10月21日近況
今日は一日中暇をしていた。皆忙しくて相手にしてくれません(ブラジルはわりと先進国なんで、アフリカとかの様に誰かしらブラブラしている人が相手にしてくれることはなく、皆しっかりと働いております。フィッシング・バガボンド武しゃんは少々肩身が狭い…)。
夕方になり、初めに出会った日系人高橋さんが仕事を終え、宿にやって来た。「お土産を持ってきたヨー」と言い、ニタリと笑う。手渡されたのはタランチュラだ。

素敵なお土産ありがとうございます(笑)。現在、俺のペットです…。
10月24日近況
日系人の高橋さんと1泊2日で奥地の川に行ってきた。夜中の3時に村を発ち、隣町で他のブラジル人釣り師3名と合流し、赤土の未舗装路を永遠と走り、川辺に立ったの朝の10時だった。今まで釣りをしていたのっぺりとした流れの上流部とは異なり、所々で巨岩が水面から顔を覗し、流れは速く渦巻いている。
「イイ流れだなぁ」とため息をついていると、背後で「パキンッ!」と嫌な音がした。振り向くと、高橋さんが俺のロッドを車のドアに挟んでいるんですけど…。

雷魚ロッド2本は無事だったんだが、対怪物用のNEWロッド「アクテオン(エバグリ)」が真っ二つになっているではないか…汗。保険でなんとかなるとは思うのだが、対ピラルクーに考えていたロッドが…。
「鋼の身体を手に入れた! そして、鋼の身体が折れました…泣」。
「不吉だ」と思いつつ、気を取り直してボートに乗り込む。ポイントは10km下流にあるという。アルミボート2台に分乗し先を急ぐが、俺と高橋さん、そしてブラジル人鯰師1名を乗せたボートの調子が悪く、1度止まると中々エンジンがかからない。仕方なくもう1台にけん引してもらうが、無茶苦茶速度が遅い。「いつになったら釣りができるのやら」と思い空を見上げていると、「ウォ!」とブラジル人達が叫び声を上げ、そして前方から大岩が迫ってくるではないか。激突する寸前でかわしたが、肝を冷やした。ブラジル人達は明るく「オッパッ!オッパッ!(驚いたわ〜)」と笑っているが、ますます不吉な予感がしてきたんだけど…。
ポイントにたどり着いたのが昼の12時過ぎだった。2つの川が合流し、流れが複雑で期待の持てるポイントだと思った。しかし、こんなに奥地に来たと思ったのに先行者がいた。2台のボートが川の真ん中に浮かんでおり、川辺にポツンと建っている小屋には人影が見えた。高橋さんに話を聞くと、川辺の広大なジャングルは先日出合った日系人・羽賀さんの土地であり、その小屋は釣り師のために建てたものだという。羽賀さんと知り合いの釣り師だけが使用できるらしい。
先行者のボートに近づき話を聞くと、「カショーハ(ペーシュ・カショーロ)が入れ食いで、すでに37匹釣った」と言う! 2つの川が合流してできた流芯の脇。流れがよどむポイントにアンカーを打ち糸を垂らすと、すぐにアタリが連発した。確かに凄い数の群がいるようだ。

うわー、やっぱりこの魚カッコいいわー。下顎から突き出た牙と大きな瞳のアンバランス感がいいんだよなー。

ブラジル人の鯰師もすぐにカショーハを手にした。不気味に血に染まる牙がイイ感じ…。

なーんて書いていると、随分楽しんでいるじゃないかと思うかもしれないが、少々この釣りには飽きている。釣果は全て「トゥビーラ」という、鰻と鯰を足して2で割った様な珍魚を使っての餌釣り。前年、シングー川上流域で鯰釣り師と共に散々やった退屈な釣りである。激流域ではルアーを果敢に襲う「激流の牙狼ことペェイシュカショーロ」も、流れの緩やかな川ではルアーではほとんど釣れない(深場に散らばっていてポイントを絞れない)。流芯脇の流れがよどんだ深場で、川底の死肉や小鯰を漁っているのだろう。生息環境によって、狼が「緩流のハイエナ」になってしまうのだ…。

トゥビーラの口から背にかけてフックを通し、10号ぐらいのオモリで底を取る。ゆっくりとシェイクして誘っていると、途端に「ゴツン、ゴツン」とあたり(餌に鋭い牙で一撃を加えているところだろう)、その後餌を咥えて走り去る。そこでラインを少し送り込んで思いっきり合わせる。強めの雷魚タックルを使っているので、引きは大したことない。やはりこの怪魚はルアーで釣ってこそ面白いんだろう。ブラジルの中部では、鯰師・餌釣り師が多いためいつもこの釣りをやる羽目になるのだが…。隣のブラジル人鯰釣り師がカショーハのアタリに一喜一憂しているのを横目で睨み、俺はルアー釣りに変更するタイミングを見計らっていた…。

2時間ほどカショーハを釣りまくっていると雲行きが相当怪しくなってきた。あっという間に土砂降りになり、周囲に雷がビシバシと落ちまくる。俺達は今夜の野営予定地に避難し、ビニールシートを被って雨を避けるが、一向に止む気配がない。益々激しさを増し、足元に小川ができてしまった。2時間ほどじっと耐えたが、我慢の限界がきて羽賀さんの小屋に逃げ込む。この日は結局カショーハの入れ食いを2時間ほど味わっただけで終わってしまった。

夕食はカショーハの炭火焼。夕マズメにタライロンを狙ってルアーを投げようと思っていた俺は大いに失望し、酒を大量に飲んで意識を失った…。
翌朝、夜明けと共に目が覚めた。鯰師にお願いし、朝一の2時間だけルアーを投げさせてもらうことにした。岸辺のシャローに倒木や岩が絡むポイントをザラで探って行くが、鯰師のテンションが思いっきり低く、ボートを漕いでくれない。岸辺はほとんど流れが無く、効率よく移動ができない。この地ではルアーがほとんど普及しておらず、ルアー釣りに理解がない。おまけに彼も土日だけが釣りに使える時間で、昨日の大雨で欲求不満が募り、早く餌で鯰やカショーハを釣りたいのだろう。
だが、少しぐらい漕いでくれてもいいじゃん…。まあ、オールも無かったんだけどね…。仕方なく、トゥビーラを入れている桶のフタで自分で漕ぎながら、キャストを続けるが、効率が悪過ぎる。おまけに岩礁地帯に入り流れが出てくると、ボートが岩に激突しまくり危なくてしょうがない(鯰師はボートの後ろでボォーとしていて衝突回避さえしてくれない)。結局70cmぐらいのタライロンが一度水面を割ったが、釣りにならずルアーを諦めた。過去2度に渡るブラジル釣行で俺を散々苦しめた鯰男が今回もまた…。まぁ、連れて来てもらっているんだから、文句は言えないんだけどね。フィッシング・バガボンド武しゃんは肩身が狭い…。
「タライロンはトゥビーラを使っての餌釣りに限る!」と言い張る鯰師さん。「じゃあ証拠を見せてもらおうか!」ということで、餌釣りを開始する。もうルアーで釣りたいとか贅沢言わないから、怪物タライロンを釣らせてくれよ!
しかし、この日は絶望的に釣れなかった…。前日、あれだけいたカショーハも姿を消した。夕方まで5人で糸を垂らしてカショーハ1匹。そして高橋さんの釣ったクルビーナ(下写真)。

ついでに珍鯰「ビク デ パト(地域によってジュルペンセンとも言う)」が2匹。死にたいわ…笑。

上顎が長く、ヤスリの様なざらざらした細かい歯が並ぶこの鯰。なんでこんな進化を遂げたのか? メリットあるのかな…。


苦闘はまだまだ続くのか…。この地では風に吹かれる枯葉の様に、他人任せでに吹かれるままに旅をしてきたが、少々精神的にお疲れ気味…。