2021/2/9
琉球王国 19c 木綿”紺地絣に水玉模様”紅型裂 染織

製作地 琉球王国(現日本国・沖縄県)
製作年代(推定) 19世紀
素材/技法 木綿、天然顔料、天然染料 / 型染(朧型)、糊防染、片面染め
サイズ 横(緯)32cm、長さ(経)60cm
琉球王国(現日本国・沖縄県)で19世紀に手掛けられた、木綿”紺地絣に水玉模様”紅型裂。
具象模様が表されることが多い紅型の中で、布全体が抽象的な小紋柄で彩られた特殊な系統の作品で、白地型紙と染地型紙の双方の型紙を用いて模様を重層的・立体的に表す”朧型(ウブルガタ)””重型”と呼ばれる技法が用いられたものとなります。
本布は全面に斑状の地模様が染め描かれておりますが、藍濃淡及び点描と線を巧みに組み合わせた色柄表情から”絣模様”を意図したものと推察されます。そしてこの十字絣のような”絣模様”は、部位によってモチーフの細部に差異が見られることから、二種類の染地型紙(例えば”花あられ”と”一文字斜格子”)を使用し位置をずらしつつ糊置きをした可能性を指摘できます。
この不均質ゆえに独特な味わいのある地模様と白抜き部分に色を乗せた”水玉模様”のコンビネーションが何とも秀逸で、繊細さと大らかさを兼ね備えた絵柄に見飽きることの無い表情の豊かさが感じられます。
この種の朧型染め小紋柄の紅型は、主に表と裏のどちらでも着用できる仕立てのリヴァーシブル衣裳や花織絣衣裳の裏地として用いられたことが知られており、本布も同様の用途で使用された衣裳の解き裂であると考察されます。
王朝期紅型に固有の深く瑞々しい藍の色、そして今では失われし染色技法による緻密な模様表現、土地と時代の織り成す濃密な空気感・色香に魅了されるいにしえの一枚です。




●参考画像1

苧麻紺地経緯絣
※上画像は日本民藝館発行「田中俊雄蒐集沖縄織物裂地」より転載いたしております
●参考画像2

同種の紺地朧型染め小紋柄紅型(裏は緋色地)が使われたリヴァーシブル衣裳
東京国立博物館収蔵
※上画像はサントリー美術館発行「紅型 琉球王朝のいろとかたち」より転載いたしております
●本記事内容に関する参考(推奨)文献