40年前後
素材/技法 絹(カンボウジュ種)、天然染料/綾地・緯絣


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製作地 カンボジア南部  製作年代 20世紀初め 1900〜20年前後
素材/技法 絹(カンボウジュ種)、天然染料/綾地・緯絣


2点ともに仏教寺院内の天蓋装飾や祝祭・葬祭儀礼の際の幡として用いられた系統の仏教絵巻としての絵絣ピダンで、カンボウジュ種絹と天然染料を素材に手掛けられたものとなりますが、染色の色構成及び文様の染め描きスタイルが大きく異なる作品です。

作風は異なりながらも、特別な宗教儀礼用の布として、作り手が並々ならぬ手間隙と技量、そして祈りの心を持しながら、”信仰の世界観”を表出させることを一義に生み出したものであろうことは、作品全体から溢れ出す生命の息づき・精神性から胸深く伝わってまいります。

目にするたびに新たな発見をもたらしてくれる、他に類例を見出し難い種類の染織作品です。




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(参考画像) 絵絣系ピダンが天蓋に張られた仏教寺院の光景
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※上画像はRiver Books刊「Pictorial Cambodian Textiles」より転載いたしております



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