2021/4/15

江戸時代中期 「連雲(霊芝雲)宝尽し文様」金襴裂  染織




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製作地(推定) 中国 清朝期
製作年代(推定) 18−19世紀初期
渡来地・使用地 日本 江戸時代中期
素材/技法 絹、箔糸(平金糸) / 繻子地・金襴、全通・全越・別絡
サイズ 幅15cm(最大部16.5cm)、長さ50cm

金茶色の絹を経、生成り(薄茶)色の絹を緯とする繻子地をベースに、金を貼った箔糸が全通・全越で織り入れられ”連雲(霊芝雲)宝尽し文様”が織り地全体に緻密かつ端整に表現されたもので、金箔糸は地組織の糸とは異なる別絡の糸で巧緻に組織されており、時代はやや下がるものの、繻子地・全通・全越の金襴織物としての格調の高さと完成美を有しております。

表具若しくは打敷解きの一部分と考察される15cm×50cmの細長の裂地で、箔糸を見ると表面の金は製作当初の半分強が残っており、ここまで金が残っている江戸中期の金襴織物はなかなか見出し難い稀少なものと言うことができます。




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2021/4/15

19c 小花紋 ペルシャ錦(ブロケード織物)裂  染織




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製作地 ペルシャ 或いは ペルシャ向けインド製
製作年代(推定) 19世紀
素材/技法 絹 / ブロケード(平地・緯紋織)
サイズ 幅(緯)28.5cm、縦(経)48cm 同サイズが2枚

19世紀にペルシャ或いはペルシャ向けにインドで手掛けられたブロケード織物裂。

織り組織(経緯)は撚絹、絵緯は不撚の多色絹を素材とする平地・緯紋織の技法による緻密なブロケード織物で、華やぎと落ち着きを兼ね備えた紅赤地に織り描かれた優美な花模様、ペルシャ宮廷やムガル宮廷で好まれた傾きを加えた”小花紋”の連続模様に固有の気品と格調高い様式美が濃密に薫ってまいります。




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2021/4/10

日本・京都 17c 舶載白綸子地絞り染め着物裂  染織




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製作地 日本 京都 ※白綸子は中国からの舶載品
製作年代(推定) 17世紀(〜18世紀初頭) 江戸時代初期
素材/技法 絹、天然染料 / 綸子、縫い絞り、疋田絞り
サイズ 横17.5cm、縦29cm

室町末〜桃山期の「辻が花」の残り香が色濃く感じられる”縫い締め絞り”の染め分け、上質な生糸遣いで”卍繋ぎ”に様々な意匠の”花模様”が繻子裏組織で緻密に織り表わされた”紗綾型綸子”の「唐船舶載絹織物」、江戸時代初期の染織に固有の精神性の深みに惹き込まれる絞り染め着物裂です。

紅花染めの紅に黄染料(キハダや梔子)を交色し華やぎ感を加えた”猩々緋(しょうじょうひ)”、落ち着いたマットな色味の”檳榔樹黒”との色コントラストが何とも秀逸で、糸・織り・染めの意匠全体から中国・日本双方の職人手仕事の技巧の完成美・格調美が薫ってまいります。

三百余年を遡る江戸初期の貴重な伝世古裂、時代の色香に惹き込まれる一枚です。




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2021/4/7

日本・兵庫 19c後〜20c初 木綿縞”佐治木綿(縞貫)”裂  染織




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製作地 日本 兵庫県丹波市(丹波国佐治村) 
製作年代(推定) 19世紀後期〜20世紀初頭 江戸時代末〜明治時代
素材/技法 木綿、天然染料 / 平地、縞格子
サイズ 幅(緯)33cm、長さ(経)65cm

緻密で端整な織りながら、布のどの部位を目にしても一糸一糸に表情の豊かさと滋味が感じられる、江戸末〜明治期の「佐治木綿(縞貫)」、糸・染め・織りに高度な技巧と精神性が加えられた様子が伺える一枚です。

本布は絹(つまみ糸)は配されず、緯糸のすべてに手紡ぎ感の強い木綿糸が用いられている点に固有の特徴及び特殊性が見られます。

素材を木綿のみとした理由は定かではありませんが、蒲団表として使用された形跡(布片面に色褪せがみられる)から、布の強度と肌触り(柔らか味)等を重視する中で、画像でも確認できるような細太織り交ぜた不均質な手紡ぎ木綿を織り全面に敢えて用いた可能性を指摘できます。




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2021/4/4

日本・東北 19c後 木綿”唐草&鱗模様”筒描馬掛け布  染織




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製作地 日本・東北地方
製作年代(推定) 19世紀後期 明治時代
素材/技法 木綿、天然染料、天然顔料 / 筒描、摺り込み
サイズ 横幅(上辺)178cm・(下辺)89cm、縦52cm

東北地方は南部(青森・岩手)の“南部駒”、最上(山形)の”小国駒”を筆頭に名馬の産地を数多擁するとともに、古来より馬に纏わる習俗・伝承が豊富で、農耕馬・荷役馬への愛情深く、オシラサマなど馬への信仰が篤かった土地柄となります。

この馬掛け布は婚礼時や祝祭時に馬を所有する商家や富裕農家が紺屋への特別な発注で仕立てる伝統を有したもの、本品は手紡ぎ・手織りの木綿を台布に手描き・手染めの“筒描”の技法により意匠付けがなされた作品で、渦巻き状の”唐草”と小さな三角形が連なる”鱗”の吉祥・守護模様が、”源氏車”の家紋と”檪木”の家名及び”踏馬御免”の常套句とともに多彩かつ力強い意匠で染め表されております。

取り分け流麗で生き生きとした生命感を薫らせる”唐草模様”と藍濃淡を加えると5色で染め表された”鱗模様”のコンビネーションが秀逸で、描き線と染め色の随所から江戸職人直系の卓越した仕事ぶりを感じることができます。

明治期の未だ馬が農耕の場面で日常的に活躍していた時代の馬掛け布であり、馬に対する並々ならぬ想いが伝わる、古き良き日本の地方染織の逸品です。



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2021/4/1

琉球王国 19c 木綿”白地稲妻に短冊菊楓模様”紅型裂  染織




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製作地 琉球王国(現日本国・沖縄県)
製作年代(推定) 19世紀前期〜半ば
素材/技法 木綿、天然顔料 / 型染、糊防染、片面染め
サイズ 横幅(緯)39cm、長さ(経)48cm

稲妻模様の中に多彩かつ緻密な絵柄構成の”短冊”と大輪の”菊”及び”楓”が散りばめられた、見応え溢れる琉球王朝期の紅型裂です。

中手模様の型紙を用い稲妻模様が滑らかに繋がるよう巧みに染め描かれており、華やかながらも落ち着きのある天然顔料の色味にも王朝期古紅型ならではの格調の高さが感じられます。

特筆すべきは、横幅(緯)39cm×長さ(経)48cmの大判裂で両耳が整い、糸・布・色彩の状態も極めて良好である点で、現在では早々見出し難い資料的に貴重な一枚と言うことができます。



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2021/2/27

インド 18c スマトラ向け”茜描き染め格子模様”インド更紗裂  染織



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製作地 インド南東部 コロマンデル海岸エリア Coromandel coast
製作年代(推定) 18世紀
渡来地・使用地 インドネシア・スマトラ島
素材/技法 木綿、天然染料 / 手描き(カラムカリ)、媒染、片面染め
サイズ 27.5cm×21.5cm

細太の糸を交えた手紡ぎ木綿の触感がある”鬼手(おにで)”木綿地に、カラムカリ(手描き)の技法により細密な格子模様が染め描かれた、18cインドネシア・スマトラ渡りのインド更紗裂。

下に掲載の参考画像の作品のような、上下に鋸歯文様を配したスンバギ様式のインド更紗の本体柄及びサイドボーダー柄であったと考察される部分裂で、縦横ともに明礬媒染(=赤に発色する)の線を約2mm間隔の二重線(二筋縞)で描き上げ、その間に明礬+鉄漿媒染(=紫に発色する)を塗り、茜染料に浸染することで、二色遣いの格子模様を表現したものとなります。

一見するとラフな染めとも思えますが、全形では横幅1m前後・縦2m前後の長さの布上に手描きの二重線をむらなく引き、さらに二重線内の1.5mm程度の隙間(無数の隙間)に点々と紫に染める部分の媒染液を筆(カラム)で置いていくことで細部に破綻の無い模様を完成させており、並々ならぬ手技と根気が加えられた染め布と言うことができます。

和名をあてると「白地細格子花唐草模様」となる一枚で、インドネシア渡りですが、日本渡りであっても違和感の無い、明らかに数寄者好みの意匠のもので、質感ある手触りの鬼手木綿と、緻密でありながら枯淡な雰囲気を湛える手描き格子模様に得も言われぬ滋味が薫ってまいります。

縦横の直線で構成される単純模様でありながら出来上がりの表情は硬く神経質な雰囲気とはならず、大らかで柔らか味や伸びやかさがある、古渡り期インド更紗の実力を感じる一枚です。



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●参考画像 手描きで格子状模様が描かれた近似する意匠のインド更紗
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※上画像は京都書院刊「知られざるインド更紗」より転載いたしております





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2021/2/23

日本 19c後〜20c初 木綿”牡丹&散し楓模様”筒描掛け布  染織




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製作地 日本 ※地域不詳
製作年代(推定) 19世紀後期−20世紀初め 明治時代
素材/技法 木綿、天然染料、顔料 / 表:筒描(防染)、描き染め(彩色)、裏:紫根染め
サイズ 横76cm、縦100cm

日本で19世紀後期〜20世紀初めの明治時代に手掛けられた、木綿”牡丹&散し楓模様”筒描掛け布。

2+半巾の小ぶりの筒描き布で、下隅に配されたフリンジから油箪等の掛け布とされたと推察されますが、紫根染め(病除け)の裏地から赤ちゃん・幼児用の布とされた可能性も考えられます。

いずれにせよ、日常とは異なるハレのものとして紺屋への特別な発注で製作されたことは間違いなく、筒描&描き染めの意匠は細部にまで神経が通い、紫根染め裏地をあわせ、固有の華やぎと格調の高さを纏った作品となっております。

時代は明治に下ると思われますが、江戸職人直系の仕事ぶりが、線描きの”一線一線”、重ね染めや暈しを駆使した染めの”一色一色”、さらには手紡ぎ木綿や縫いの”一糸一糸”から感じ取ることができ、職人の意気・誇りに打たれ、背筋が伸びる思いがする一枚です。



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2021/2/19

インド 18c シャム向け”円花&瓔珞模様”インド更紗裂  染織




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製作地 インド南東部 コロマンデル海岸エリア
製作年代(推定) 18世紀
渡来地・使用地 シャム王国 アユタヤ王朝期
素材/技法 木綿、天然染料 / 手描き(カラムカリ)、媒染、防染、片面染め
サイズ 横25.5cm、縦124cm

インドで手掛けられ、アユタヤ王朝期18世紀のシャム王国(タイ)にもたらされた”円花&瓔珞模様”インド更紗裂。

本布は、本体部に大ぶりの”円花模様”と”火焔状模様”、エンドボーダーに多層の”瓔珞模様”が表されたもので、部分裂ながら124cmの長さがあり、完品では横幅1m・長さ3mに達する大判の仏教儀礼用の腰衣”パー・ヌン(pha nung)”であったと考察される一枚です。

何と言っても9層におよぶ”瓔珞模様”の存在感が際立っており、茜赤と黒(焦茶)の深く鮮やかな色味が印象的な”円花&火焔状模様”とあわせ、インド・コロマンデルへの特注品である宮廷様式シャム更紗ならではの格調の高さと荘厳美が濃密に薫ってまいります。

そして特筆すべきは、大小すべてのモチーフが総手描きの”カラムカリ”で染め表されている点で、流麗で躍動感のある毛抜き状の線描きが見事、円花模様のひとつひとつ、瓔珞の部分部分の表情が異なっており、モチーフには硬さが無く細部にまで美の生命が宿っております。

糸・布・染料、職人の染色技術、作品の背景にある精神性、そのすべてが今では失われし再現することの出来ないもの、土地と時代が育んだ木綿染色の孤高の名品裂です。



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2021/2/15

琉球王国 19c 苧麻”白地小花貝模様”紅型裂  染織



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製作地 琉球王国(現日本国・沖縄県)
製作年代(推定) 19世紀
素材/技法 苧麻、天然顔料 / 型染、糊防染、両面染め
サイズ 横13.5cm、縦9.5cm

琉球王国(現日本国・沖縄県)で19世紀に手掛けられた、苧麻”白地小花貝模様”紅型裂。

サントリー美術館発行「紅型 琉球王朝のいろとかたち」に本品と同手型紙で作られた苧麻地衣裳の掲載があり、解説文に「絣織りの地に型染めした珍しい紅型衣裳」との記載があります。

小さな裂ですが、貝・貝藻・小花等の緻密な絵柄のモチーフが多彩に染め描かれた可憐な苧麻地紅型で、画像からも絣による地模様(濃淡の線模様)を確認することができます。

上質な苧麻の糸遣いと手の込んだ多色両面染めの王侯貴族衣裳用の裂で、貴重な一枚です。



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     ●参考画像
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同手型紙が用いられ色遣いも近似する苧麻地紅型の衣裳
東京国立博物館収蔵
※上画像はサントリー美術館発行「紅型 琉球王朝のいろとかたち」より転載いたしております




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2021/2/13

日本・東北 19c後〜20c初 木綿”波に兎模様”筒描馬掛け布  染織




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製作地 日本・東北地方
製作年代(推定) 19世紀後期−20世紀初頭 江戸時代末〜明治時代
素材/技法 木綿、天然染料、顔料 / 筒描、摺り込み
サイズ 幅35cm、長さ202cm

日本の東北地方で19世紀後期〜20世紀初頭の江戸時代末から明治時代に手掛けられた、木綿”波に兎模様”筒描馬掛け布。

東北地方は南部(青森・岩手)の“南部駒”、最上(山形)の”小国駒”を筆頭に名馬の産地を数多擁するとともに、古来より馬に纏わる習俗・伝承が豊富で、農耕馬・荷役馬への愛情深く、オシラサマなど馬への信仰が篤かった土地柄となります。

この馬掛け布は婚礼時や祝祭時に馬を所有する商家や富裕農家が紺屋への特別な発注で仕立てる伝統を有したもの、本品は手紡ぎ・手織りの木綿を台布に手描き・手染めの“筒描”の技法により意匠付けがなされた作品で、豊穣・飛躍を象徴する”波に兎”の吉祥模様 が、”鷹の羽紋”の家紋及び”踏馬御免”の常套句とともに躍動感溢れる姿で染め表されております。

“馬掛け布”は装飾する部位により形状・サイズが異なりますが、幅35cm・長さ202cmの一枚布で中央付近に紐を通すための一対の乳(ち)が付され中央に家紋が配された本布は、腰・尻部に掛けて使用されたものと推察されます。

ふっくらした体躯で紅花染めと思われる和らぎある桜色でほんのりと色づけされた兎の姿が何とも可憐で愛らしく、波模様を交えた明瞭で生き生きとした意匠表情に目と心を奪われる一枚です。




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2021/2/5

日本 17−18c ”インド更紗写し”和更紗裂(包裂)  染織



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製作地 日本 ※地域不詳
製作年代(推定) 17世紀後期−18世紀前期 江戸時代初中期 ※木札は後年付されたもの
素材/技法 木綿(国産木綿)、天然顔料(弁柄) / 型染、摺り込み
サイズ 約24cm×約26cm

17世紀後期〜18世紀前期の日本で手掛けられた和更紗裂。

一見すると古渡りの”鬼手木綿・茜染めインド更紗”と見紛うばかりの表情と雰囲気を纏っており、実際に茶の湯の包裂として用いられたことを鑑みると、当初から”インド更紗写し”に意味をもたせて製作・使用されたことが想像される江戸時代初中期の作品です。

古渡りインド更紗のデザインが元となる”六宝繋ぎ花模様”の小紋柄を、同じくインド更紗の茜染めを模した”弁柄(べんがら)”による色づけで再現したもので、当時の国産木綿手紡ぎ糸の粗い風合いがインドから舶載された”鬼手木綿”と相似することをあわせ、茶人等の数寄者がこの種の技術的に未完ながらも枯淡な味わいのある和製更紗を好んだものとも推察できます。

付された木札には”古信楽輪蓋置(わのふたおき)”と記されており、筒型の焼き物を長年包んできたことによるものか、布にはかなりのたわみ・ゆがみが加わっております。

経年・使用による褐色や変形、さらには傷さえもこの包裂の味わいを高めているようにも感じられ、本布を通して様々な視点から時代染織の魅力を再発見できるように思われます。

インド更紗を志向した国産木綿遣い初期和更紗、時代の浪漫に惹き込まれる一枚です。


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     ●参考画像
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     古渡りインド更紗 浅黄華六方(六宝繋ぎ花模様)
     更紗手鑑「古雅佐羅紗帖」収蔵
      ※上画像は平凡社刊「別冊太陽 更紗」より転載いたしております





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2021/2/3

琉球王国 19c 木綿”浅地雲に雁若松楓流水模様”紅型裂  染織




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製作地 琉球王国(現日本国・沖縄県)
製作年代(推定) 19世紀前期〜半ば
素材/技法 木綿、天然顔料 / 型染、糊防染、片面染め
サイズ 横12cm、縦42.5cm

19世紀前期〜半ば、今から180〜200年前の琉球王国で手掛けられた木綿”浅地雲に雁若松楓流水模様”紅型裂。

大模様・大柄型紙が使用され十色を数える多彩ないろで染められたパノラマ的な絵図が印象的な作品で、本裂は王候貴族階級の衣裳の衿であったと考察されます。

本裂の横12cmは実際の染め巾の半分弱ですが、縦42.5cmはほぼ全形に近い長さが保たれており、モチーフの入り方のバランスに優れ、いろ・かたちの良さをあわせ鑑賞裂として十分な見応えと完成美が感じられるところとなります。

本品と同手型紙で作られた苧麻地衣裳が東京国立博物館に収蔵されており、また同種模様衣裳が中国に献上され北京故宮博物院に収蔵されている旨を文献(サントリー美術館発行「紅型 琉球王朝のいろとかたち」・京都書院刊「琉球紅型」)で確認できます。


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       ●参考画像
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苧麻地「浅地雲に雁若松楓流水模様」紅型衣裳(部分)
東京国立博物館収蔵
※上画像は京都書院発行「琉球紅型」より転載いたしております




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2021/1/28

中国 17−18c 日本渡り”木綿間道”裂(包裂)  染織




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製作地(推定) 中国南部
製作年代(推定) 17−18世紀
渡来地・使用地 日本 江戸時代初中期
素材/技法 木綿、天然染料 / 平織、縞格子
サイズ 横(緯)100cm、長さ(経)91cm

中国南部で手掛けられ、江戸時代初中期17〜18世紀の日本にもたらされた”木綿間道”裂。

この平織の”木綿間道”は、変わり織木綿として知られる”唐木綿”とともに中国南方産の布としてオランダ船・中国船(唐船)との交易により舶来したと考察されるもので、インド産を主体とする唐桟留・奥嶋とともに、渡り木綿嶋が大名・貴族・商家等の富裕層の間でもてはやされた様子を当時製作され今に残る裂帖・手鑑及び茶の湯の裂地等により確認することができます。

17〜18世紀当時、国産木綿は未だ短繊維で糸が粗く、渡り木綿の織物の品質に近づくには至っておらず、上質な国産木綿織物の庶民層への流通は18世紀末の”寛政の改革”が契機となった旨の史料記述からも、江戸時代初中期は舶来木綿は憧れの存在であったことが伺えます。

この木綿間道は、白・灰・緑・水・紺・橙・赤茶の7色の木綿糸が経緯に配され、巧みな色の掛け合わせで細太の縞格子が豊かな色彩と端整な柄で織り上げられたもの、布幅(緯)は100cmで着尺の3巾にあたるもので、縫い目無しで絵柄に乱れが生じない羽織や包裂の仕立てがかなうもの、当初から数寄者向きの高級木綿嶋として発注されたものの可能性を指摘できます。

数世紀の時を重ねていろ・かたちを失わず現在に伝えられた布であり、糸・染め・織りの製作技術の高さとともに、日本人の裂愛好の精神・遺伝子が実感される染織作品です。


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2021/1/20

インド 18−19c スマトラ向け”アラベスク模様”インド更紗裂  染織



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製作地 インド南東部 コロマンデル海岸エリア Coromandel coast
製作年代(推定) 18世紀−19世紀初め
渡来地・使用地 インドネシア・スマトラ島
素材/技法 木綿、天然染料 / 木版捺染及び描き染め、媒染、防染、片面染め
サイズ 41.5cm×26.5cm

インドで手掛けられ、18世紀〜19世紀初めにインドネシア・スマトラ島にもたらされた”アラベスク模様”のインド更紗裂。

上下左右対称の輪繋ぎ状の連続模様が空間・余白を排して連なる、一見してイスラーム様式の意匠の”アラベスク模様”の影響が色濃い本布は、インドネシア・スマトラ島のジャンビ・パレンバン等ムスリム港市への交易向けに手掛けられたインド更紗の本体柄部分で、完品ではエンドボーダーに鋸歯状模様“トゥンバル”を備えていたと推察される作品です。

スマトラ島において“インド更紗”は“絹経緯絣パトラ”とともに王族・貴族階級のステイタス・シンボルと位置づけられ、代々受け継ぐ財産としての布“=スンバギ(sembagi)”として大切に扱われるとともに、バティック等ローカルの染織文化にも大きな影響を与えてきました。

本品は極めて繊細に紡がれた細手の糸により織り上げられた平滑な木綿地をベースに、木版捺染と描き染めの併用で緻密かつ多彩な色付けがなされた当時の上質な部類に入るインド更紗で、模様の一部にシャム王国向けインド更紗と共通する描線モチーフが見られることから、コロマンデル海岸マスリパタム等の熟練した染め職人が製作にあたったことが伺える作品となります。

東インド会社を筆頭とする交易商人とスマトラ港市間で香辛料貿易が行われ、対価としてのインド染織品が交易船で運ばれた、近世”海のシルクロード”の時代に心誘われる一枚です。


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