2017/2/26

インダス・コーヒスタン ”生命樹文”刺繍サッシュ  刺繍





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製作地 パキスタン・カイバルパクトゥンクワ州 インダス・コーヒスタン地方 Indus Kohistan
製作年代(推定) 20世紀前期
民族名 コーヒスタン族(Kohistan)
サイズ 横幅:23cm、全長:127cm(フリンジ部分除く)
素材 木綿地、絹刺繍、ロシア製銅版更紗(裏地)

パキスタン北西部のカイバル・パクトゥンクワ州“インダス・コーヒスタン地方(Indus Kohistan)”に生活する「コーヒスタン族(Kohistan)」の手による、祝祭用の刺繍サッシュ。

“コーヒスタン族”は古来よりこの地方に生活する先住民族であり、パシュトゥーン系民族の流入により生活エリアを辺境の極小地域に狭められながらも、独自の生活文化を守り続けてきた少数民族となります。コーヒスタン族は、チトラル渓谷に生活する“カラッシュ族(Kalash)”と同様、その多くが近年までイスラーム化を拒みカフィール(異教徒)として生活をしてきた人々であり、彼らの手掛ける衣装や装身具は、他に類するモノの無い独自の様式美が薫るモノとなっております。

本刺繍サッシュは1m20数cmの長い布上に一本の“生命樹”が流麗な枝ぶりとともに伸び伸びと力強く描き込まれた作品、その生命感溢れる刺繍モチーフに目と心を奪われます。

外界と隔たった辺境山岳地帯で、土着の信仰のもとに生きてきた民のもとに伝え継がれてきたモノならではの、どこか神秘的かつ新鮮味溢れる意匠に魅力を感じる一品です。





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●本記事内容に関する参考(推奨)文献
 

2016/7/1

ラダック ウール綾地絹刺繍・肩掛け  刺繍




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製作地 インド ジャンムー・カシュミール州 ラダック地方
製作年代(推定) 20世紀前期
素材/技法 ウール地、絹刺繍、染料、木綿裏地、絹フリンジ、絹×金属糸(モール)織物 / 綾地、刺繍(タンブルワーク)
サイズ 布本体:横幅66cm、縦48cm、フリンジ:約22cm

本品は緑の染められたウール(羊毛)を素材に綾組織で織られた布をベースに、多色に染められた絹によるタンブルワークの刺繍で装飾がなされたもの、ラダック地方に生活するチベット系民族が肩掛け”ボコ(boko)”として用いたものとなります。

ラダック地方において肩掛け”ボコ”は主に冬季の防寒用として用いられますが、本品はその華やぎ溢れる意匠から、婚礼・祝祭或いは宗教儀礼の特別な機会に手掛けられ・使用されたものと推察されます。

またタンブルワークにより描かれる立花(花束)モチーフは中央アジア(トルキスタン)的な薫りのするものであり、この種の刺繍作品の意匠・技巧がシルクロードの支流としてのカシュミール交易街道を通じて古い時代に伝わったであろうことを指摘することができます。

大らかかつ瑞々しい生命感に溢れる刺繍表情に魅了されるとともに、実使用の肩掛けとしての可憐な表情にも格別の魅力が感じられる一品です。




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2016/6/28

19c初 カシミヤ綾地・刺繍”アームリカル”(3)  刺繍




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製作地 インド ジャンムー・カシュミール州 シュリーナガル  
製作年代(推定) 19世紀初め アフガン期
素材/技法 カシミヤ山羊の内毛(うぶ毛)、天然染料 / 2/2綾組織、刺繍、アームリカル
サイズ 横幅67cm、縦42cm

ムガル治世下に”綾地綴織”の織物として技術の完成をみたカシミール・ショールですが、織物一枚の製作にあまりに労力・時間が掛かりすぎ、国内外からの需要が高まる中、綴織一枚織物(カニカル)に比べ製作時間の短縮が望める刺繍物(アームリカル)がアフガン期に登場します。

しかしながら、目にした際に明らかに刺繍と判別できるようなものは、貴族・富裕層のための高級衣料”カシミール・ショール”として受け入れられるものではなく、代用品及び汎用品のレベルを遥かに上回る高度な刺繍技術による細密刺繍ショールが生み出されることとなります。

本品は2/2綾組織によるオフホワイトの織り地が極めて高品質で、高級パシュミナたる織り密度の高さと柔らか味を兼ね備えており、それ故に織り地と刺繍の糸目とが見事に馴染んでおり、肉眼で一見したのみでは織りか刺繍かを判別するのは困難と言える秀逸な作品です。

刺繍の細密ぶり・色彩の美しさ・デザインの精巧さが際立つ”初期アームリカル”の名品裂です。



●本記事内容に関する参考(推奨)文献
 

2016/6/27

19c初 カシミヤ綾地・刺繍”アームリカル”(2)  刺繍




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製作地 インド ジャンムー・カシュミール州 シュリーナガル  
製作年代(推定) 19世紀初め アフガン期
素材/技法 カシミヤ山羊の内毛(うぶ毛)、天然染料 / 2/2綾組織、刺繍、アームリカル




●本記事内容に関する参考(推奨)文献
 

2016/6/26

19c初 カシミヤ綾地・刺繍”アームリカル”(1)  刺繍




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製作地 インド ジャンムー・カシュミール州 シュリーナガル  
製作年代(推定) 19世紀初め アフガン期
素材/技法 カシミヤ山羊の内毛(うぶ毛)、天然染料 / 2/2綾組織、刺繍、アームリカル




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2016/6/24

19cカシュミール−モチ刺繍(3)  刺繍




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製作地 インド ジャンムー・カシュミール州 ※グジャラート州の可能性あり  
製作年代(推定) 19世紀後期 ドグラ期
素材/技法 木綿地、絹刺繍、天然染料 / 平地、タンブルワーク(モチ様式刺繍)
種類(用途) 祝祭儀礼用の敷き布 ルマル
サイズ 約170cm×約170cm

本品は外観的には19世紀中後期のドグラ期(英国植民地下のヒンドゥ藩国)にカシュミールで手掛けられた刺繍(アームリカル)作品中の”ミニアチュール(細密画)風ショール”等と呼称されるデザイン様式のもので、布全面を彩る人物・鳥獣の具象モチーフ及び地模様が“鉤針=アリ(ari)”を用いた”タンブルワーク(ルーピングステッチ)”で細密に表現された作品となります。

しかしながら、カシュミールにおける”ミニアチュール風ショール”は概ね織り地及び刺繍(織りの場合あり)、若しくはそのいずれかに”カシミヤ(パシュミナ)”が用いられるものであり、本作品のように織り地に木綿、刺繍に絹が用いられたものは類例が限られる特殊なものと位置づけられ、カシュミール作と特定するに至る要素・根拠には欠けるものと考察されます。

人物や馬等の描き方は明らかに近世グジャラートにおいて宮廷・貴族・富裕商人のための刺繍を手掛けた職能集団モチ共同体の手による”モチ刺繍”の影響を伺わせるもので、カシュミールに存する刺繍職人がグジャラートの宮廷・貴族の求めによりモチ様式の作品として製作したもの、或いはグジャラートにおいてカシュミール・ショール風デザインの敷き布ルマルをモチ刺繍職人が製作したもの、双方の可能性が想定されるところとなります。

いずれにせよ、並々ならぬ高度かつ熟練した職人技術と手間隙が掛けられたもので、作品の全体及びディテイルからは当時の宮廷・貴族向けモチ様式刺繍に固有の意匠の完成美・濃密な色香が薫ってまいります。歴史の浪漫が薫るインド・アンティーク刺繍の名品です。




●本記事内容に関する参考(推奨)文献
  

2016/6/23

19cカシュミール−モチ刺繍(2)  刺繍




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製作地 インド ジャンムー・カシュミール州 ※グジャラート州の可能性あり  
製作年代(推定) 19世紀後期 ドグラ期
素材/技法 木綿地、絹刺繍、天然染料 / 平地、タンブルワーク(モチ様式刺繍)




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2016/6/22

19cカシュミール−モチ刺繍(1)  刺繍




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製作地 インド ジャンムー・カシュミール州 ※グジャラート州の可能性あり  
製作年代(推定) 19世紀後期 ドグラ期
素材/技法 木綿地、絹刺繍、天然染料 / 平地、タンブルワーク(モチ様式刺繍)




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2016/6/21

19−20c初 刺し子&刺繍”ラクシュミー”カンタ  刺繍



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製作地 インド・ベンガル地方 現バングラデシュ・ジョソール
製作年代(推定) 19世紀後期〜20世紀初め
素材/技法 木綿地、木綿刺繍 / 刺し子、刺繍
サイズ 72cm×81cm

蓮華、孔雀、象、魚、生命樹... 女神ラクシュミーを祝福するモチーフが生き生きと刺し描かれたヒンドゥ教徒の手による刺し子&刺繍布”カンタ”。

印パ分離独立前、19世紀後期〜20世紀初めのベンガル地方ジョソール(現バングラデシュ)における作例で、ルマル・チャクラ(掛け布)或いはボスタニ(包み布)として手掛けられたもの。

赤・青・橙の木綿糸を素材にステムステッチによる線描及び”チャタイ(chatai)”と呼ばれる縫取風の断続したダーニングステッチを主体にモチーフ描きがなされ、地の白木綿全面に白糸による緻密な刺し子が加えられたもの、ボーダー文様の”ボテ”から中央部の”蓮華”まで、無数に散りばめられた大小モチーフは端整でありながらも硬さが無く大らかで生き生きとしており、作品からは技術的な素晴らしさとともに、祈りとともに手掛けられた古い時代のオリジナル・カンタのみが有する生命感の豊かさ・精神性の深みが薫ってまいります。




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2013/4/7

牛飼いの民”アヒール族”と牛のための刺繍作品  刺繍



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●クリシュナを信仰する牛飼いの民”アヒール族”の村

(写真 インド・グジャラート州 カッチ地方にて)



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●アヒール族の手掛けた牛顔装飾用の刺繍布
製作地 インド・グジャラート州  
製作年代(推定) 20世紀半ば





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2012/8/6

施洞ミャオ族 衣装袖用の吉祥絵刺繍  刺繍



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製作地 中国・貴州省 台江県  
製作年代(推定) 20世紀半ば〜後半
民族名・支族 苗(ミャオ)族 施洞

施洞ミャオ族が盛装用上着の袖部(肩腕部)を装飾するために手掛けた実使用の刺繍パネル。臙脂のシルクサテン地の上、多色の絹糸で立体感と色グラデーションを加えつつ細密に刺し描かれたサテンステッチ(平繍)の刺繍の技巧が見事な作品です。

蝶或いは鳥と混交する姿で表現された精霊“姜央”を中央に、その周りに獅子・神獣が躍動感たっぷりに生き生きと刺し描かれており、ミャオ族固有の信仰と世界観のもと、先祖代々の伝統に培われた吉祥絵刺繍としての物語性の豊かさ、デザインの完成美に目と心を奪われます。



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2012/6/23

太陽と生命エネルギーの刺繍  刺繍



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”円と渦巻き”はトン族の神話に由来する“太陽”を表わすとともに、万物の生命エネルギーを表わすものと考えられており、衣装・装身具・建造物等、生活の中の様々な場面で守護・吉祥の文様として用いられてきました。

濃藍染めの木綿地の上、白や金白色の絹糸一色で表現された”太陽紋”は、糸目の陰影で表現された無数の”渦巻き”を内部に有し、まさにエネルギーの躍動と横溢を感じさせます。

この”太陽紋”刺繍衣装は、先祖を天から招くお祭り、蘆笙祭の際に着用されたものであり、トン族の伝統文化・信仰の精神性が顕著に反映された民族衣装と言うことができます。



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製作地 中国・貴州省 黎平県/湖南省 通道県  
製作年代(推定) 20世紀前期
民族名 トン族

2012/6/12

ミャオ族の世界観が表現された刺繍前掛け  刺繍




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製作地 中国・貴州省 台江県施洞  
製作年代(推定) 20世紀半ば
民族名・支族 施洞ミャオ族

卓越した刺繍技術と刺繍描写の絵画的芸術性で、施洞ミャオ族の刺繍及びそれを用いた衣装作品は、ミャオ族刺繍・衣装を代表するモノの一つに挙げられます。

施洞ミャオ族の手による絵画的刺繍は、ミャオ族の始祖伝説に由来するものが中心であり、先祖・精霊を表わす人型モチーフ、先祖と同一視される鳥や蝶、天や大地の自然を司る龍や獅子などの神獣、人間の兄弟と見做される動物・魚・昆虫たちなど、様々な吉祥・守護、豊穣・平安の祈りのモチーフが一つの作品中に盛り込まれ、物語性を持って描かれてきました。

刺繍モチーフに息づく力強い生命感は、先祖を敬い・生き物との共生を旨とするミャオ族の信仰・世界観が色濃く反映されたもの、ミャオ族の世界観とその精神性に惹き込まれる刺繍作品です。

2012/3/26

ステッチが寸断せずに繋がる生命の刺繍  刺繍



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製作地 アフガニスタン・ガズニー州 ハザラジャート  
製作年代(推定) 20世紀半ば
民族名 パシュトゥーン系遊牧民  
刺繍 ラダーステッチ(ボタンホールステッチの変形)

ハザラジャート南部の丘陵地帯で遊牧生活を行うパシュトゥーン系遊牧民が、婚礼に際して手掛けた刺繍布。平安・豊穣への祈りが”生命樹””羊(の角)”等の文様に込められた作品です。

特筆すべきは、ステッチのすべてが寸断することなく繋がっている点、これは”生命力”を寸断させないための技巧・意匠である(あろう)ことを、作品自身が語りかけてくるように思います。

モチーフ(文様)を描くというよりも、”生命”そのものを表わすことに主眼が置かれた、躍動する生命の刺繍作品です。どこを目にしても”生命”は連なり繋がっております。




●本記事内容に関する参考(推奨)文献
 

2012/2/15

タジク様式の19cブハラ・スザニ  刺繍



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製作地 ウズベキスタン・ブハラ  
製作年代(推定) 19世紀末〜20世紀初頭
民族名 タジク族(タジク系ウズベク人)  
素材/技法 木綿、絹、天然染料 / 綾地、タンブルワーク、チェーンステッチ、ブハラコーチング

ソグディアナの古都ブハラは、古代よりペルシャ宮廷様式による手工芸が熟成された土地であり、近世に入ってからはソグド人の末裔とも言われるタジクの人々を担い手の一員として、独自の色香を有する染織・刺繍作品が生み出されてきました。

ブハラのスザニは、ブハラコーチング(ボスマ)系とタンブルワーク及びチェーンステッチ(ユルマ)系に分類できますが、20世紀初頭頃までに手掛けられたユルマ系スザニは、よりタジク(ペルシャ)色の強いものということが言えるように思います。今では失われし表情のスザニです。




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