2016/9/29

19c江戸末 縞木綿(佐治木綿)裂  染織




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製作地 日本 兵庫県丹波市(丹波国佐治村) 
製作年代(推定) 19世紀後期 江戸時代末
素材/技法 国産木綿、天然染料/平地、縞格子
サイズ 幅(緯):32.5cm、長さ(経):72cm


この”佐治木綿”は、江戸後期に織られ始め、輸入木綿の紡績糸と機械織の布が市場を席巻する明治中後期までの比較的短い期間に丹波国佐治村で製作されたローカルな織物です。

本布のように経糸・緯糸ともに木綿で織られたものと、緯糸に”絹つまみ糸”(引き始めの繭表層の荒糸)を加えた交織の布(後世”丹波布”と呼称された著名織物)があり、いずれも木綿・絹の糸及び染料を土着の素材で完成させている点に独自性を有し、藍にプラスし、はんの木、しきみ、やまもも、栗皮等々の野山で採取される草木や実を様々に掛け合わせて用いることにより、本布にも見られるような独特の色彩感を有する縞織物を生み出したと考察されております。

本品は栗皮から抽出した染料の媒染と天然藍の掛け合わせで発色させた佐治木綿固有の”緑色”が滋味豊かな一枚、手紡ぎ木綿の一糸一糸、草木染料で表わされた一色一色に愛おしさが感じられるような手仕事の縞木綿であり、江戸期”佐治木綿”の貴重な残存作例です。





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●本記事内容に関する参考(推奨)文献
 

2016/9/27

18c末 フランス ジュイ”小花文”木版更紗  染織




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製作地 フランス トワル・ド・ジュイ(ジュイ工房)
製作年代(推定) 18世紀末
素材/技法 木綿、天然染料(茜・黄)、天然顔料(藍)/木版捺染、媒染
サイズ 37cm×42cm


本布は18世紀末(1780年〜1790年代)に、フランスのトワル・ド・ジュイ(ジュイ工房)で木版捺染と天然染料・顔料により手掛けられた植物図譜・花園更紗等と呼称されるデザイン様式のもの、インド更紗の忠実な模倣を試みていた時代の作例となります。

台地には同時代のインド更紗に近しい紡ぎ・織り感の上手(じょうて)木綿地が用いられており、これはインドからの輸入木綿地とも考察されております。そして緻密なモチーフ構成の蔓枝小花模様が、茜の明礬媒染の”赤”と鉄漿媒染の”焦げ茶”、その掛け合わせの”紫”、”黄”、顔料と思われる色調の”藍””緑”の6色構成で多彩に染め表わされており、高度な媒染技術と巧みな木版捺染の職人仕事により、当時のインド更紗にかなり近い色柄表情の、完成度の高い木綿多色染め物がフランスで生み出されていた様子が伺われます。

この18世紀末はフランス王妃アントワネットのドレスにもこの種のジュイ製白地花模様更紗が用いられていることが確認され、木版捺染と天然染料の媒染の分野において、フランス更紗が技術面でのいち頂点に達した時代であることを指摘することができます。

産業革命により化学染料や機械織りの布が登場し、織り染めが工業化に向かう19世紀半ば以降には失われし表情のもの、初期フランス・ジュイ更紗の薫り高き逸品裂です。





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●18世紀末製作のトワル・ド・ジュイ更紗が貼られたサンプル・ボード
(トワル・ド・ジュイ博物館所蔵)
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※上画像は「西洋更紗 トワル・ド・ジュイ展」図録より転載いたしております




●本記事内容に関する参考(推奨)文献
  

2016/9/25

19c琉球王国 苧麻×芭蕉交織・縞絣布  染織




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製作地 琉球王国(現日本国・沖縄県)
製作年代(推定) 19世紀後期 琉球王朝期
素材/技法 苧麻(桐板?)、糸芭蕉、天然染料/交織・経縞、経緯絣(藍)、経絣(薄紅)
サイズ 幅(緯):35cm、長さ(経):92cm


本布は白糸(経糸の一部と緯糸)は”苧麻”、茶糸(経糸の一部)は無染・生成りの”糸芭蕉”が配され経縞を形成するとともに、井桁状の文様が藍染めの経緯絣で、また紅花染めと思われる薄紅の斑状模様が同じく先染めの絣として織り表わされたもの、経縞に経緯絣の文様を散りばめた”綾中(アヤンナーカー)” と呼ばれる種類の王朝期・首里織物となります。

苧麻よりも糸芭蕉の糸(繊維)の方が太く硬質でコシがある等の質感に違いが出る中、巧みに整経・織りがなされ歪みやよれ無く端整に織り上げられている点は本織物の技術の高さを示しており、藍の経緯絣と薄紅の斑文を含めて細部に破綻の無い美しい織物に仕上げられております。

また本布に用いられている苧麻糸は白さとともに繊維の透明度が際立ち、本土で織られた苧麻織物(上布)とは表情・質感が異なっており、特定は出来ないものの”桐板(トゥンビァン)”と呼ばれる種類の琉球苧麻織物との関わりを伺わせるものとなります。

白く透明度の高い”苧麻(桐板?)”と、無染・生成りの柔らか味のある茶色を呈する”糸芭蕉”の織り成す縞の清々しさと美しさが際立つ一枚、古くは献上品や交易産品として扱われた種類の織物の格調の高さ・気品と固有の色香に惹き込まれます。



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2016/9/23

朝霧と隧道の先に  旅の一場面



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(写真 日本・三重県 伊賀市にて)

2016/9/21

17c末〜18c江戸中期 縮緬地・絞り&友禅染め裂  染織




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製作地 日本 京都  ※縮緬は中国からの舶載品の可能性有り
製作年代(推定) 17世紀末〜18世紀 江戸時代中期
素材/技法 絹(二越縮緬)、天然染料、天然顔料/絞り染め(縫い締め)、友禅染め(手描き)
サイズ 横幅:47cm、縦:46cm


本布は極めて繊細な絹糸遣いと織りがなされた二越縮緬地に、縫い締め技法の絞り染めと手描きの友禅染めにより意匠付けがなされた単着物の身頃裂で、色柄及び布地の状態の良さから、打敷とされて仏教寺院に奉納され長らく保存された後、それが解かれたものと考察されます。

本品に用いられている縮緬は当時の上手のもので、中国から舶載された生糸が素材に用いた国産縮緬若しくは中国で織られた渡り縮緬である可能性を指摘できるところとなります。

初期友禅に特有の鈍色・暗色を基調とする落ち着きある色彩で端整に表現された”蔓枝繋ぎ・菊花模様”と、”雲形”と呼ばれる流麗な曲線の縫い締めと紅花染めによるくっきりとした染め分けのデザインが印象的ですが、紅花染めの中にも縫い締めにより染め抜きがなされ、墨描きの蝶と友禅染めの菊花が”嶋模様(中近世染織の本来的な語彙での嶋模様)”として配置されており、これは明らかに中世絞り”辻が花(つじがはな)”を彷彿させる意匠のもの、本布は”辻が花的絞り”+”初期友禅”で彩られた着物裂の残存作例として資料的に貴重なものと位置づけられます。

二百余年〜三百年を遡る時代の縮緬地・絞り&友禅染め裂、糸・布・文様の細部まで破綻なく美の生命と精神性が宿った、江戸中期日本染織の技巧の粋を感じさせる一枚です。




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2016/9/19

初秋のにほひ  旅の一場面




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(写真 日本・奈良県 天理市にて)

2016/9/17

17−18c日本渡り 絹×木綿交織嶋”甲比丹”裂  染織




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製作地 インド  
製作年代(推定) 17−18世紀初  
渡来地・使用地 日本 江戸時代初中期
素材/技法 経糸:絹、緯糸:木綿、天然染料/平織
サイズ 横(緯):33cm×縦(経):28cm


今から三百余〜四百年を遡る江戸時代初期に、交易船(南蛮船・紅毛船)に舶載され日本にもたらされた絹×木綿交織の渡り嶋(縞)”甲比丹(カピタン)”。

糸・布・色彩の生命が数百年を経過しても失われることがない... インド更紗とも共通する、この時代のインド染織の素材の品質の高さ、染色と織りの技術の卓越に圧倒される一枚です。

唐桟留や甲比丹等の渡り嶋物が、江戸中後期の日本”縞物”(の流行)に与えた影響の大きさは計り知れないものがあります。浮世絵により”嶋(縞)”の世相を確認することができます。





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2016/9/15

19c江戸後期 東北の鬼手木綿・赤更紗  染織




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製作地 日本 東北or京都(不詳)  使用地 東北地方
製作年代(推定) 19世紀半ば 江戸時代後期
素材/技法 木綿、天然顔料/型染、摺り込み、片面染め
サイズ 横幅(緯):31cm、長さ(経):95cm


本品は国産木綿を素材とする手紡ぎ感の強い”鬼手”の木綿地を台布に、複数の型紙を用い、地色は蘇芳染めの臙脂掛かった赤、菊や桔梗の花模様は黄・桃・藍及びその掛け合わせ、いずれも顔料化した染料の摺り込み技法により布片面から彩色を行なった江戸期和更紗となります。

ここまで地を濃厚な赤で色付けした和更紗は類例が少なく、同種のモノのほどんどが青森・岩手の北東北・南部地方を出自とするため”東北の赤更紗”の呼称が与えられておりますが、残存する裂の中に19世紀半ば頃の奉納年紀が記載されたものが散見されることから、江戸時代後期を中心に東北或いは京都で手掛けられ、東北の地で用いられたものとも考察されております。

そして本布は”オシラサマの赤更紗(よだれ掛け)”の別称があり、東北地方で蚕の神・馬の神、農作物の豊穣祈願の神様として家々で信仰されてきた土着神”オシラサマ(おしら様)”の着衣(奉納衣)として用いる慣習を有してきたものとなります。

北東北は人よりも馬に高級な衣を纏わせる(馬掛け布)というほど馬への敬意と信仰が篤かった土地柄、この格別に色柄の完成度が高く、手の込んだ天然顔料染めで表わされた”赤更紗”も、人のためではなく(馬の)神様のために特別に発注し購ったものであったかもしれません。

明治・大正期以降、染織産業の機械化・工業化は急速に進展し、本品のような手紡ぎ・手織りの国産木綿、天然染料(顔料)を素材に昔ながらの手仕事の型染や手彩色で染めが行われる”和更紗”の伝統は薄れ、機械織の布に化学染料により多彩な色付けを行う、さらにプリント(印刷)的技法で色模様が付けられるものが一般化し、意匠師・型紙師・染め師等の職人仕事が結実し完成に至る本来の”和更紗”はほぼ失われしものとなりました。

古き良き日本の染め布の時代が偲ばれるとともに職人たちの粋が布から薫り立つ、また用いられた土地の習俗・物語が浮き彫りとなる、江戸後期・和更紗の逸品裂です。




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2016/9/13

18cスリランカ渡り ”染め”と”織り”併用のインド更紗  染織




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製作地 インド南東部 コロマンデル海岸エリア  
製作年代(推定) 18世紀
渡来地・使用地 スリランカ
素材/技法 木綿、経緯とも双糸、天然染料/手描(カラムカリ)、媒染、両面染め、格子織、絣
サイズ 経44cm×緯87cm


インド南東部、海峡を挟みインド洋に浮かぶセイロン島は古代よりインド文化の影響が強く、人口の多数を占め大半が仏教を信仰するシンハラ人のもと仏教国として栄えてきた国です。

近世、欧米列強のポルトガル・オランダ・イギリスが順繰りにスリランカを植民地支配した海洋交易の時代、ヨーロッパ向け重要産品の香辛料のひとつ”シナモン”の交易対価として、この種のインド更紗がセイロン島にもたらされたものと考察されます。

本品は18世紀にインド南東部コロマンデル海岸エリアにて手掛けられ、オランダ植民地下のスリランカにもたらされたと推察されるインド更紗の部分裂で、手描き(カラムカリ)で染め描かれた左右上下の多色ホーダー柄(但し本裂は左右ボーダーの片側のみ保有)と、白糸・赤糸の二色遣いで縞格子に織られ、その上から重ね染めが加えられた模様入り市松状格子からなるもので、一枚の更紗の中に”染め”と”織り”の要素が混在している点、また経緯双糸織りの木綿布が用いられている点で類例の限られる特殊な作品と言うことができます。

スリランカ渡りのインド更紗自体、残存数の限られる稀少なものですが、更に”染め”と”織り”が併用された作品として本布は資料的に極めて貴重なもの、インドネシアと日本に渡った”格天井手”と呼ばれる染め織り併用更紗との関連性の視点でも興味深い作例となります。

歴史の浪漫を薫らせる海洋交易時代・スリランカ渡りインド更紗の逸品裂です。



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●本記事内容に関する参考(推奨)文献
  

2016/9/11

9月の旅 夏の残り香  旅の一場面



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(写真 日本・京都府 京都市北区にて)



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