2018/4/19
20c初 多弁花&瓔珞文様 織機綜絖吊り・木製滑車 生活と祈りの意匠

製作地 カンボジア南部
製作年代(推定) 20世紀初め
素材 木製、鉄(吊りパーツ・車軸)
サイズ 滑車部分の外形サイズ:直径約5.2cm、鉄製の吊りパーツ含む全長約9.5cm
カンボジアやタイ・ミャンマーなど、古くから染織品が宮廷儀礼や仏教儀礼に纏わる装束や装飾のものとして製作が盛んであった土地では、部品の一つ一つに美しい装飾が施された木製及び金属製の織機が用いられていました。
織機を構成する部品(綜絖(そうこう)・筬(おさ)を吊る装置の部品)として使われていた、この手の込んだ”装飾滑車”からは、敬虔な仏教信仰を背景とする、古き良きインドシナ伝統染織の時代が偲ばれます。
本品は多弁花と瓔珞状の吉祥文様が端整かつ流麗に彫り描かれた作品で、深みのある色合いの木肌をあわせて、仏教に縁の工芸品としての格調の高さと荘厳美が薫ってまいります。






2017/3/14
遍在するクリシュナ神 生活と祈りの意匠

●シルバー製アムレット
製作地 インド ラージャスタン州
製作年代(推定) 19世紀〜20世紀初め

●水彩画
製作地 インド ビハール州
製作年代 20世紀末

●多色刷り石版画
製作地 インド マハーラーシュトラ州
製作年代(推定) 20世紀初め

●木綿地絹刺繍
製作地 インド ヒマーチャル・プラデッシュ州
製作年代 20世紀後半
2016/2/13
時空と場を司る動物たち 生活と祈りの意匠


(写真 インドネシア・スラウェシ島南スラウェシ州 タナ・トラジャにて)
2015/2/12
幸運の使い”ふくろう”の真鍮製香炉 生活と祈りの意匠

製作地 インド・オリッサ州(或いはマディヤプラデッシュ州・ビハール州)
製作年代(推定) 20世紀前期
”ふくろう”は、ヒンドゥの最高神の一人”ヴィシュヌ”の妻であり、美と幸運を司る女神”ラクシュミー”の乗り物、インドでは古来より幸運をもたらす鳥として様々な工芸品の意匠とされ人々に愛好されてきました。
本品は蓋部と器部からなる真鍮製の香炉で、この地方の金属鋳造職人”ドクラ(dokra)”が“脱蝋法(ロスト・ワックス法)”をベースに一部鑞付けや彫金を加えて手掛けた種類のものとなります。
信仰に纏わる調度品(香炉)として作られたアンティーク作品、伝統手仕事の造形の完成美、そして祈りのものゆえの瑞々しく息づく精神性に惹き込まれます。



2014/10/1
吉祥の動物に込められた豊穣・平安の祈り 生活と祈りの意匠
●薬や裁縫道具を収めるボックス(うさぎ)

製作地 タイ東北部
製作年代(推定) 19世紀後半〜20世紀初め
●薬や裁縫道具を収めるボックス(カエル)

製作地 タイ東北部
製作年代(推定) 20世紀前期
●織機の綜絖を吊る滑車(鹿)

製作地 カンボジア南部
製作年代(推定) 20世紀初め
●織機の綜絖を吊る滑車(うさぎ)

製作地 タイ東北部
製作年代(推定) 20世紀初め
仏教説話に登場する様々な動物たちは、インドシナ諸国の仏教信仰圏において、農作物・家畜の豊穣をもたらしてくれる吉祥の動物として崇められ、手工藝品のモチーフとされてきました。
雨を降らしてくれる”カエル”、多産と豊穣をもたらしてくれる”うさぎ”、長寿や子供の健やかな成長を象徴する”鹿”... いずれも単なるデザインではなく、祈りそのものとして製作され、生活の中で用いられてきたものとなります。
●月うさぎ(アジアの仏教信仰国を中心に広く伝わるもの)

(写真 タイ北部にて)
●本記事内容に関する参考(推奨)文献
2014/7/16
彫刻・彫金の護符として表された”陰陽魚” 生活と祈りの意匠
●堅木彫刻の護符

製作地 中国・貴州省
製作年代(推定) 19世紀後半
民族名 ミャオ族
●シルバー彫金の護符(ブレスレット)

製作地 中国・貴州省
製作年代(推定) 20世紀初め
民族名 トン族
”陰陽魚(双魚)”は古代中国の道教に由来するデザインで、白黒の勾玉が組み合わされた陰陽対極図を原初としますが、中国西南に生活する少数民族の間では、自然・精霊信仰及び先祖崇拝と結び付いた”吉祥の護符”として独自の意匠上の発展がなされていきました。
”田鯉”は稲作の豊穣を象徴する生き物であるとともに水と大地を司る”龍”とも混交するもの、さらに龍は先祖崇拝と結び付き、先祖の姿(魂)そのものを表すものと指摘することができます。


2013/10/18
うさぎに込められた平安・豊穣の祈り 生活と祈りの意匠


製作地 タイ東北部
製作年代(推定) 上:20世紀初め、下:19世紀後半〜20世紀初め
うさぎの意匠の”滑車(織機の部品)”と”薬容れ”。いずれもタイ東北部のイサーン地方で手掛けられた100年余り前の作品です。
うさぎは仏教説話(ジャータカ)に登場する吉祥の動物であるとともに、多産=豊穣を象徴する動物としても親しまれ、この種の生活の道具のうちに表されてきたものとなります。
平安・豊穣を祈りながら家族のための布を織り... 健康・長寿を祈りながらうさぎの容れ物に薬を納め... 作品からは単なる装飾品や工芸品ではない、”生活と祈り”の実用道具ゆえの生命感、豊かな精神性が伝わってまいります。


●本記事内容に関する参考(推奨)文献
2013/8/10
魔を寄せ付けない祈りの意匠 生活と祈りの意匠


一見すると斬新で不思議なデザインとも思えますが、これが赤ちゃんを背中に負ぶう際に、魔・病気を寄せ付けないためのお守りとして背に付ける布と知ると納得がいきます。
中国・貴州省西部エリアに生活する苗(ミャオ)族支族に伝わる”ろうけつ染め”の意匠で、おばあちゃんや母親が祈りとともに自身の手で手掛ける伝統を有してきたものとなります。

製作地 中国・貴州省 黔西県
製作年代(推定) 20世紀半ば〜後半
民族名・支族 苗(ミャオ)族 黔西 Qianxi

製作地 中国・貴州省 糸只金県珠場
製作年代(推定) 20世紀半ば〜後半
民族名・支族 苗(ミャオ)族 珠場 Zhuchang
2013/7/11
孫ごしらえ 錨模様の筒描き布 生活と祈りの意匠

製作地 日本・島根県 出雲地方
製作年代(推定) 19世紀後半〜20世紀初頭 明治時代中後期
嫁いだ娘と生まれたばかりの孫のため、生家が祈りとともに仕立てて贈った、出雲地方で”孫ごしらえ”と呼ばれる筒描き布。
大きく力強い”錨(いかり)”模様は、娘と孫が嫁ぎ家に末永く錨のごとく根をおろし、家が発展して幸せになるように、という願掛けの意が込められたものと伝わります。
布々や衣が人々の祈りとともにあった時代の、日本の誇るべき染織作品の一つです。


●本記事内容に関する参考(推奨)文献
2013/6/28
19c江戸期 ”ことろ人形” 生活と祈りの意匠

製作地 日本・山形県 米沢
製作年代(推定) 19世紀 江戸時代後期

「子をとろ子とろ」は鬼ごっこの一種で、”親役”の後ろに連なった最後尾の子を、”鬼役”が触ろうとし、親と子はそれを防ごうと動き回る(連なった身体を離してはならない)遊びとなります。
この遊びには、疫病で幼子が亡くなることの多かった時代、”病い神(鬼)”に子供を持っていかれないようにという願掛けの意が込められていたとも伝えられており、”ことろ”(後世”おしくら”とも)と呼ばれる土人形は、神棚や仏様の前に置かれ、子供の健やかな成長が祈られました。
●”子をとろ子とろ”遊びの情景

●本記事内容に関する参考(推奨)文献
2013/6/6
明治期・堤人形のこんこん様 生活と祈りの意匠

製作地 日本・東北地方 宮城県仙台
製作年代(推定) 19世紀後半〜20世紀初頭(明治時代)
この稲荷狐を象った土人形は、江戸時代に浅草今戸焼の中から生まれた意匠と伝わります。
後世、この”こんこん様”は、信仰のものとして、また意匠の親しみやすさから各地でもてはやされそれぞれの地方で土物・練り物等として量産されるに至りますが、その中で、だんだんと今戸焼が有していた原初的な味わい(素朴ながら生命が息づいている)は失われていきました。
この仙台の堤人形は明治期につくられたものですが、造形・胡粉の肌合い・絵付けが秀逸で、江戸期”今戸の狐”本家の表情をしっかりと継承している点に魅力を感じます。




●本記事内容に関する参考(推奨)文献
2013/1/28
農牧民のヒーロー”クリシュナ神” 生活と祈りの意匠


※上画像はRoli Books刊「SILK BROCADES」より転載いたしております
インドの農牧民にとって、最も身近で親しみの強いヒンドゥの神様が”クリシュナ神”です。
牛飼いの養母に育てられ、牛飼いの娘と恋をして、大人(神)になったあとも庶民の味方として、農牧民の憧れの存在(ヒーロー)であり続けてきました。
”笛を吹くクリシュナと牛”の姿が繊細な打ち出しと彫金により表わされた、この銀パーツと木綿巻き紐のネックレス(チョーカー)は、クリシュナへの篤き信仰とともに農牧民が身に着けた”アムレット(お守り)”であり、牛に付けられる”牛鈴”の意匠ともイメージが重なるものです。
作品からは、農牧民のクリシュナ神への尊敬と祈り、そして牛への愛情が伝わってまいります。

製作地 インド・ラージャスタン州
製作年代(推定) 19世紀〜20世紀初頭 ※シルバーパーツの製作年代、紐成型は20世紀半ば
●本記事内容に関する参考(推奨)文献
2012/7/24
赤ザオ族の赤ちゃん負ぶい布 生活と祈りの意匠

製作地 ベトナム・ラオカイ省
製作年代(推定) 20世紀後半
民族名 赤ザオ族
赤ザオ族の赤ちゃん負ぶい布は、赤ちゃんのいない女性(幼い女の子からおばあちゃんまで)も衣装の背側を飾る布として、普段の生活の中で身に着けている姿を目にすることがあります。
家族に限らず、村の誰かから赤ちゃんのお守りを頼まれた際、いつでもこの布を使うことができる、そのような意味合いが含まれているのかもしれません。

(写真 ベトナム・ラオカイ省 タフィンにて)
●赤ちゃん負ぶい布を背中の装飾に用いた赤ザオ族の女性

(写真 ベトナム・ラオカイ省 サパにて)
2012/7/23
黒モン族の赤ちゃん負ぶい布 生活と祈りの意匠

製作地 ベトナム・ラオカイ省
製作年代(推定) 20世紀後半
民族名 黒モン族
中国・雲南省と国境を接するベトナム・ラオカイ省に生活する黒モン族の赤ちゃん負ぶい布。
上部に刺繍とアップリケ、下部に藍ろうけつ染めの二つのパーツで構成される、帯の付かない蓋布タイプの作例ですが、このデザイン様式の赤ちゃん負ぶい布は、中国・貴州省に生活する幾つかのミャオ(モン)族支族において、同種のモノが見受けられます。
中国・西南地方から南下、インドシナ北部に移住したミャオ(モン)族の、今でも失われずに継承される伝統の意匠、民族の歴史とアイデンティティを感じさせる生活の刺繍・染織作品です。
●中国・貴州省に生活するミャオ族の手による赤ちゃん負ぶい布


(写真 ベトナム・ラオカイ省 サパにて)
2012/6/29
神さまの遣わした動物 生活と祈りの意匠


ミャオ族の手によるシルバー衣装飾りと装身具
古今東西、稲作民・農耕民の多くは”馬”を神や天の遣わしてくれた動物とする伝承を有します。中国・西南地方に暮らす少数民族たちも同様です。
我が国日本には”神馬(じんめ)”という言葉がありますが、神様の乗り物であるとともに、神の遣わした動物という意が掛けられていることに想い至ります。

(写真 中国・貴州省 黎平県にて)

●貴州省に生活するシュイ族の切り絵(剪紙)