2017/7/1
苧麻白地紅型 夏衣裳”タナシ” 参考画像 民族衣装



(写真 日本・沖縄県 沖縄県立博物館にて)
2016/7/29
ザンスカール ヤクウール絞り染めシューズ 民族衣装


製作地 インド ジャンムー・カシュミール州 ザンスカール
製作年代(推定) 20世紀半ば
素材 ヤクウール、染料、革
このヤクウール絞り染めシューズは、ザンスカールに生活するチベット民族系の人々が祝祭時に用いたもので、彼らが放牧し育てるヤク牛のウールを素材に、綾地に織り絞り染めにより”ティグマ”と呼ばれる吉祥文様を表わした布を主体に、底部には革を張り、手仕事の縫い刺しにより仕上げたものとなります。20世紀半ばに手掛けられた古手の作例です。
丸の中に十字を描く絞りモチーフは、チベット仏教の伝統のもと古来より受け継がれてきたもの、日本では江戸時代に“蒙古絞り”としてもてはやされたものとも縁の深い染織の意匠となります。
完全なる手仕事の紡ぎ・織り・染め、縫いと刺し子、底張りの革が覗く先尖型のデザイン、作品全体からかもされる新鮮な様式美、可憐な意匠表情に目を奪われる一品です。




2016/7/10
ザンスカール ヤクウール絞り染め・肩掛け 民族衣装


製作地 インド ジャンムー・カシュミール州 ザンスカール
製作年代(推定) 20世紀半ば
民族 チベット系民族
素材/技法 ヤクウール、染料(天然染料+化学染料) / 綾織、絞り染め、三枚接ぎ
ジャンムー・カシミール州の一つ一つの地方は山岳と渓谷によりそれぞれがおおむね隔絶しており、このザンスカール地方も山々に囲まれ他とは孤立した山麓及び渓谷地帯となります。それゆえ染織・衣装作品について、独自性豊かな意匠・技巧のものが培われ継承されてきました。
このヤクウール絞り染め・肩掛け”ティグマ・ボコ”は、ザンスカールに生活するチベット民族系の人々が日常生活の防寒用に用いたもの、彼らが放牧し育てるヤク牛のウールを素材に、綾地に織った布を絞り染めにより文様を染め出すことを技巧上の特徴として手掛けられてきました。
丸の中に十字を描く絞りモチーフは、チベット仏教の伝統のもと古来より受け継がれてきたものですが、日本では江戸時代に“蒙古絞り”としてもてはやされたものとも縁の深い染織の意匠です。
標高4千mを越えるラダック地方、厳しい自然環境の中で生活を続けてきた人々が生み出し、代々継承してきた伝統衣装ならではの力強い生命感に魅了される一品です。






2016/6/7
19c後(ドグラ期) カシミヤ刺繍衣装”チョーガー” 民族衣装


製作地 インド ジャンムー・カシュミール州 シュリーナガル
製作年代(推定) 19世紀後期 ドグラ期
素材/技法 カシミヤ山羊の内毛(うぶ毛)、天然染料 / 2/2綾組織、刺繍、アームリカル
本チョーガーは19世紀後期のドグラ期(英国植民地下のヒンドゥ藩国)のシュリーナガルで手掛けられたもので、2/2綾組織で織られた淡黄色のパシュミナ地に天然染料で色付けした多色のカシミヤ糸を素材に繊細な刺繍(アームリカル)により装飾がなされたものとなります。
前開き・長丈でゆったりと羽織るジャケットタイプの上着”チョーガー”は、トルコ・アフガン等の宮廷衣装の影響を受けムガル期に発展した貴族男性装束のひとつですが、これをカシミヤ(パシュミナ)という特殊な素材で手掛けた点にムガル(インド)染織・衣装の独創性が感じられます。
本品はチョーガーとしてはやや小さめで、サイズ面と色柄の意匠から鑑み若年者用と推察されますが、地には極めて繊細な糸遣いで密に織られた布が用いられており、緻密なステムステッチとダーニングステッチによる小さな花弁を無数に散りばめた”ボテ”や”花唐草”の刺繍は何とも瀟洒で秀逸、作品全体から貴族装束としての格調の高さと気品が薫ってまいります。
大小の欠損はあるものの、首周り・背・肩・袖・裾等の最も重要と言える刺繍部分はむしろ状態良好で美しさが保たれており、巧緻なつくりの組み・刺しの円盤状ボタンがオリジナルのまま残っている点など、欠損を補って余るほどの魅力をディテイル各所から感じられるところとなります。
19c後期パシュミナ刺繍チョーガーの薫り高き逸品であり、資料的にも極めて貴重な完品です。





●本記事内容に関する参考(推奨)文献
2016/6/4
ザンスカール ヤクウール絞り染めコート 民族衣装

製作地 インド ジャンムー・カシュミール州 ザンスカール
製作年代(推定) 20世紀前期
民族名 チベット系民族
素材/技法 ヤクウール、天然染料 / 綾織、絞り染め、パッチワーク
ジャンムー・カシュミール州の一つ一つの地方は山岳と渓谷によりそれぞれがおおむね隔絶しており、このザンスカール地方も山々に囲まれ他とは孤立した山麓及び渓谷地帯となります。それゆえ染織・衣装作品について、独自性豊かな意匠・技巧のものが培われ継承されてきました。
この多彩な絞り染めコート”ティグマ・コス”は、ザンスカールに生活するチベット民族系の人々が祝祭時に用いた盛装用衣装で、彼らが放牧し育てるヤク牛のウールを素材に、綾地に織った布を絞り染めにより文様を染め出すことを技巧上の特徴として手掛けてきたものとなります。丸の中に十字を描く絞りモチーフは、チベット仏教の伝統のもと古来より受け継がれてきたものですが、日本では江戸時代に“蒙古絞り”としてもてはやされたものとも縁の深い染織の意匠となります。
本品は手紡ぎのヤクウールを綾地で織り、黄・臙脂・藍の天然染料により巧みな色掛け合わせを交えて絞り意匠を染め上げ、繊細に接ぎ合わせた20c前期の60〜80年前後を遡る時代の作例で、現在ではこの素材感及び繊細な織り・染め・接ぎの風合いは失われしものとなりました。
染色の完成度の高さは特筆すべきもの、伝統に培われた独自のデザイン様式、心の入った手仕事のものならではの繊細かつ力強い意匠表情に魅了されるチベット系民族衣装の一名品です。





2016/3/10
儀礼用腰衣裾帯とされたママサ・トラジャのカード織帯 民族衣装
●ママサ・トラジャのカード織帯が裾部に付された祭事儀礼用腰衣”ドド・アンピレ”

※上画像はBNI刊「Untannun Kameloan」より転載いたしております
多色木綿がパッチワークされた色鮮やかな腰衣”ドド・アンピレ(dodo ampire)”は、トラジャ人の祭事儀礼の際に、女性の舞踏用として用いられてきたとされるデザイン様式のモノで、裾部にはママサ・トラジャ人の手によるカード織帯”パラワ(palawa)”が付される伝統を有してきました。
カード織帯”パラワ”に縫い付けられているのはオランダ銀貨とグラスビーズで、いずれも16〜18世紀を中心とする海洋交易の時代にトラジャの地にもたらされ伝世品とされてきたもの、単なる装飾目的ではなく、宗教的意味合いが込められたものと考察されます。


パラワには精霊・先祖を表わす人型文様”タウタウ”が織り描かれた作例も多く、古い時代の銀貨をあわせて鑑みると、この腰衣を着用して舞踏を行なうことに”招魂”の意味合いがあったことは間違いないように思われます。日本の盆踊りと近しいものという見方もできるかもしれません。
2016/3/4
赤地縞木綿 トラジャ司祭者帽子”ソンコ・トミナー” 民族衣装


製作地 インドネシア・スラウェシ島 南スラウェシ州
製作年代(推定) 20世紀初め
民族名 製作者:サダン・トラジャ人? / 使用者:サダン・トラジャ人
素材/技法 木綿、染料 / 平地(表地の緯:双糸)、経縞
トラジャでは、古い時代に葬祭儀礼で”ポテ”と呼ばれる白木綿(より古い時代はパイナップル繊維製)の捩&スリット織り帽子及びそれを泥(鉄)媒染で黒に染めたものを被る慣習がありましたが、この”ソンコ・トミナー”と呼ばれる赤地縞木綿の帽子(頭巾)は、豊穣を祈願する祝祭儀礼で”司祭者(トミナー)”が着用したもの、いずれも今では失われし製作伝統のものとなります。
表地の縞木綿は、極めて繊細に手紡ぎされた糸により、経糸が単糸、緯糸が双糸で緻密に織り上げられており、布を一見した際、インド渡来の古の織物”唐桟留”の言葉が口をつきます。
染料はアリザリン染料を含む合成染料であることが伺われますが、色味は鮮やかな中に落ち着き・深みを有しており、インドから渡来の縞木綿を手本に、相当な観察や実地の試みを重ねながら、この自前の赤地縞木綿帽子の完成に至ったのではないかと推察されます。
帽子のサイズに合わせ、耳(布端)にも精緻な文様を加えて縞木綿を織り上げ、裏地に”鬼手木綿”を彷彿させる質感豊かな粗紡ぎの白木綿を付し、端整な縫いで仕上げられており、特別な祭事儀礼で司祭者が用いた帽子としての精神性の深みと格調の高さが薫ってまいります。




2015/6/28
インド国外で出逢ったグジャラート染織・刺繍 民族衣装

「宮廷・貴族向け モチ刺繍スカート」
製作地 インド・グジャラート州
製作年代(推定) 19世紀
●蒐集地 パキスタン・パンジャーブ州
インドとパキスタンの分離独立前のスィンドの地で、モチ共同体の手により宮廷・貴族向けに手掛けられ、20世紀半ばの分離独立時にパキスタン側に渡った(或いは残った)と推察されるもの
「貴族・富裕層向け 絹ブロケード肩掛け(ヴェール)」
製作地 インド・グジャラート州
製作年代(推定) 18世紀
●蒐集地 インドネシア・スラウェシ島 タナ・トラジャ
海洋交易の対価とされる高級染織品として、18世紀に東インド会社等の交易船によりスラウェシ島にもたらされ、トラジャの地で”聖布マア”として保存・継承されてきたと推察されるもの


2014/11/6
一針一針の手仕事が見事なファミ・アカ族の衣装 民族衣装


製作地 タイ北部
製作年代(推定) 20世紀半ば
民族名・支族 アカ族 ファミ・アカ Phami-Akha
遠目では刺繍なのかアップリケなのか判然としませんが、目の前にまで近づくと、多彩な絹糸を用いたクロスステッチによる無数のドット(点)によりモザイク様の文様が描き込まれていることが確認できるファミ・アカ族の衣装、20世紀半ば頃の女性用の盛装衣としての上着です。
刺繍の美しさと存在感が際立ちますが、手紡ぎ・手織り木綿を深く染める濃藍(黒)染めの服地の質感の豊かさ、天然色染め木綿によるアップリケ、一針一針の丹念な手縫いの縫製等をあわせ、作品全体から心の入った手仕事のものならではの凛とした空気感が薫ってまいります。




●本記事内容に関する参考(推奨)文献
2014/11/2
タイ・ダム族(黒タイ族)の頭布 民族衣装


製作地 ラオス・フアパン県
製作年代(推定) 20世紀半ば〜後半
民族名 タイ・ダム族
「タイ・ダム族(黒タイ族)」の民族名の由来通り、”黒”の色遣いが印象的な頭布。束ねて団子状となった結い髪の上から被せるようにして使用するもので、片端は後頭部から背へと垂れるようなかたちとなります。
一見するとフリンジやタッセルのように思える布縁の多数の丸いカタチの装飾は、赤のパイピングの布が紐状に伸ばされ、その先端が円盤状に丸められ多彩な絹刺繍で彩られたもの、植物の”ワラビ”を彷彿とさせるような渦巻状の形状が目に新鮮に映ります。
この種の渦巻き状の文様カザリパーツは、装飾デザインであるとともに、魔や病を寄せ付けないための”目くらまし”の意匠であることを指摘することができます。

※上画像はStudio Naenma Co Ltd刊「Lao-Tai Textiles」より転載いたしております
●本記事内容に関する参考(推奨)文献
2014/10/25
タイ・ルー族 100年前の天然色染め衣装 民族衣装

製作地 ラオス北部
製作年代(推定) 20世紀初め
民族名 タイ・ルー族
素材/技法 木綿、天然藍、絹、天然染料 / 緯縞、緯絣、緯紋織、刺繍、パッチワーク
100余年の歳月を経過しなお瑞々しさを失わない天然染料の染めの美しさが際立つ衣装作品。
スカートは”縞””絣””紋織”が巧みに織り込まれておりますが、組織の細部を拡大してみると、部位によって糸の太さや紡ぎ感及び織り密度に様々な変化が加えられており、更に木綿と絹を交織する等、複雑な手技が加えられている様子を確認することができます。
手紡ぎ・手引きの様々な表情の糸作り、繊細な染め色を表現する染料作り、赤をここまで鮮やかに発色・定着させる高度な媒染技術... これらは手仕事の時代にこそ継承・実現可能であったものであり、現代では誰も再現できないものであろうことが直感されます。




●本記事内容に関する参考(推奨)文献
2014/7/8
北部チン族・絹縫取織スカート 二景 民族衣装


●ハカ族

製作地 ミャンマー・チン州
製作年代(推定) 20世紀初め
素材/技法 木綿、天然藍、絹、天然染料/経縞織(経地合)、縫取織
●ザハウ族

製作地 ミャンマー・チン州
製作年代(推定) 20世紀前期
素材/技法 木綿、天然藍、絹、天然染料主体/経縞織(経地合)、縫取織
●本記事内容に関する参考(推奨)文献
2014/2/9
タイ・ルー族の伝統美薫る縞スカート 民族衣装


製作地 ラオス北部
製作年代(推定) 20世紀半ば
素材/技法 木綿、絹、天然染料及び化学染料 / 緯縞織


製作地 タイ北部
製作年代(推定) 20世紀半ば〜後半
素材/技法 木綿、天然染料及び化学染料 / 経縞織、経絣
タイ・ルー族は、中国雲南省南部のシーサンパンナ(西双版納)の地に千年を遡る古い時代から生活の拠点を築いていたことが知られており、後世タイ・ラオス・ベトナム・ミャンマーの東南アジア北部に移住、現在タイに生活するいわゆる“タイ人”の起源に大きく関わりを持つ民族であることが知られております。
染織技術に長ける彼らは、生活の場面に従い様々な技巧及び意匠様式の民族衣装を製作し身に着けてきましたが、日常生活の普段着では、画像に見られるような”多色縞”のシン(スカート)を女性たちは好んで身に着けてきました。
遠目ではシンプルな縞とも思えますが、ディテイルを良く見ると縞を構成する糸は手紡ぎの木綿や手引きの絹を素材に、太さ・撚りの異なる様々な風合いの糸が用いられ、部分的に絣糸や繊細な色グラデーションが加えられるなど手の込んだ手仕事ぶりを確認することができます。
他者には真似をすることの出来ない、タイ・ルー族のみが表現することの可能な、固有の伝統美と色香を薫らせる衣装作品です。
●タイ・ルー族の衣装姿

※上画像はChiang Mai University刊「LAN NA TEXTILES」より転載いたしております
●本記事内容に関する参考(推奨)文献
2013/3/7
キナウルのウール綴織り・肩掛け 民族衣装

製作地 インド・ヒマーチャルプラデッシュ州 キナウル
製作年代(推定) 20世紀半ば
素材/技法 ウール、ウールフェルト/綾地、綴織り、アップリケ、刺繍
インド・ヒマラヤを臨む渓谷部の一地方「キナウル(Kinnaur)」の地名は、天界で楽舞を司る半人半鳥の女神”キンナリー(Kinnari)”の名前に由来するという伝承があります。
実際のところ、キナウリー(キナウル民族)の女性は歌と踊りの巧さで名高く、多色ウールの綴織りで手掛けられる肩掛けは、まるで鳥の翼を纏っているようにも見えてまいります。



※上画像はIndus Publishing Company刊「Textiles,Costumes and Ornaments of the Western Himalaya」より転載いたしております
●半人半鳥の女神”キンナリー”(ビルマ仏教の意匠より)

2013/3/5
”茜赤”のバンジャーラ族スカート 民族衣装


製作地 インド・ラージャスタン州
製作年代(推定) 20世紀前期
民族名 バンジャーラ族
素材/技法 木綿、天然染料、絹 / 縞織、木版捺染、刺繍、アップリケ
表は茜染めの木綿を主体とした”縞木綿”、裏には木版捺染で媒染柄付けされ茜一色で染められた”茜更紗”が配された、ラージャスターニ・バンジャーラの婚礼用スカート。
表と裏、それぞれの天然色染め”茜赤”の色彩の美しさ、瑞々しさと深みは溢れんばかりであり、作品からは吉祥色に込められたバンジャーラ族の祈りが伝わってまいります。
●本記事内容に関する参考(推奨)文献