土用は、夏だけではない。春・夏・秋・冬、それぞれにある。
より正確には、「土用」とは四季に分類されぬ「季節と季節のニッチ(すき間)」の期間のことであるから、それぞれの季節の間に1年で4回ある。
それぞれが19日程度の長さで、あわせると74日ほどになる。つまり、1年の5分の1ほどである。
1年を5つに分けるというのは五行思想から来ていて、方角が「東西南北と中央」の5つであるように、季節は本来「春夏秋冬と土用」の5つから成り立っている。いや、「土用」は「季節と季節のすき間」なのだから、やはり4つでよいか。このあたり、かなり哲学的になってくる。
それぞれの土用が19日程度あるから、「子(ね)の日」から「亥(い)の日」までの十二支(これは年だけでなく、日にも、時にもついている)は、1回の土用に「丑の日」は1度か2度回ってくる。
しつこいようだが、「春の土用丑の日」も「秋の土用丑の日」も「冬の土用丑の日」も存在する。いや、「春と夏の間の土用丑の日」・・・と言うべきか(ややこしい)。
土用の丑の日が1回だけの年があったり、2回の年があったりするのは、そのためである。
ただし、現在、「土用、土用」と皆が言うのは、夏(夏と秋のすき間)の土用だけである。だから、多くの人たちは土用は夏のものと考えている。
(夏と秋のすき間といっても、この季節感(二十四節気)は、現在私たちが使っている暦(1872年から使用している太陽暦)より1ヶ月ほど早いので、「夏と秋のすき間の土用」は、今ではほとんど「真夏」になっている。)
今年は1回。7月27日が、その日であった。
今年はもっぱら、うなぎが品不足で高騰しているというニュースに終始した。
ぼくはマダガスカルまで買いあさりに行ったうなぎを食べようとまでは思わない。
なすびをうなぎの蒲焼風に料理したのを食べようとも思わない。焼きナスで十分だ。
というわけで、7月27日にはうなぎを食べず、2日前(25日)の天神祭本宮を過ぎて少し安くなったハモを食べた。ほんの一口であったが。
ちなみに、今年「夏の土用(夏と秋のすき間の土用)」が始まったのは7月19日、そして8月6日まで続く。つまり、7月18日までが夏であり、8月7日からが秋なので、この日から「立秋」(秋が立つ=秋が始まる)なのである。
例年、源内のことでテレビ局から電話がかかってくるのは、この時期が一番多い。
「うなぎを土用丑の日に食べることを考え出したのは本当に源内なのですか?」
「いえ違います。少なくとも現存する資料の中には、その証拠はありません」
毎回同じことばかり答えているのが面倒になって、10年あまり前に文章にした。
http://ci.nii.ac.jp/naid/40006298954
以来、メディアから連絡があると、この文章のコピーを送ることにしている。
できればWebの中で誰もが読める形にしてほしいのだが、学会誌なのでそうもいかない。
(学会誌の中では比較的あちこちに置いてあるものなので、興味のある方は読んでみてください。)
さらに、機会があるたびに「土用丑の日にうなぎを食べる風習は、平賀源内が発案したわけではない」と話したり書いたりしてきた。
その甲斐あってかどうか、近年、「平賀源内の発案で」と書かず、「と言われている」とするものが増えてきた気がする(それでも、まだ「源内発案説」は数多い)。
今年でちょうど30年、源内のことを調べ、可能な限り発言してきた甲斐も、少しはあったかな、と思うのだ。
今年は、テレビ局から電話が1本あった。
「高校生クイズに源内の出題をするので、答えが正しいか(むしろ、どのような答えが出てきたら不正解にすべきか)教えてほしい」というものであった。
うなぎについての問い合わせは、まだない。