「1.モンゴルに向けて旅立つ!」
なぜもう一度モンゴルを目指そうと思ったのかよく分らない。やっぱり「ピラルクーとドラド」に再挑戦すべきだったと思うこともある。
「アマゾン釣行」が「旅をした」と言えるようなものではなかった負い目だろうか? 再び草原で自由に暴れまわりたかったのか? まあとにかく、三度蒙古の地を踏むことになったのだ。


左写真、国境の街「ニ連」の宿で中国人とくつろぐ俺。左隣の「宿の親父」がたぶん俺の部屋に忍び込んだ泥棒です(違っていたらゴメン 笑)。右写真、ニ連からモンゴルに向けて旅立つ! 国際列車の出発時間を待つ俺。泥棒にはあったが正直「悔しいとか、情けないとか」、そんな気持ちは全くなかった。自分は失ったもの以上のものを、今までの旅で彼らからもらっているような気がするからだ。とにかく明日には蒙古だ!
我武者羅無茶苦茶 プロローグ「遥かなるモンゴリア」
深い眠りからさめると車窓は荒野に変っていた。北京を早朝に発った汽車はいつのまにか内モンゴルを走っていた。中国特有の整然として退屈な街並みは面影もなく、乾燥した土地にレンガ造りの家がポツリポツリ、時折馬の姿が目に飛び込んでくる。蒙古はもう目の前だ。いよいよ明日には・・。
そして大地が闇に包まれる頃、汽車は国境の街「ニ連(アーレン)」に止まった。この街は何度か通り過ぎたことがある。しかしバックパックを背負い歩き回るのはこれが最初だ。地図もガイドブックもなく、「見知らぬ街の闇」にうごめく人々の中を擦り抜けてゆく。初めての街には夜に降り立つべきだ。闇が「独り」であることを強く意識させる。
しばらく歩くと人力車が止まった。「ピンガン ザイ ナーリー?(宿は何処?)」と言って乗り込む。10分ほどノロノロと走り、1軒のみすぼらしい宿に辿り着いた。「恐竜旅店」、名前だけは勇ましい。しかし、エアコンもない、風呂もない、共同のシャワーさえもない。宿のオヤジがやたらと愛想がいいのが唯一の救いか・・。
気を取り直し、一杯やりに繰り出した。宿から5分ほど歩くと小さな屋台が数軒並んでいた。羊肉の串焼き数本とビールを注文する。「この水っぽい中国ビールとも今夜でおさらばだ。いよいよ明日には・・」。大分酔ってしまった俺は、中国の片田舎の闇に草原の輝きを思い浮かべた。
翌日、ウランバートル行きの切符を買った。夕方にこの街を発ち、翌朝にはウランバートルだ。しかし、である…。駅から宿に帰り部屋のドアを開けると・・。何か変だ! 荷物の配置が微妙に変っている。調べてみるとナイフが無くなっていた。魚をさばき、羊の肉を骨から剥ぎとるための「ナイフ」、蒙古では男のシンボルともいえるもの、それを無くしてしまった。蒙古の地を踏む前に・・。なんだかわからないが、ガックリときた。
ドアには確かに鍵がかかっていた。窓のドアは開いていたけど、大通りに面したわずか30cmの縁を伝って泥棒がやってくるだろうか? しかもこの部屋は3階だ。ドアから入って来たとしか考えられない。鍵を持つ誰かが…。多分、一緒に鍋のウドンをつついた宿のオヤジだろう。疑いたくはなかったが、目を見た時に確信した。あんなにうろたえた目をした中国人を見たのは初めてだった。

中国には「ヤラレ」てしまったわけだが、悪い旅ではなかった。とにかく今日、中国に「再見」と言う。そして明日には蒙古だ。窓の外では砂にまみれた街が闇に包まれはじめていた。明日の朝、窓の外は輝く草原に変っていることだろう。
続きは、モンゴル釣行記完結編「我武者羅無茶苦茶」Part1を読んでね!
http://www.h6.dion.ne.jp/~monster/gamusyara.html
「2.チョロートへと続く道」
首都ウランバートルから「チョロート川」までは約600km。この長く辛い道のりを何度往復したことだろうか? 揺れる車体に、まき上がる砂埃、変化のない風景。モンゴル人の滅茶苦茶ノンビリした時間感覚に身を委ね走り続けるのは「あぁ、もう懲り懲りだ(笑)」。
だけど、くたびれ果てた末にあの「大地の裂け目」に立つ瞬間が好きだ。遥か下をゆったりと流れる「チョロート」を見下ろすと、セコセコした日本人の時間感覚は見事に消え失せ、やっと「この大地と同じ時間の流れの中で生きているのだ」ということを実感する。
「チョロートへと続く道」、それは「日本人」から「遊牧民」に生まれ変わるための「道」なのかな。
「3.開高さんの足跡を辿る」
ある日、タリアト村の外れにある「狼狩り名人」のゲルを訪れた。この名人とは開高さんの著書「オーパ、オーパ!! モンゴル編」の97ページに登場する男だ(集英社文庫)。射抜くような鋭い目、黒ずんだ肌、そして足元に横たわる狼の骸。まるまる1ページを支配しているその男の存在感は他のどの写真をも圧倒している。
しかし、この男はもうこのゲルには住んではいない。今は開高さんと同じ世界で暮らしているのだ。開高さんも訪れたというそのゲルには、今も未亡人とその息子がひっそりと暮らしている。差し出されたお茶をすすりながら、ふと辺りを見まわすと、タンスの脇に開高さんのステッカーが張ってあるのを見つけた! なんだか氏の足跡を見つけたようで、俺はとても嬉しかった・・(写真、狼狩り名人の遺影の前にて撮影)。
「4.狼」
テルヒンツァガーン湖の辺にあった物置小屋に吊るされていたのはなんと「オオカミ」!!想像してたよりかなりデカイね。世界では絶滅寸前の狼も、モンゴルでは家蓄を守るため駆除対象。「狼を見る事が出来た人は狼と同じぐらい強運。まして、狼を狩る事が出来た人は狼以上に強運な人」と言われるぐらい数は少ない。そのため人が襲われる心配は全くない。でも、山の中で何かの偶然でバッタリ会ったらさすがにどうなるか分らないよね・・。
「5.小さな遊牧民」
水汲みに、乳絞りに、マキ割りと遊牧民の子供は大変だね〜。この丸太を切るのって大人でも大変よ。
でも、モンゴル人の強靭な肉体はそうやって生まれるんだろうなぁ(あとは乳製品のとり過ぎか?)。今に幕内力士のほとんどはモンゴル人になってしまうぞぉ!
「6.たまには牛肉食わせろや」
羊肉がわりと好きな俺でも、毎日はねぇ・・。ということで、たまには牛! テントのぺグを串代わりに炭火で焼くのがモンゴル式だ!(ホントか・・?)。
「7.小さな旅」
テルヒンツァガーン湖から馬に乗って、チョロート川支流「ソモン川」に日帰りの小さな旅に出た。旅の相棒は遊牧民の少年。溶岩地帯の森を抜け、川を渡り三時間。かなり乗馬技術のいるルートだ。2年前にも一度、タイメンを釣るために通ったことがあるけれど、夕方に発ってポイントに辿り着いたのは夜中だった。そのため帰れなくなり、遊牧民のゲルに一泊する破目になってしまった(若夫婦が隣のベットでヤリ始めて、眠れなかった・・笑)。
今年、明らかに乗馬技術は落ちていた。みるみるうちに小さな相棒に遅れをとり、終いには手綱を引っ張ってもらいなんとか抜けることができた。2年前はハナタレ小僧だった少年の成長に驚きつつ、自分がひどく老いてしまったように思われ、気が滅入った・・。

帰り道、「独りで帰るから」と少年に別れを告げ、自分のペースでパッカパッカと馬に揺られた。小僧の手は借りまいと気張ったわけだが、俺の操る馬はやっぱり遅くて、森を出たときには湖面は夕日の紅に染まっていた。
しばらく湖岸をゲルに向って進むと、年寄りの遊牧民が集まって酒を飲んでいた。俺はその輪に加わり、酒を飲み憂鬱な気分をふっ飛ばした。しばらくして、すっかり出来上がってしまった73歳になるという老人が歌い始めた。昔、タリアト村で音楽の先生をやっていたというその老人の歌は美しく、そして力強く大地を振るわせた。俺はその響きに圧倒され、そして「歳をとるのも悪くないなぁ・・」と思った。「小さな旅」を終え、俺は「人生という大きな旅」を始めようと思った(ク、クサッ!! 笑)。

お終い。
「8.タルバガン狩り」
遊牧民の友達の案内でタルバガン狩りに向った! 自分で狩った獲物で、あの激美味「黄金水」を飲めたら最高だなと思ったのだ(こう書くとちょっと変態っぽいな 笑。黄金水についてはこちらを読んでね!)。
http://www.h6.dion.ne.jp/~monster/gamusyara3.html
しかし狩りのポイントに到着すると、既に他の遊牧民に獲物は全て狩られた後だった。そこで憂さバラシに空き缶を獲物に見たててブッ放つ。その距離約20m、オモチャのような鉄砲に小さな弾丸。「む、難し過ぎる・・。遊牧民って凄いなぁ」。5発目でなんとか端っこに当てた!!


そして、山で出会った狩人が本当に「オーパオーパモンゴル編」に登場している衣装を着てたっ!!(タルバガンの注意を引くため、羊に変装するらしいです)。
写真は捕れたばかりのタルバガンを調理しているところです。タルバガンの焼肉を御馳走になったけど、キモかった・・笑。

「9.韓国人のキムさん」
ある日、ミャグマの義理の弟がタリアト村からやってきた。村で小さな商店を営む彼は最近ロシアンジープを買ったそうだ。「釣りに行くなら釣れていってやるぞ!」と持ちかけられ、俺は最後にチョロート川へと繰り出すことになった。
この旅には韓国人のキムさんも加わった。北京で事業をしている彼は夏休みにモンゴルを訪れ、UBからツアーでこの湖までやってきた。しかし、あまりに退屈なツアーに飽き飽きしており、「俺も釣りに連れていってくれ! お金は払うから!」と言った。そこで俺は75ドルで2日のガイドを引きうけたのだ。
ところがこのキムさん、キャストがなんとかできるぐらいでほとんどド素人。ロッドも中国製のやけに長いコイ釣り用のもので、先が思いやられた・・。なんとかレノックを釣らせるが、あまりに強引にリールを巻きすぎたため、ロッドが真っ二つ・・笑。
しかしっ!最後に80cm台のタイメンを遂に捕った!
「10.最後のタイメン釣行」
キムさんと釣りをしたポイントはなかなか凄かった! 1日半の釣りで4匹のタイメンを捕ることができ、またバラしてしまったがキムさんに「鬼」がヒット! まだまだ大物がいる予感大です。
左写真は宴会途中に千鳥足で釣った100cm。川を横切らせて攻めたかったが、流れが強過ぎてルアーが流され下流から上流に引くような感じだったが、15mほど攻めた頃、足元の手前5mを流れる流心で「ゴンッ」とあたった。酔っぱらって足がもつれてうまく進めないので(笑)、かけつけたモンゴル人に支えてもらいながらやっとのことで緩やかな流れに誘導した。
右写真は水面屋の「チョロートモンスター」で最後に釣った90cm。

