2018/4/3

19cミャンマー(英領インド) シルバー彫金ボウル  生活と祈りの道具




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製作地 ミャンマー(英領インド)
製作年代(推定) 19世紀半ば〜後半
素材 シルバー
サイズ 口径:約10cm、高さ:約6.4cm、底径:約6.2cm、重さ98g


英領インド時代のミャンマーで手掛けられたシルバー彫金ボウル、19世紀半ば〜後期のアンティークの作品です。

このシルバー彫金ボウルは、現地で托鉢用の鉢を意味する”ザベイク(thabeik)”と呼ばれますが、実際に托鉢に用いられることは無く、装飾用の調度品として手掛けられる伝統を有してきたものとなります。

銀を素材に巧みな打ち出し及び彫金により立体感豊かなレリーフ入りのボウルに仕立てられますが、デザインは”仏教・ヒンドゥ”に由来する神話や説話(ジャータカ等)の場面、またミャンマーの土着の”ナッ神”に由来するモチーフなど専ら信仰から題材がとられており、漆器・染織・木彫等とともに信仰と不可分の美術工藝として技術が高められていった様子を伺うことができます。

本品はアーチ状に区画されたん中に様々なポーズをとる10の女性の姿(ナッ神信仰由来と考察される)がレリーフされたもの、デザインの細部はすべて異なり、型を用いたものではなく、ひとつひとつが丹念な手仕事の打ち出し・彫金で表現されたものであることが確認できます。

英領インド時代ミャンマーの貴重なシルバー彫金ボウル、時代に由来する濃密な精神性と色香溢れる空気感・意匠表情に惹き込まれる逸品です。





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2018/3/29

19cシャム王国 真鍮製”亀形”・蒟醤用合子  生活と祈りの道具





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製作地 シャム王国(タイ)
製作年代(推定) 19世紀
素材 真鍮
サイズ 全長(最長部):8.5cm、横幅:5.8cm、高さ:5.5cm、重さ33g


チャクリー王朝期のシャム王国で手掛けられた真鍮製”亀形”の蒟醤(キンマ)用合子、19世紀のアンティークの作品です。

噛み嗜好品”蒟醤(キンマ)”は、近世までの東南アジア諸国において宮廷儀礼・宗教儀式等の公的行事や結婚式等の私的行事双方において欠かすことのできない慣習であり、蒟醤使用に際して用いられる諸道具は、陶磁器・金属器・漆器など様々な工芸技術に反映され(漆器蒟醤手の呼称の由来でもある)、シャム王国美術工芸のいち分野と看做されるほど、意匠・様式の高度化がはかられてきたものとなります。

亀が象られた本合子は、蒟醤材料のひとつ石灰を収めるためのもので、この種の金属製小型合子では、仏教・ヒンドゥの神話に登場する神々や吉祥の動物たちが象られ、高度な打ち出し(レリーフ)の技法により手の込んだ作品が生み出されてきました。

レリーフと全体の造形に甘さがなく、宮廷・貴族調度品として用いられた時代の本物の”蒟醤合子”としての風格と格調の高さが感じられる一品、更に本品の格調を高める要素が経年に由来する真鍮古色とパティナ(緑青)で、19世紀に遡る時代の作品であると考察することができます。

西洋文化の浸透と20世紀中期に出された蒟醤禁止令により、宮廷・貴族層における蒟醤の慣習はほぼ失われ、専門職人の手による道具製作の伝統も失われていきました。
古き良きシャム王国伝統工芸、宮廷・貴族使用の美術調度品の時代が偲ばれる一品です。






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●本記事内容に関する参考(推奨)文献

2017/6/14

20c初 供物用・亀型脚付籃胎漆器  生活と祈りの道具





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製作地 ミャンマー中部 ※東部シャン州の可能性あり
製作年代(推定) 20世紀初頭
素材/技法 竹、木(亀の頭・脚)、漆/籃胎(竹編み)、黒漆と朱漆による根来状の塗り
サイズ 全長(頭先〜尾部):約36cm、横幅:約27cm、高さ:約10cm、器部の直径:約24cm


ミャンマー中部(※)で20世紀初頭に手掛けられた供物用の亀型脚付籃胎漆器。

敬虔な仏教国ミャンマー(ビルマ)では、仏教法具を始めとする信仰の道具としての漆器製作の伝統を古来より有し、その優れた技術は現在まで受け継がれてきました。

本品は”亀”が象られた供物用漆器で、台部・器部・蓋部の3つのパーツからなり、それぞれが繊細な竹編みにより成型されたもの(脚と亀の頭は木製)、この脚付き・ 蓋付きのドーム型の漆器は”カラト(kalat)”と呼ばれ、仏様に大切なものを奉げるためのもの、寺院・僧院への供物用漆器として、職人への特別な発注により手掛けられる伝統を有してきたものとなります。

台部に脚と頭を付けることで”亀”を表現した比較的シンプルなデザインのものですが、蓋部は丸々とふくよかに成型され、首と尾及び亀の甲には繊細な意匠づけがなされており、ディテイルを良くみると、高度な技術に裏打ちされた見事な完成美を有する作品であることが判ります。

そして黒漆と朱漆の塗りで表わされた深みのある根来の表情は、経年・使用の古色も相俟って、独自の豊かな味わい・格調の高さが感じられます。類例・残存数の限られる資料的に貴重なもの、土地・時代・信仰が育んだ20世紀初頭作”亀型”籃胎漆器の逸品です。






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●参考画像 仏塔が象られた供物用籃胎漆器”カラト”
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製作地 ミャンマー東部 シャン州  製作年代 20世紀初頭



●本記事内容に関する参考(推奨)文献

2017/6/6

20c初 鳥デザイン 木彫織機パーツ  生活と祈りの道具





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製作地 カンボジア南部
製作年代(推定) 20世紀初め
素材 木製
サイズ 全長(幅):約16.5cm、高さ(縦):約4cm、重さ:36g


カンボジア南部で20世紀初めに手掛けられた、鳥デザインの木彫織機パーツ。

本品は綜絖・筬を吊る装置の一部品(滑車と踏み木を繋ぐ吊り棒)で、”馬(heddle horses)”と呼ばれるもの、仏教を守護する聖鳥ハムサが”小鳥”として彫り表わされたもので、素朴な意匠の中にも敬虔な祈りの込められたものとしての瑞々しい生命感と精神性が薫ってまいります。

この種の木彫で飾られた織機は、20世紀半ばからの戦乱の時代には失われてしまっており、本品のようなパーツであっても、欠損の無い完品は残存数の限られる稀少なものとなります。

染織が神仏への祈りとともにあった時代の所産であり、高度な伝統技術を有する職人手仕事から生み出された意匠の完成美、信仰の精神性に惹き込まれる一品です。





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●参考画像 儀礼用絹絣ピダンに描かれた鳥(聖鳥ハムサ)
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2017/5/17

20c初 魚(双魚)デザイン 織機綜絖吊り滑車  生活と祈りの道具




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製作地 カンボジア南部
製作年代(推定) 20世紀初め
素材 木製、金具(車輪軸・フック)
サイズ 横幅:約12cm、縦(金具含む):約5.5cm、重さ:約40g(ひとつあたり)


カンボジア南部で手掛けられた織機綜絖吊り用の木製滑車、吉祥・豊穣を象徴する魚(双魚)がデザインされた20世紀初め頃の作品です。

カンボジアやタイ・ミャンマーなど、古くから染織品が宮廷儀礼や仏教儀礼に纏わる装束や装飾のものとして製作が盛んであった土地では、部品の一つ一つに美しい装飾が施された木製及び金属製の織機が用いられていました。

織機を構成する部品(綜絖(そうこう)・筬(おさ)を吊る装置の部品)として使われていた、この手の込んだ”装飾滑車”からは、敬虔な仏教信仰を背景とする、古き良きインドシナ伝統染織の時代が偲ばれます。

染織が神仏への祈りとともにあった時代の所産であり、高度な伝統技術を有する職人手仕事から生み出された意匠の完成美、信仰の精神性に惹き込まれる逸品です。




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2016/7/20

ラダック・シャーマニズム 祈祷用押型  生活と祈りの道具




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製作地 インド ジャンムー・カシュミール州 ラダック地方 
製作年代 20世紀初め
素材 木(杏子の木)
サイズ 横幅4.6cm、縦8.8cm、厚み2.3cm、重さ54g

この木造彫刻板は、ラダック地方において仏教と並存する(仏教を補完する)民間のシャーマニズム信仰において、シャーマン(祈祷師)が病魔を祓い、豊穣・長寿を祈る(占う)等を主旨とする儀式に使用した祈祷道具です。

ラダックの特産品であり霊木である”アプリコット(杏子)”の老木を材に、守護・吉祥を表わす生き物と神仏を表わす人型(フィギュア)が五角形の板状パーツの両面及び側面に彫刻されており、この陰刻部にチベット系民族の主食であるツァンパにヤクバターを多めに加えた練り物を詰めて象り(型取り)をし、これを用いて祈祷師が占いと加持祈祷を執り行うものとなります。また本品は押型であるとともに、これを手で握りツァンパの練りも同時に行なう”練り道具”でもあります。

”精霊・菩薩・蛇・亀・魚・鳥・法螺貝”等、豊穣・吉祥を表わす(占う)モチーフひとつひとつに力強い生命感が宿り、敬虔な信仰の中で生み出され用いられたものに固有の精神性の深みが伝わってまいります。また練り道具とされた故に、ヤクバターの香りが深く染み込んでおり、五感が刺激される点でも格別の魅力が感じられる一品です。





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2016/7/12

ラダック・シャーマニズム 祈祷用押型  生活と祈りの道具




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製作地 インド ジャンムー・カシュミール州 ラダック地方 
製作年代 20世紀初め
素材 木(杏子の木)
サイズ 横幅34cm、縦7.8cm、厚み1.2cm、重さ250g


この木造彫刻板は、ラダック地方において仏教と並存する(仏教を補完する)民間のシャーマニズム信仰において、シャーマン(祈祷師)が病魔を祓い、豊穣・長寿を祈る(占う)等を主旨とする儀式に使用した祈祷道具です。

ラダックの特産品であり霊木である”アプリコット(杏子)”の老木を材に、神仏及び干支を表わす動物と人が混交した姿の人型(フィギュア)が板状パーツの両面に彫刻されており、この陰刻部にチベット系民族の主食であるツァンパにヤクバターを多めに加えた練り物を詰めて象り(型取り)をし、これを用いて祈祷師が占いと加持祈祷を執り行うものとなります。

チベット暦における干支の12の動物”鼠・牛・虎・猫・龍・蛇・馬・羊・猿・鶏・犬・豚”が人型の身体姿で並び、仏(菩薩)様とともに表わされた面と、神々と信仰者(僧侶)と思われる人型が表わされた面から成り、モチーフひとつひとつに生命感が宿り、敬虔な信仰の中で生み出され用いられたものに固有の精神性の深みが伝わってまいります。



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2016/3/6

カカオの実を象った銀製”キンマ用石灰容れ”  生活と祈りの道具



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製作地 インドネシア・スラウェシ島 トラジャ地方?
製作年代 18−19世紀
民族名 製作者:トラジャ系民族? / 使用者:サダン・トラジャ人
素材 シルバー


この”カカオの実”が象られたシルバー彫金蓋付き容器は、トラジャの祭事儀礼の際に欠かすことの出来ない”噛み嗜好品キンマ”に用いる石灰を入れるためのものとなります。

カカオがいつスラウェシ島にもたらされたかは不詳ですが(ジャワ島にはスペイン船により16c渡来の記録あり)、18cには海洋交易の輸出産品の一つとしてトラジャ人が栽培を行なっていた形跡があり、トラジャ地方は”知る人ぞ知るカカオ豆の一大生産地”でもあります。

古い時代の木造家屋・木棺、またインド更紗等染織品にも見られる”植物文様”が刻まれた本品は、トラジャ伝統宗教”アルク・トドロ”に基づく儀礼用として、王族・貴族使用のために手掛けられたことは明らかで(但し製作者は不詳)、”カカオの実”に対しても豊穣・健康・多産を象徴する等の、何らかの信仰的な意味合いが付加されていたのではないかと推察されます。




●トラジャ地方に自生するカカオの樹
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(写真 インドネシア・スラウェシ島 タナ・トラジャにて)


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●トラジャ人王族の舟形木棺に見られる彫刻の意匠
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●トラジャ向けインド更紗(17−18c) 手描き藍地植物文の意匠
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2015/10/19

織物に生命を吹き込む鳥の綜絖吊り滑車  生活と祈りの道具




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製作地 カンボジア南部  製作年代 20世紀初め


自分たちが滑車の車輪を回しているというような、生き生きとした躍動感溢れる意匠・愛らしい表情が印象的な織機部品の滑車。仏教に縁の聖鳥ハムサ・小鳥が表わされたものとなります。

実際にこの滑車が付された機で織物がつくられていた際のことを想像すると、カタカタと滑車の車輪が回る動き(振動)とともに脚や翼が動いているように見え、織りの中で糸が糸が擦れて キュッと絹鳴りする音は天を仰ぎ啼くハムサの姿と重なって目に映ったことでしょう。

滑車の車輪を回し織物の完成に手を貸してくれるのは神仏(の使い)であるとのデザイン的メッ セージが伝わってくるものであり、古のクメール染織と信仰の結び付きの深さが伺われます。



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2015/10/3

織物に込められる祈り 織機の滑車  生活と祈りの道具



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製作地 カンボジア南部  製作年代 20世紀前期


仏法を守護する合掌姿の天人「テパノン(Thepanom)」の姿が両面に彫り表わされ、下部に車輪が配された本品は、織機の綜絖を操作する(経糸を上下させる)糸が通される吊り滑車です。

織物に祈りを込める(=仏神への祈りが織物に魂を宿す)... 仏教信仰との結び付きが深いクメール染織文化の本質を伺うことができる一品と感じられます。

”テパノン”は、遥か時代を超え大陸から日本へ伝わった”飛天”と近しい存在とも考察されます。




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●参考画像 京都・平等院 国宝「雲中供養菩薩像(飛天)」 11c
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