これも毎回書いていることですが
「車検」についてですが
ユーザー車検が無い頃はショップへ依頼して通していたものですが
最近ではショップ側でも何も言わなければユーザー代行で何もせずに通すことも少なくないようです。
確かにお客様側からすれば安いほうが良いわけで、いままで普通に走っていたんだから大丈夫だろうで何もせずに通すことが普通の感覚になっていると思います。
当店の場合は、よっぽど普段からメンテさせてもらって状態を把握している車両、当方でレストア後距離走っていない車両を除いては「そのまま通しますか?」「総合点検(12ヶ月点検相当)をしますか?」と聞くようにしています。
そのまま通すにしても日常点検程度のチェックはさせて頂き、チェック表を渡しています、総合点検の場合はCB400F、CBX400Fおのおののウイークポイントのチェックを盛り込んだ独自のメニューで、昔の12ヶ月点検+アルファと思ってください。
最近では指定して依頼される方も多くなりました。
さて、今回の一台
車検+総合点検でお越しになりました
いままでは別のお店で通していたのですが細かい点検まではしていなかったようです。
まず、CBX400Fの場合、乗りっぱなしの場合は必ずリアマスターを確認します。
案の定この通り

ブーツに隠れて判りにくいのですが、見えないところで液もれにより腐食、錆はどんどん進行していきます。
以前はブレーキのオイル、カップ、シール類は車検ごとの定期交換部品でしたから
きちんと車検に出している車両にはこんなことはありえませんでした。
ブレーキ周りの腐食はアルミの表面を荒らすことになります。
イコールシールを替えてもオイルが漏れる、ブリーダーからのオイル漏れなどのもつながります
更にはピストンの動きが悪くなりブレーキの引きずり、最悪ロックしたままになることも、ブレーキオイルにゴミが混入しシリンダーのリターン通路を塞いでロックしっぱなしの車両も経験があります。
何か有れば「死亡事故」にもつながるところです、気をつけたいところですね!

↑ロッドの再メッキ(クロメート)も完了、新品のシールで組み立てます
残念なのは腐食でクレーターだらけのマスターシリンダーのブーツが被さる部位(画像でも荒れているのが見えるでしょう)

ブレーキフルードは毎車検時変えているようですが、タンク内の清掃を怠るとオイルの変質したカスが付着、拡大していくことに

お客様曰く、購入後一度もマスターインナーキットは替えていないとのこと
大きな漏れは無いもののブーツは破れ内部も酷いことに.....
ブレーキ周りの定期的なメンテナンスは絶対に必要です。
車検の無い250cc以下なんて乗りっ放しの人多いだろうな〜

これも非常に良くあることなのですがフィルターとスプリング間のワッシャーが居ない!
これは今までにフィルター交換した時にフィルターに張り付いたまま確認せずに捨ててしまったようです。
それでは無いとどうなるか、最悪、@スプリングが直接Aゴムを押すわけで上手く位置が合うと押されたゴムがフィルターの中にずっこけてしまいます。
そこの隙間からオイルが直接ろ紙を通らず流れ込んでゴミもろともオイルラインに流れていきます。
RPM管が付いていたので外しての作業です、オイルを抜いた時にメタルっぽい粒がオイルの中を泳いでいたのでせっかくなのでオイルパンも外してチェック、特にメタル粉はなく一安心

キャブレターのガソリンの滲み
ゴム製品は使っていると環境により遅かれ早かれ劣化するものです
例えばキャブレターのパッキンも痩せたり硬化したりします
画像の場合はキャブ間のフューエルジョイントからのガソリンのにじみのようです
まだこの程度のうちに処置しておけば良いのですが
滴り始めてからでは「かちかち山」の危険性さえ出てきます。
また、CB400Fのようなペイントされたクランクケースに垂れた場合、ガソリンの色素で変色してしまいます。
キャブのO/Hの際に横着してフロートチャンバー内部だけいじって、フューエルジョイントのOリングまで交換しないとリスクは大きくなります。
当店のキャブリペアキットはCB400F用もCBX400F用もフューエルジョイントのOリング入りですから、面倒でもここまで替える事を具申いたします。
自信のない人はショップに任せてくださいね!

キャブを外しバラしてみるとこの有様
フロートチャンバーの底にはおびただしい「赤いもの」が堆積

さて総合点検時は必ず確認するIGコイルとハイテンションコードのジョイント部
「あれっ!」コードを軽く引っ張ったら抜けちゃいました。

他の部位を外してみるとコードがやけに短い.....

本来はここまで刺さります、コイルの穴を覗けば深さは見当付くはずですので
間違いなく奥まで刺しましょう。(腐食のチェックも忘れずに)

試乗してみてワイドオープンで走ってくるとマフラーから白煙がモクモク
以外と本人気付かないものなんです。
例えば高速道路を使ったツーリングで並走した仲間に聞いてみるのも良いでしょう
「加速時に噴いていなかった?」(おもにオイル上がり)
「減速時にばふっと噴かなかった?」(おもにオイル下がり)
てな具合にです
今回はIN側から落ちているような予感です
この場合、修理した方が良いのですが
腰上O/Hといったことになりますので
そのまま乗る場合はオイルの量だけはマメにチェックすることです
また、燃焼室で燃えていた場合にはカーボンが堆積していきますので
イリジウムプラグなどに変えてスパークが強くなり
カーボンが剥がれバルブに噛んで圧縮漏れして不調になるリスクがある事を
覚えて置いてください
更にはボトムケースのTRACのリンク部分、ゴムブーツが破けています
このままでは埃、水分が侵入して錆、摩耗の原因になります。
ブーツに刺さってるピストンカラーすでに絶版です

ダストシールにもひび割れが.....

先にも書きましたがゴム部品は空気中のオゾン、熱、油分、紫外線などいろんなものにさらされ常に劣化しています。
定期的に交換するようにしましょう
最後に
普通に調子よく走っていると、細かい部分のメンテナンスがおろそかになり
いざ、徹底点検をすると不具合箇所がたくさん出てくるものです。
洗車/磨き時もただ洗う/磨くだけでなくいろんな部分に注意をして
その都度、対策/修理すれば摩耗、突発的な故障も回避することが出来るのではないでしょうか?
一度に全部となると出費も大きくなります。
また、新品で出ない部品も多くなりました。壊れてから(摩耗してから)では手遅れな場合もありますので普段からのメンテナンスがものをいいます。
生かすも殺すもメンテナンス次第である事を胆に命じてください