さて、今回お預かりしたCBX400Fのエンジン(単体持込)
フルO/Hをして、完成後エンジンが掛からない!セルを回しているうちに
セルの回りも遅くなってしまった。
といった内容でした。
さて、診断してみると
スターターシャフトがケースとかじっていて(焼きついて)動きが悪かったのですね
組むときに潤滑しなかったようです。金属同士が接触して動くところはオイルを塗布するなどの潤滑は基本です。

中古良品に交換し、エンジン台に載せファイアリングテストを試みるも
エンジンは掛かろうともしない。
コンプレッションがほとんど無く、プラグホール、インシュレーター側からオイルを入れ馴染ませ再度トライするも
#1=5、#2=6、#3=4、#4=6 (kg/cm2)
掛かるわけがありません(バルブ回りのトラブル確定)
また、ケース背面のブリーザー口より背圧が異常に出る!
(シリンダーまたはピストンリングのトラブル確定)
まずはバラしてみることに....
お約束のバルブタイミングのずれから始まり
ヘッドを外してみてびっくり!燃焼室にサンドブラストが掛かっているじゃないですか!
(何故毛嫌いするかは愛読者なら何度も「砂の恐怖」で警告しているので分かりますよね〜)
念のため、ポート側からパーツクリーナーを噴霧すると案の定にじむどころか流れ出てきます。(バルブとの接触面が密着していない)
バルブを外すとバルブシートにまでブラストしてある為表面がザラザラ
これでは軽い摺り合わせ程度じゃ面は出ません!
あまつさえポートにまでブラスト掛けているのが分かります。
さて、安易に行ったサンドブラスト、この影響はあらゆるところに現れます。
バルブのステムに皆傷が入っています。(中央の光っている部分)
ガイドに砂が残っていたのでしょう
シリンダーを外すと、ピストンリングがスティック(固着)していました。
これもリングとリング溝に砂が入り込んだ為起こります。
ともに新品ですがもう使えません

また、砂を噛んだためのおびただしい縦傷

すべてのピストンにスティック&傷が見受けられます。また、トップリングとセカンドリング間に砂が残っているものも....
シリンダーがまたすごい
錆びた痕跡で表面に段付きが出来ている

また、前後方向にはおびただしい縦傷(今回の砂によるものではない)
このヘッド、シリンダー周りじゃぁコンプレッションが上がるわけがありません
シリンダー側からも抜けているのでブローバイからの抜けもひどかったのですね
更にシリンダーにはこのようなことが
シリンダーガスケットがスリーブ際で盛り上がっている!?

Oリングを溝に収めずに置いただけ.......

このシリンダー、スリーブは鋳込み出は無く圧入なので熱膨張の加減などで隙間からオイルが登り、ヘッドガスケット部から外や燃焼室にオイルが混入することを防ぐ為のOリングですがこれでは意味ないですね。
腰下ではコンロッドの逆組が確認できます。#3が正解(画像向かって左)

サービスマニュアルにきちんと書いてあります。

あろうことか#3以外はコンロッドのキャップが逆さに組んである!
文字が片方だけに有るのが分かりますね、本来重量コード、内径コードが書かれています。(#3のみ正解なので文字が書いてある面が向こう向いていますのでなにも書かれていません)
組み忘れも発見!
画像中央のチェーンオイルフィールドノズルが居ない!またオイルポンプ〜ケース間のOリング、カラーが不在

これもサービスマニュアルやパーツリストで分かるものです。
今回はヘッド、バルブは要交換
シリンダーも論外、ピストン、リングも新品ですが交換
二度手間&散財となってしまいました。
いつでも云ってることですが
整備資料を見ながら、セオリーを守り
慌てず、正確な作業を心がけたいものです。