2月14日(金)は大雪のバレンタインデーとなった。この日は朝から雪で、仕事も早めに上がったのだが、都内に出かける用事があった。1週間前の大雪の経験から中央自動車道も程なく通行止めとなることが予想されていた。散々迷ったのだが、「今の内に行け」と思い、18時半頃藤野を出発する。既にETCレーンは閉鎖、タイヤチェーンをチェックしている係員が立っていて、「インター出口にてETCカードと通行券を出して下さい」と言われる。
雪の高速道路はかなり危険である。スピードは当然出せないが、雪が突き刺さってくる。時速50km制限となっており、実際それ以上のスピードだと、視界も悪く、滑ったらどうしようと考えると生命の危険を感じる。車線は既に見えない状態で、ほとんど車は走っていない。神奈川県と東京都の県境にある小仏トンネルを抜ければ少しは状況は変わるかと思いきや、中央自動車道高井戸出口で降りるまでほとんど変わらず。除雪車が先行して走っており、時速30km程度でしか走られなかったが、むしろほっとした。下道に出るが、都内も思ったより積雪しており、交通量が断然増えた上に車線が見えないので危ないことこの上ない。何とか高円寺の路上パーキングに駐車する。
その日の夜は雪が降り続け、15日(土)朝4時頃より雨となるが、意外と融けていない。むしろ、中途半端に融けて冷たいシャーベット上の雪水が靴の中に入ってきて最悪である。パーキングに行くまでの道が遠く感じられる。そのまま練馬区の友人宅へ。少し休んで、自宅の電話線が屋根から落ちそうな雪によって切れ掛かっているとの報を受け、友人と共に藤野に向かったのが14時半。これからが長い道のりの始まりであった。
環状7号線より国道20号線に入るが、首都高も中央自動車道も完全に通行止め。下道は大渋滞。大原交差点より環状8号線まで、裏道を駆使しても1時間程度はかかったか。その後は、時々抜け道を使いながら国道20号線を進む。時折混んでいることはあるが、先程の環状8号線の時ほどではない。その頃はまだ、「暗くなるまでには藤野に到着したい」と呑気な事を考えていた。
県境の大垂水峠が通行止めという情報は既に得ており、八王子市内に入ると渋滞との予測を立てていたが、16号線への分岐を過ぎた交差点で国道20号線は封鎖され、歩行者天国状態になっていて警察官が立っていた。この時点で暗くなっていたので18時は過ぎていたと思う。ここからが本番であった。
町田街道を使用して、神奈川県相模原市の城山から国道413号線経由で藤野に帰るとの方針を立てるが、大戸交差点付近で大渋滞、スタック車両の続出で、折角通過した交差点を引き返し、町田街道を橋本方面に少し走って相原十字路交差点から東原宿交差点に抜け、国道413号線への合流を考えるが、大戸交差点でスタックしていた若いあんちゃんに「牽引して下さい」と頼まれ、東原宿交差点まで延々牽引する。途中、すれ違いが厳しい箇所が2箇所あり、トラックとの冷や冷やすれ違いも経験した。牽引しながらのすれ違いは大変であった。
国道413号線に入ったが、除雪はされておらず、わだちが適当についているのみ。城山から津久井の中野方面に抜け、日赤病院を過ぎた辺りで全く動かなくなる。ここで計2時間くらいはロスしたのだが、今から考えると、この先の三ヶ木交差点手前の長い坂でスタック車両が続出し、みんな車を捨てて歩いている状態になっていたのだが、それが分からずに動くものだとずっと待っていたのだ。歩行者が、「私は夕方ここに来たが、今見ても全く状況は変わっていませんよ」と恐ろしいことを教えてくれた。渋滞なのか、それとももぬけの殻車両が多数なのか、正確に把握することが重要だという教訓を得た(後に考えてみると、ジムニーだからこの時点で中野から三ヶ木までは突破出来たかもしれない。勿論対向車が来ればアウトもしくはかなり厳しかったとは思うが、今後の参考までに書き留めておく)。
兎も角帰宅したかったので、思い切って山道を行くことにし、引き返して日赤前交差点から城山公園を抜けて長竹方面を目指すことにする。これが22時頃か? 城山公園までの上り坂が相当厳しい。寒くなってきたので、雪が凍ってうまく登れなかったのだろう。愛車ジムニーの4WD-Lも駆使しながら何とか登り切る。下って、西中野交差点から串川橋交差点に向かおうと思ったが、引き返してくる車両が「この先で除雪をしていて通れない」との情報をくれた。ここはダメだ。どこに向かっても必ず壁にぶち当たる。段々選択肢は少なくなり、厳しい選択肢しか残されなくなってくる。
元来た道を根小屋駐在所まで戻って、長竹三差路交差点を目指すが、すぐに目の前でまたスタック車両が。また若いあんちゃん。向こうからは対抗車両3台。やむなく後ろに牽引する。あんちゃんは長竹に行くことを諦めて、橋本のほうに向かった。先を進むと、ハイエースクラスの車両とすれ違いになり「この先は通れますか?」と弱弱しく聞くと「通れますよ」との返答。しかし、さらにその先に行ける確証がないことは分かっているみたいな、一応人と話をしてみたかったということかな。ちなみに、この道は丁度この天候の取材をしていた山路徹というジャーナリストが暴漢に遭った道ということを後で知る。この時点で恐らく日付が変わるくらい。
長竹三差路交差点より国道412号線で三ヶ木を目指す。ここで選択肢はあと2つしかなくなる。1つは、青山交差点より国道413号線で道志方面を目指し、青根より県道76号線を北上して藤野に行く山道。交通量は極めて少ないはず。もう1つは三ヶ木より相模湖経由で戻る正攻法。
ここで私は厳しい道をまずは選んでしまう。国道413号線は、最初の頃既に除雪されており、途中までは楽勝であった。しばらく行くと、重機が2台動いていたが、通してもらい、先を進む。すると、「県境全面通行止め」の電光掲示板があるが、そこも突破する。道はわだちはあるものの、全く車が通っておらず、対抗車両の心配もなかったが山道である。途中、外れたバンパーが放置されている。雪が固まって、階段の上を走っているかのように車が上下する。大変な道であった。途中、クラッチを切ってしまい、スリップするというミスを犯すが、雪に衝突して助かった。
何とか県道76号線に入る交差点まで来たが、そこにも「この先全面通行止め」の電光掲示板が。覚悟をして突き進み、青根駐在所を過ぎて右へ曲がるカーブを少し降りると、そこに除雪がされていない1m50cm程の厚い雪の壁があり、その前が転回スペースになっていた。
「万事休す」と、読みの甘かった自分を反省し、すぐに気持ちを切り替えるが、「この大変な道を引き返す?!」ことに気付いた。でもしょうがない。すぐに引き返し、奇跡的に開いていた青野原のセブンイレブンで休憩。先ほど停電があったようで、友人が「もう閉めようかと思った」「来るなよ」など言われる。意外と車は停車していたが、ガソリンが無くなってここで力尽きたトラックの運転手が店内で寝ていたりと、大変な状態であった。これが0時40分ほど。
1時間近く休んで、正攻法の道へ。相模湖方面には意外とスムーズに行けたが、ねん坂の手前でやはりスタック車両が続出しておりダメ。阿津交差点より津久井養護学校経由で相模湖駅を目指す。途中、大きなトラックが、何度も何度も雪道にアタックをかけ、少しずつ坂道を登っている場面に遭遇した。大垂水方面にはもう戻れないはずだが、途中、桂橋の手前にあるトンネルの中で停車したので、朝までそこで明かすことにしたのだろう。先を急ぐ。
予想通り相模湖駅まの長い曲がったカーブでスタック車両が何台もある。少し登ったところで、配送業者と思しき車両がスタック中。これを何とかしないと先に進めないので、ついに坂道を牽引することに。相模湖駅前まで登ったが、この直後に牽引していた車両に後方追突されるというアクシデントが発生し、関係各所に電話したが、この雪で警察も到着できず。これが3時半頃。詳細は省略するが、数日後に全くこちらの要求通りに解決したのでよしとするが、この時点ではこちらもこれ以上のアクシデントには耐えられないくらい精神的に限界であった。ちなみに、運転手は、成田空港から甲府へ荷物を運ぶ途中で、もう20時間以上運転しているということであった。月曜には成田空港に戻ったらしいので、驚異的である。
4時頃、通行止めのはずの大垂水峠方面から何台か車が連なってくる。国道20号線は、わだちのみ1車線。どこまでいけるか分からないし、対抗車両が来た時点で終わりだが、何となく前に進みたい車が10台くらいになったので、それらが前進してからこちらも出発する。行けるかどうか、何の根拠もないが、最悪この距離なら歩いて帰っても大丈夫だという安心感があった。途中、相模湖インター手前で1台のみ重機が除雪をしており、その先に「やはり、対抗車両が」。こんなことが今日何10回あっただろう。100m位進むと次の問題が発生する。最後の最後まで大変であったが、幸い重機が傍にいたので臨時に作ってもらった道ですれ違い、何とか相模湖インター前まで来ると、そこは大型車両の避難基地のようになっていた。
自宅近くの吉野交差点を上がり、駐車場を確認しに行くと、その手前で除雪がないため、やむなくゴミ集積所の前に車を放置して家に帰り、眠りついたのが5時半であった。まともに休んだのは青野原セブンイレブンの小1時間のみ。しかし、どこかに眠ったらやばいという意識があり、不思議と疲れは全く感じず、むしろ精神は高揚したまま、動悸は早いままで、目覚めたのが8時前。それから電話線を切りそうになっていた屋根の雪の除雪をしたり、駐車場の除雪をした。先週の積雪量が吹き溜まりで約80cm、今回はどこでも80cmという感じで、先週の雪がまだ残っているところに積もったものだから、多いところでは1m50cmはあっただろうか。車で旧津久井町、相模湖町、藤野町を走っていた際の体感では、わだちのある車道でも30cmは積もっていた。車高の高いジムニーで助かった。
今は18日(火)だが、国道20号線は結局満足には除雪されないままで、今日もすれ違い渋滞の嵐である。基本的に、徒歩の移動が一番早い。連れ合いが、16日(日)に相模湖方面に行って帰ってくるだけで5時間かかっている。
職場周りの除雪も終わり、ようやく精神的に余裕も出来てきて、本日は連れ合いと、今日から通常営業のやまなみ温泉へ。その後、山梨県大月市の知人に電話するが、積雪は1m20cm程で、昔ながらの道しかない集落なので、みんなで手作業で除雪をし、軽トラック1台のみ動かして何10回も雪を運んだが、まだどこも車が出せない状態のようである。
17日(月)には中央本線が1時間に1本、高尾から四方津まで開通、23時に中央自動車道が開通した。しかし、山梨県内まだまだ通行止めの道路が多数あり、知人の手伝いに行くなら徒歩しかない、という状況が続いている。
今回は異例の文章のみとなり、土地勘のない方にはちんぷんかんぷんで大変申し訳ないのだが、後々の備忘録としてここにアップさせていただいた。雪の写真などはまた別に。

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