不安な気持ちで病院の送迎バスに乗りました。
病室の入口に名札が入っていません。
看護師さんに尋ねると、転院したことのこと。
個人情報だからと言って、
なかなか転院先を教えてくれません。
前回の転院のときは、すぐに引き下がりましたが、
今回はナースステーションで少し粘って、
病院の名前だけは教えてもらいました。
そこへ、いつも帰りの送迎バスで一緒になる方が
通りがかり、親切に話しかけてくださいました。
難病のご主人の看病を献身的になさっている方です。
次の送迎バスまで、かなり時間があったので、
ロビーで話をしているうちに、
病院の相談室に行くように勧められました。
その方とは、もうお会いすることはないかもしれないので、
きちんと挨拶すると、明るい笑顔で答えてくれました。
私としては勇気を出して、思い切って相談室に入ると、
Tさんの担当されてた職員が現れ、
名前を聞かれたので、住民基本カードを差し出しました。
すると、「 Tさんが心配してましたよ。」 と言って、
転院先の病院の地図をコピーしてくれました。
送迎バスで駅まで戻り、K鉄道で最寄り駅まで行き、
そこから歩いて20分。
小さな駅から病院まで、
大きな団地の幅の広い遊歩道がずっと続いていて、
完全に車道とは離れた道で、
ちょうどイチョウが黄葉して美しく、
思いがけず気持ちの良い散歩になりました。
途中、Tさんへのお土産に、
綺麗に色付いた葉を拾いました。
今度の病院は、建物も小さめで、廊下や病室も狭いですが、
窓際のベッドで、同室の方が重症ではなさそうでした。
看護師さんに間柄を聞かれたので、
「一緒にボランティアをしていた仲間です。」
と、私が答えると、Tさんの目が熱くなり涙がこぼれました。
Tさんと私は、利用者さんとスタッフとして出会ったのですが、
Tさんも、お年寄りのための常設休憩所設立当初の
スタッフだったので、嘘ってわけでもないです。
来週また来る約束をして、病室を出ました。

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