2020/8/10

炎帝戦観戦記 2  俳句

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炎帝戦の順位を並べるだけでなく、夏井先生の解説と添削も記しておいたほうがいいだろう。

1位 ラジオ体操 おおおなもみの ある空地 
【作者自解】 小学生の頃のラジオ体操は近所の空き地でしていた。
体操後、通称「ひっつき虫」の「オオオナモミ」を友達とぶつけあって遊んだ思い出を詠んだ。
【解 説】 一見どうということのない句に思われるが、「オオオナモミ」を出したのがよかった。
「オナモミ」は史前帰化植物だが、現在絶滅危惧種となっている。
かたや「オオオナモミ」は侵略的外来種ワースト100 に入っている。
そういう経緯がこの植物にあり、図らずも時代性、空気感が描かれている。
【私 感】「オオオナモミ」「オナモミ」の植物名を初めて知った。
子どもの頃、野山を駆け回って遊んでいたが、衣服に付着するのはどれも総称して「ザシ」と呼んでいた。多分方言だろう。

2位 炎天のミミズ 診察券のシミ
【作者自解】 干からびたミミズと、シミの付いた診察券を持って生きている人とで、生と死の対比を狙った。
【解 説】 句またがりの対句表現の型。
「炎天」も「ミミズ」も夏の季語で季重なりになるが、ミミズはすでに干からびた状態なので許容できる。
また、生き物の季語は漢字で書くのが普通だが、下五の「シミ」の表記に寄せているのでいい。韻も計算している。
大袈裟になりがちな「生と死」をさりげないもので対比させているのがいい。
【私 感】 作者の「取り合わせ」にはいつも感心する。

3位 サングラス 外して探す カードかな
【作者自解】 平凡な日常の実体験を気負わずに詠んでみた。
【解 説】 平易な言葉で、日常のリアルな現場を描いている。
「サングラス」は本来眩しいからかけると描くところを、「外して」と季語の本質を逆から表現している。
詠嘆の「かな」も飄々とした効果がある。
【私 感】 他の人の句の「手袋を外して撫でる猫の喉」も褒められていたのを思い出した。覚えておきたい手法。

4位 行合(ゆきあい)の空 御朱印めぐりかな
【作者自解】「行合の空」とは夏と秋を行きつ戻りつするような空のことで、まだ季語ではないようだが敢えて使ってみた。
【解 説】 そのチャレンジは評価する。
言葉もきちんとしているので添削なし。
しかし、5位・6位の句は1位になる可能性を秘めているが、これは4位どまり。
【私 感】 夏井先生の歯に衣着せぬコメントに笑ってしまった。
テーマ性ということか。

5位 蛾の骸(むくろ) ポイントカードで 掬いけり
【作者自解】 部屋に蛾の死骸があり、ティッシュで取るのは伝わる感触がイヤで、あまり使っていないポイントカードで掬いとって処分した体験の句。身近にある死を描いたリアリズムの俳句である(と豪語)。
【解 説】 着眼点はさすが。
しかし「で」が説明的。「中八」と詠嘆の「けり」もいかがなものか。
  添削 蛾の骸掬う ポイントカードの端(は)
こうしていたら断トツの1位だった。
【私 感】 作者のナイーブな視点を見習いたい。

6位 ポイントで もらひし蛍 なほいきる
【作者自解】 ポイントカードはいわば擬似通貨。それを生き物と交換するのは抵抗があったが、光らなくなっても生きていて、小さな生き物の生命力に感動した。
【解 説】 相変わらず発想がとても良い。
作者自身も言っていた「で」が気になるが、これは外しにくい。
そこで説明臭さを薄める方法として、文語「もらひし」を口語「もらった」、さらに促音にしない歴史的かなづかい「もらつた」と表記するといい。
  添削 ポイントで もらつた蛍 なほいきる 
こうすれば1位の可能性があった。
【私 感】 以前夏井先生が「発想と技術は車の両輪。共に鍛えなければいけない」と言っていた。

7位 消しゴムに 彫刻刀の 彫る花火
【作者自解】 同じプレバトの「消しゴム版画」と併せ、今年中止された花火大会を詠んだ。
【解 説】「花火」が夏の季語であるが、実際のものではなく版画なので季語の力が弱まった。
【私 感】 季語を主役に立てる。そして今ある「もの」「こと」を詠むということは最初に学んだ俳句の基本。

8位 早桃(さもも)の香 支援の客の 食事券
【作者自解】 営業自粛のレストランが事前に食事券を販売し、自粛明けに来たお客様に早桃を出したという句。
【解 説】「客の」が不要だった。
季語の「早桃」がデザートなら、わかりやすく明記したほうがいい。
  添削 デザートは早桃 支援の食事券
【私 感】 作者は唯一の女性名人。いつもドラマ性のある発想で作句している。

9位 花は葉に 彼女は妻に そして母に
【作者自解】 季語は「花は葉に」で桜が葉桜に変わっていく様子。
同様に恋人が妻に、母になっていくのと取り合わせた。
【解 説】 難しい季語にチャレンジしたことを評価する。
しかし時間軸が長く詰め込み過ぎで、人生早送りのよう。
妻で1句、母で1句詠める。
  添削 花は葉に 彼女は匂はしき妻に 
     花は葉に 彼女は母として生きる

【私 感】解説で「時間軸が長い」という指摘をよく聞く。気をつけなければ。

10位 ラジオ体操 歯抜けの判や 夏深し
【作者自解】 子どもの頃の記憶。夏休み終盤にラジオ体操を休んだ日のスタンプが空欄で、乳歯の抜けた自分と重ねた。
【解 説】 季語「夏深し」の選択が間違い。
俳句は陰暦で、8月初旬に立秋となり、以降は秋である。
  添削 ラジオ体操 歯抜けの印や 夏休み(子どもに寄せて)
     ラジオ体操 歯抜けの印や 秋暑し(陰暦に合わせて)
     ラジオ体操 歯抜けの印や 朝暑し
【私 感】 季語「夏深し」の選択ミスは、単に時期の違いだけでなく不釣り合いのように思われる。
上五中七の元気な子どもの世界に対して、この季語は晩夏の情趣を感じさせる。
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