昔、私が20歳前後のこと、ある修行のグループに属し、
修行を開始した頃のことである。そのグループの大先達は
一種の悉地成就者で、精心統一してちょっと目を閉じると
あらゆることを霊視できた。
ある時、その日の修行が終わり、グループで談笑して
いた時間に、その方がつぎのようなお話をしてくれた。
「あの、石川五右衛門という盗賊がおったじゃろう?
彼は忍術を使って泥棒をやっとったということじゃった
んで、ワシはどういう風にやるのかなと、ちょっと
見てみたことがあるんじゃ。
するとな、ある家に盗みに入った情景が見えて、五右衛門
がまさに盗みをするところじゃった。五右衛門は箪笥を
開けて中のものを盗もうとしたんじゃが、鍵がかかって
いたんじゃ。
それで、一体どうやって鍵を開けるのか見とったら、
五右衛門は慌てず騒がず、懐から一文銭と金槌(木槌だっ
たか?)を取り出し、一文銭を箪笥の鍵穴を覆うように
当て、『アビラウンケン!』と鋭い呪文を発するとともに
一文銭の上から鍵穴を打ったんじゃ。次の瞬間、ピーンと
いう音がして、なんと箪笥の鍵が開いてしまった。そして
中の物を首尾よく盗み出して去って行ったんじゃ。」
面白い話であるとともに、好事家には参考になる…。
石川五右衛門はもともと忍者であったらしいが、忍術の
源流は修験道にあると聞く。石川五右衛門本人が編み出
したか、誰かの伝授を受けたのかは定かではないが、
このような術が存在した可能性は否定できないだろう。
そういえば、一文銭は丸と四角で構成されているので、
天地の霊物を象っているな…。(-_-;)金槌は何を
表象しているのだろう。

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