2021/1/4

17−18c日本向け 古渡りインド更紗裂 袴腰手  染織



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製作地 インド ※地域不詳
製作年代(推定) 17−18世紀
渡来地・使用地 日本 江戸時代初中期
素材/技法 木綿、天然染料 / 手描き(カラムカリ)、媒染、片面染め
サイズ @上:横8.0cm、縦6.5cm、A下:横9.0cm、縦6.5cm

インドで手掛けられ、江戸時代初中期17〜18世紀の日本にもたらされた古渡りインド更紗裂。

大航海時代の17−18世紀、日本にもたらされ大名・茶人・富裕商人等が愛玩・使用したインド更紗の中には、日本人の嗜好が色濃く反映された”日本向け古渡り”と分類されるデザイン様式のインド更紗が存在することが確認されております。

白地に茜の明礬媒染(赤)と鉄漿媒染(黒)で模様の輪郭線が手描きされ、茜と藍で色づけされた小気味よいパターンの花入り幾何学模様が印象的な本インド更紗裂は、明らかに日本好みの意匠として手掛けられた一群のインド更紗と指摘できるもので、近似するデザインのものを江戸期製作の著名な”更紗裂帖(手鑑)”や博物館所蔵品のうちに目にすることができます。

台形のパーツが幾何学模様を構成するこの古渡りインド更紗は、当時から数寄者の間で”袴腰手(はかまごしで)”と呼称されており、”袴腰”が茶の湯と縁が深いこともあわせ、大切に保存継承されてきたこの小さな断片からも裂愛好の遺伝子を感じとることができるように思います。

裂の全体及び細部をじっくりと目にしていると、壮大な宇宙観が眼前にひろがっていくような、日本古渡りインド更紗固有のスケール感と格調の高さに惹き込まれる一枚です。


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2021/1/2

18cシャム王国向け 古渡りインド更紗裂 仏手  染織



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製作地 インド南東部 コロマンデル海岸エリア Coromandel coast
製作年代(推定) 18世紀初中期
渡来地・使用地 シャム王国 アユタヤ王朝期
素材/技法 木綿、天然染料 / 手描き(カラムカリ)、媒染、防染、片面染め
サイズ 横24.3cm、縦15.2cm

インドで手掛けられ、アユタヤ王朝期18世紀のシャム王国(タイ)にもたらされた宮廷儀礼用布としての古渡りインド更紗裂。

”菩薩(天人テパノン)”が描かれた”仏手(ほとけで)”の呼称で知られる種類のインド更紗で、シャム王国でデザインされインド南東部コロマンデル海岸エリアで製作された特注のもの、高度な技術を有する絵付け・染め職人が製作にあたっており、海洋交易により世界各所にもたらされた(古渡り)インド更紗の中でも取り分け技術・意匠の完成度の高さで定評があり、当時の日本では”シャム更紗(シャムロ染め)”の名でその仏教的意匠が珍重され、大名・富裕商人・茶人等が愛好した様子が伝わるところとなります。

本裂は多層のボーダー柄を有する大判儀礼用布のエンドボーダーの一部分と推定されるもので、花繋ぎ模様が配された細幅ボーダーに上下を挟まれ、約10cmの太幅ボーダー(本裂における本体)に黄染めを背景にシャム更紗特有のデザイン構成による模様が染め描かれております。

とくに目を惹かれるのが大振りに描かれた龍、仏法・王国を守護する蛇龍神”ナーガ”の躍動感溢れる姿ですが、仏手の呼称の由来である”菩薩(天人テパノン)”、仏教に縁の吉祥の動物”鹿””うさぎ”の具象模様が同時に収まっている点、裂のプロポーションと色柄のバランスが整っている点で、本布には尽きせぬ魅力が感じられます。

歴史の浪漫を薫らせる古渡り期インド更紗の逸品裂です。


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2018/6/8

19cジャンビ向けジャワ更紗”バティック・ジャンビ”  染織





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製作地 インドネシア・ジャワ島北岸地域
使用地 インドネシア・スマトラ島 ジャンビ Jambi
製作年代(推定) 19世紀末
素材/技法 木綿、天然染料 / 型捺し及び手描きによる蝋防染、媒染、両面染め
サイズ 布幅88cm、全長222cm

インドネシア・ジャワ島北岸で手掛けられ、スマトラ島東南部の“ジャンビ(Jambi)”で使用された木綿ろうけつ染め布”カイン・バティック(kain batik)”、19世紀末のアンティークの作品です。

“ジャンビ”は古代ムラユ王国の都であり、南スマトラ州の“パレンバン”とともに古い時代より海上交易の重要中継都市として栄えてきた土地となります。

イスラーム宮廷・貴族等上層階級のための衣装・調度品として、インド更紗やパトラを筆頭に様々な種類の染織作品が交易品としてもたらされたのもパレンバンと同様ですが、このジャンビはとくに“ろうけつ染め(バティック)”が愛用された地であり、20世紀初頭までのジャンビ王国の時代、この地固有の独自のデザイン様式を有するろうけつ染め作品がジャワ島北岸の地からもたらされ使用されました(後年ジャンビでも製作が行なわれる)。

大小の円花文様・星状文様と菱格子繋ぎで構成された肩掛け(スレンダン)サイズの本布は、明らかにスマトラ向けインド更紗(スマギ)のデザインがバティックに写されたもので、濃藍と海老茶の暗色を基調とする色彩、意図的に加えられた蝋防染のひび入れ、織物のフリンジが意匠化された櫛状文様“シシル・ブガントン”など、随所からジャンビ好みバティック固有の様式美が伺われる一枚となります。

ジャワ島北岸において茜染めの産地”ラスム(Lasem)等が繁栄していた全盛期の19cに手掛けられたモノで、型捺し(チャップ)と手描き(トゥリス)の併用により文様付けがなされておりますが、文様内部の緻密かつ流麗な手描き白抜き線はインド更紗におけるカラムカリを彷彿させるもので、天然染料の高度な媒染技術、濃厚な色味の完成度の高い両面染めを併せ、作品からは19c交易用バティックたる技術の高さと格調の高さが感じられるところとなります。

20世紀初めには失われてしまった色、そして素材感・技巧・意匠のものであり、19cジャンビ向け交易バティックの薫り高き逸品です。






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2018/5/19

20c前 カンボウジュ種絹 格子織布”クロマー”  染織




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製作地 カンボジア南部
製作年代(推定) 20世紀前期 1930〜40年前後
素材/技法 絹(カンボウジュ種)、天然染料、化学染料 / 均等平地、格子織
サイズ 幅(緯)57cm×全長(経)172cm

カンボジア南部の地で20世紀前期に手掛けられた絹格子織布”クロマー(krama)”。

経・緯ともにカンボウジュ種絹の手引き細糸を素材に緻密かつ端整な均等平地の格子で織り上げられた一枚で、巧みな配色・構成で表現された格子の色彩の美しさが際立つ作品です。

基調色の赤はラック染めと思われ、肉眼で”オレンジ”として目に写る色は、実際は”山吹”と”赤”のドット(点)、同じく"黄緑”として目に写る色は、実際には”山吹”と”緑”で構成されている等、経緯同密度の”完全均等平地”で緻密に織り上げることで、この鮮やかかつ力強い色彩が表出するものとなります。

”完全均等平地”は、一織り一織りに織り手の手指の繊細な神経が加えられること無しには完成に至らないもの、高度な手仕事による所産であり、今では失われし素材・技術の作品です。






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2018/5/17

20c初 コウンショー 木綿経縞織・衣装  染織




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製作地 ミャンマー中西部 ラカイン(ヤカイン)州 Rakhaing
製作年代(推定) 20世紀初め
民族名 コウンショー族(Kounsho)
素材/技法 木綿、天然染料 / 平織・経地合、経縞織、刺繍
サイズ 肩幅(身ごろ幅):118cm、着丈:98cm

ミャンマー中西部のラカイン(ヤカイン)州に生活する「コウンショー族(Kounsho)」の手によるチュニックタイプの盛装用衣装上着“フヤン(phyang)”。

コウンショー族は、ラック染料(ラックカイガラムシ)の“赤”の染色を多用する民族であり、伝統に培われた高度な媒染技術による鮮やかな“赤”を筆頭に天然染色による木綿の多色表現に秀でております。

本衣装は細手に手紡ぎされた木綿糸を素材に、腰機によりタイトな経地合で織られており、織り地は何とも繊細で特別な衣装たる格調の高さが感じられるもの、そしてラック染めの紅赤と黒(濃藍)染めの縞の色彩コントラストが力強く印象的、天然染色の鮮やかかつ深みある色彩美が際立つ一品です。

さらに縞の中には”白””山吹””黄緑”、胸元には”白””薄茶””山吹””黄緑”の刺繍が加えられており、力強さの中にも繊細さが感じられます。








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2018/5/11

19チャム 絹絣腰衣”サンポット・ホール・サムロイ”  染織




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製作地 カンボジア南東部 コンポンチャム Kampong Cham
製作年代(推定) 19世紀末(〜20世紀初め)
素材/技法 絹(カンボウジュ種)、天然染料 / 綾地、緯絣
サイズ 縦(緯)86cm×横幅(経)184cm

カンボジア南東部の“コンポンチャム(Kampong Cham)”で手掛けられた、女性用の絹絣腰衣。

布全面に繊細かつ流麗な”幾何学文様(幾何学文様中の山吹色のモチーフは”鳥”を表わしている可能性あり)”が表わされた2m弱サイズのサンポット・サムロイで、ラック染めのややピンク掛かった華やぎ感のある”紅赤”を基調に、プロフー染めの”山吹”、藍染めの青とプロフー染めの黄と掛け合わせの”緑”、色彩の美しさと調和の高さに目と心を奪われる一枚です。

優れた素材・技術はもとより、敬虔な信仰(仏教及びイスラーム)を背景とする深い精神性が染織作品として表現された、アジア絹絣の名品と呼べるアンティーク・マスターピースの一枚です。




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2018/5/9

20c中 タイ・プアン族 絹緯絣腰衣  染織




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製作地 タイ東北部 イサーン地方
製作年代(推定) 20世紀半ば
民族名 タイ・プアン族(Tai Phuan)
素材/技法 絹、天然染料+化学染料 / 緯絣
サイズ 全幅(経)154cm(筒状縫製)、総丈(緯)95cm

タイ東北部のイサーン地方に生活する「タイ・プアン族(Tai Phuan)」の手による、絹緯絣の筒状腰衣”パー・シン(pha sin)”。

本品は絹を素材に”緯絣”の技法により文様付けがなされたもので、裾部に配された赤の色が他には見られない特徴的なものであることから”ティーン・デーン(tiin daeng)=赤い裾”の腰衣と呼ばれる種類の作例で、祝祭・宗教行事の際の盛装用としてイサーン地方に生活するタイ・プアンの人々の間で手掛けられてきたものとなります。

水と大地を司る豊穣の象徴モチーフ”蛇龍神ナーガ”が緻密な菱格子文様として描かれた作品で、黒に近い濃藍を地色に幽玄な雰囲気で描かれた本体部のナーガと、裾部の明るい色調の赤地(=ティーン・デーン)とのコントラストが何とも印象的な一枚です。





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2018/4/5

20c初 チャム 絹絣腰衣”サンポット・ホール・サムロイ”  染織




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製作地 カンボジア南東部 コンポンチャム Kampong Cham
製作年代(推定) 20世紀初め
素材/技法 絹(カンボウジュ種)、天然染料 / 綾地、緯絣
サイズ 縦(緯)88cm×横幅(経)218cm

ラックカイガラムシから抽出される”臙脂赤”の鮮やかかつ濃厚な色彩が印象的な20世紀初期作のカンボジア絹絣。コンポンチャムに生活するチャム系の人々の手による作品です。

”菱格子花文”に分類されるデザインで、菱格子を構成する点描のS字は”蛇龍神ナーガ”を表わし、その中に”四弁花””十字花”及び緑の花弁の”多弁花”が端整に織り描かれています。

黄金繭として知られるカンボウジュ種絹あってのこの濃厚な”ラック赤”の色味であり、他では見ることの出来ない”唯一無二のいろ”と言えるものです。



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2018/3/23

桜の季節に −花繋ぎ段更紗−  染織





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製作地 インド南東部 コロマンデル海岸エリア Coromandel coast
製作年代(推定) 18世紀
渡来地・使用地 シャム王国 アユタヤ王朝
素材/技法 木綿、天然染料 / 木版捺染及び描き染め、媒染、防染、片面染め

2018/3/21

20c前 クメール 絹格子&経緯併用絣布  染織




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製作地 タイ東北部 イサーン地方南部 スリン Surin
製作年代(推定) 20世紀前期
民族名 クメール系タイ人(Khmer)
素材/技法 絹(カンボウジュ種)、天然染料 / 平地、縞格子、経絣及び緯絣(経緯併用絣)
サイズ 幅(緯)93cm×長さ(経)216cm

タイ東北部のイサーン地方南部”スリン(Surin)”で手掛けられた、絹格子&経緯併用絣布”アウン・プロム(aum prom)”、20世紀中期の準アンティークの作品です。

イサーン地方南部の、現カンボジアと国境を接するブリラム・スリン・シーサケットの各県はクメール王朝時代の遺跡が残り、クメール系の住民が多く生活する土地柄となります。

いずれも絹織物を主体とする伝統染織の産地ですが、取り分けこのスリンは黄金繭として知られるカンボウジュ種絹繭の養蚕が小村で継承され、手引き・手紡ぎ、天然染料の準備と染め、簡素な木杭作りの機での手織り、の昔ながらの表情を保つクメール織物がつくられてきました。

一見すると落ち着いた色表情の質朴な平地・格子の布ですが、実際には色格子の中に無数の白班が経糸・緯糸双方の絣(=経緯併用絣)として散りばめられる手の込んだ織物で、糸作り・染料作りから始まる丹念な手仕事からのみ生み出し得る特殊な染織作品となります。

現在では失われし素材感及び技巧・意匠のもの、カンボウジュ種絹と天然染料により手掛けられた古のクメール伝統染織、経緯併用絹絣の知られざる逸品です。





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2018/3/17

20c初 ナーガ&聖鳥文 仏像光背布としてのピダン  染織





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製作地 カンボジア南部
製作年代(推定) 20世紀初期
素材/技法 絹(カンボウジュ種)、天然染料 / 綾地、緯絣
サイズ 縦(緯)86cm×横幅(経)252cm

左右にヤントラ文様が配された黒地の二重エンドボーダー、本体に仏法を守護する”蛇龍神ナーガ”が身体をくねらせるような波状文で躍動感たっぷりに描き込まれ、その周囲に”聖鳥ハムサ”を表わす鳥文様や”供物(生命樹)”文等が配された、20世紀初期作の仏教儀礼用ピダン。

本作品は絣が呈する雄大な表情と荘厳な空気感が最大の持ち味・魅力で、文様自体の表出はややおぼろですが、ピダンは仏教寺院内において仏像の奉られた祭壇の背景に幕布として張られる場合があり、ラック染料の赤と黒を基調とする重厚かつ深く落ち着いた色調とデザイン構成から、本布が主役である仏像を惹き立てるための”光背布”として用いられた可能性が指摘できるところとなります。

敬虔な信仰を背景とする深い精神性が染織作品として表現された、アジアの絹絣の名品と呼べるアンティーク・マスターピースの逸品です。







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2018/3/13

20c初 ”聖鳥ハムサ”ボーダー文様 絹絣腰衣  染織





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製作地 カンボジア南東部 コンポンチャム Kampong Cham
製作年代(推定) 20世紀初期
素材/技法 絹(カンボウジュ種)、天然染料 / 綾地、緯絣
サイズ 縦(緯)81cm×横幅(経)206cm

カンボジア南東部の“コンポンチャム(Kampong Cham)”で手掛けられた、女性用の絹絣腰衣“サンポット・ホール・サムロイ(sampot hol samleuy)”、20世紀初期のアンティークの作品です。

本体部分に幾何学模様としての緻密な”菱格子花文”、左右のボーダー部分には具象模様としての”聖鳥ハムサ”と”ヤントラ”の文様が織り表わされた2mサイズの腰衣サンポット・サムロイで、括り・染め・織りの緻密さと絣絵柄の完成度の高さが際立ちます。

特筆すべきはメリハリの効いた色彩の美しさと格調の高さで、本体の菱格子に加えられた”緑”とボーダー柄の地色を構成する”黒”の色遣いが何とも印象的、黒地の中に繊細に描き込まれた”聖鳥ハムサ”と”ヤントラ”からは信仰のものとしての荘厳美が薫り、本布が祝祭・宗教儀礼の特別な用途で使用されたであろうことが伺えます。

この種の凝ったエンドボーダー柄は3mサイズのサンポット・チョンクバンでは良く見られますが、サンポット・サムロイでは珍しく、資料的に貴重な残存作例と言うことができます。





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2018/3/3

20c中 タイ・ルー 奉納用・縫取織幕”パー・シバウン”  染織





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製作地 ラオス北部 ウドムサイ県 Oudomxay Province
製作年代(推定) 20世紀中期
民族名 タイ・ルー族 (Tai Lue)
素材/技法 木綿、天然染料 / 平地、緯紋織・縫取織(浮文織)
サイズ 横幅(緯)108cm(54cm×2・二枚接ぎ)×縦(経)48cm

中国南部からインドシナ諸国の広範囲に生活する「タイ・ルー族」は、高度に発達した染織文化を有する民族として多様な技法の作品を手掛け、そのデザイン様式は生活エリアによって様々となりますが、本作品で見られる”緯紋織””縫取織”の浮文織、また“縞・格子””地紋”“絣””綴織”など一つの織物中に多数の技法を交えて表現するものに技巧の卓越が確認できます。

布全面が多彩な浮文織・大小多数の具象モチーフで彩られた本布は、仏教寺院での宗教儀式で幕(仏像の後背布等)として用いられたもの、敬虔な仏教徒であるタイ・ルー族の女性は僧侶・出家修行者が使用するための衣服・生活布(寝具等)、そして本品のような儀式用の織物を製作し寄進・奉納することで徳を積むことができるという独自の慣習を有してきました。

本パー・シバウンは中央二枚接ぎで108cm×48cmの横長の幕として仕立てられたもので、木綿白糸を経緯とする平織り地に10色を数える多彩な木綿色糸により”象と獅子が混交した神獣シーホー”をはじめとする神獣・精霊・霊船や吉祥の動物たちが繊細かつ躍動感たっぷりに織り描かれたもの、織り技術の高さとともに、天然染色によりここまで瑞々しく鮮やかかつ力強い色味の木綿染色を完成させている点にタイ・ルー染織の真骨頂が感じられます。

長きの伝統に培われた成熟した染織文化を有する民が、信仰の祈りとともに手わざを尽くして生み出した作品たる意匠の完成美、精神性の高みに惹き込まれる一枚です。




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2018/3/1

19c末 チャム 菱格子・星状文様 絹絣腰衣  染織





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製作地 カンボジア南東部 コンポンチャム Kampong Cham
製作年代(推定) 19世紀末
素材/技法 絹(カンボウジュ種)、天然染料 / 綾地、緯絣
サイズ 縦(緯)84cm×横幅(経)210cm

カンボジア(クメール)伝統の絹絣布「ホール(hol)」。本品は宗教儀式・祝祭等の盛装用として女性が着用するための腰衣“サンポット・サムロイ(sampot samleuy)”として、19世紀末のコンポンチャム(Kampong Cham)で手掛けられたものとなります。

布全面に緻密な”菱格子・星状文”の連続文様が表わされた2mサイズのサンポット・サムロイで、括り・染め・織りの緻密さ・繊細さが際立つ一枚です。菱格子及び星状文は水と大地を司る蛇龍神”ナーガ”(の胴体と頭)を象徴するモチーフと考察されます。

本布の特筆すべきは、細密な連続文様でありながら絣柄の細部が均質(画一的)ではなく文様それぞれに表情の差異(豊かさ)が確認できる点で、括り・染めを一括して行なうことで作業工程の効率化をはかる通常の連続文様絣とは異なる視点と技巧により製作されたことが伺えます。

天然染色の完成度の高さも注目すべき点、経緯濃藍染めの深みのある地色の”黒”、ラック染めの鮮やかかつ色味の濃い”赤”、プロフー染めの暖かみある”黄”、絶妙なアクセントを加える”青(藍)”及び掛け合わせの”緑”、色彩の美しさと力強さに惹き込まれる思いがいたします。

ひとつひとつの文様、更にはドット(点描)ひとつひとつにも固有の表情と生命の息づきが感じられるような、他にはなかなか類例を見い出すことができないアジア・アンティーク絹絣の逸品です。






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2018/2/25

20c中 菩提樹の下の仏陀と王宮文 絵絣ピダン  染織






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製作地 カンボジア南部 タケオ若しくはカンプチアクロム
製作年代(推定) 20世紀中期
素材/技法 絹(カンボウジュ種)、天然染料 / 綾地、緯絣
サイズ 幅(緯)83cm×全長(経)306cm

カンボジア南部のタケオ若しくはカンプチアクロムで手掛けられた、仏教儀礼用の絹絣「ピダン(pidan)」、20世紀中期の準アンティークの作品です。

仏教寺院において天蓋布や仏像を奉る祭壇の掛け布(後背布)として用いられた系統の3mサイズの絵絣ピダンで、布端と中央の上下6箇所に布掛けループが付されており、実際に天蓋布・掛け布として使用されたものであることが確認できます。

菩提樹の下に坐して瞑想を行なう仏陀様と王宮(或いは寺院)とその中の王子の中心に、幟幡を掲げ様々な仕草で祈りを捧げる天女或いは宮廷女性、吉祥動物たちが繊細かつ生き生きと躍動感たっぷりに染め描かれており、作品がかもす信仰の世界観に目と心を奪われます。

本ピダンは取り分け人物の表情・仕草・女性たちが着用する衣裳の表現が端整かつ秀逸で、巧みに描き分けられた腰衣の絣文様(絣の中に描かれた絣)や幟幡、建物の屋根・柱・カーテン等のディテイルに見飽きることの無い表情の豊かさが感じられます。

また布両端に配されたボーダー文様”ヤントラ”は色調に変化が加えられており、全体の表情を引き締め仏教儀礼用布たる荘厳な空気感をかもしております。

生命息づく絵絣モチーフひとつひとつが紡ぐ物語性に惹き込まれるクメール絹絣の逸品です。





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