最近、(CBXばかりですが)O/H済み(と言われている)エンジンで開けてみてびっくりするものがよく入庫します。
今回の車両のご依頼事項は
「中古購入した車両で、エンジンはO/H済み。ただO/H時にトルクレンチを使っていなかったようなので、心配なのでまた長く乗りたいので分解点検して欲しい」
とのこと。
トルクレンチを使わずエンジンを組む?ありえない話です。
まず、車体を見てびっくり、見事にフレームが曲がっています。
CBXのフレームが弱いのはよく知られていますね
ぱっと見ただけでもわかりますね?
メインパイプはへの字に曲がっています。直定規を当てればよくわかりますね。
ダウンチューブも見事に曲がり、エンジンとすれすれ状態。
本来指が楽に入るくらい開いています。
さて、エンジンを下ろし始めると、エンジンマウントのナットが無いところ、緩んでいるところ、いい加減なボルトがついているところなどが露呈してきます。
また、ドライブチェーンは遊びが無く張った状態。
言い出したらきりが無いのでエンジンの方に集中しましょう
オイルフィルターを外すとこのとおり、なぜスプリングがこんなところに???

また、スプリングがゴムを直接押すためゴムが破壊されています。
(きちんと組んでいてもスプリングシートがいないと同じことが起こります)
画像よく見るとフィルターボルトの穴が露出しているのが判りますね、ここからストレーナーを介さずに汚れたオイルが直接オイルラインに流れ込みます。
ヘッドカバーを開けると「ん〜ずいぶんとカム山が小さいな?」
そうCBR400Fのカムが入っていました。
REV機構のためロッカーアームがごつくなっているので
カム山がCBXよりは小さくなっています。

ただし、ロッカーアームはCBXのままなのでアジャストボルトをこんなに伸ばして対応、アジャストナットのねじ山にアジャストボルトのねじ山が全部かかっていません
ロッカーアーム式の場合はレバー比といいロッカーアームの角度なども重要ですから安直な組み合わせはお勧めできません
さてカムホルダーを緩めて見ると、みな過剰トルクで締まっている!
確実に20N(2kg)で締まっている様子
分解完了!
こんなことがいつもなのですが
シリンダー内壁への認識がこんなものなのか?

錆の痕跡がこんなに見事に残っています。
わかってて使うのが理解できません
オーバーサイズピストンが無ければ、シリンダースリーブ製作、中古で生きてるシリンダーを探すなど方法はあります。

ピストンヘッドに注目、カーボンがまんべんなく付着せず、地が見えている部分がありまだらになっている。
カーボンがついていないのはオイル上がりしている部分です。
がしかし、#4シリンダーだけは内壁にトラブルが無いのにオイル上がりの痕跡
他のシリンダーも錆の痕跡とは違うところからも上がっている様子。

ピストンリングを交換していない?
お客様に確認するとO/H後100Kmは走っていないとの事
リングをよく見ると端のほうに段がある。(白い部分)
ピストンリングは全周まんべんなく磨耗しませんからシリンダーを開けたらもれなく交換です。

バルブ周りのチェックのため簡易チェックすると#4のインレット2本からにじみ出てくる。

外してみると、フェイス面が均等に光っていないのがわかりますか?
曲がっています。
オイルストレーナーもこのとおり
左側がこの車両のもの、右はきれいなもの

びっちり付着した綿埃、ウエスなどの毛羽立ちが付着したまま組むとこのようなことになります。

掃除したらこのとおり!

ヘッドガスケット、オイルパンガスケットは再使用?

メタルは交換されていなかったが#2コンロッドのみ要交換
極端なダメージが無ければ交換しなくても大丈夫
(当店の通常O/Hの場合、せっかく開けたのだから交換します。計測してサイズを確認しますのでコード表とは変わる場合もあります。)
O/Hの定義は難しく、ただ分解して組むだけでもO/H
大事なことは事前にしっかりとディスカッションしてどこまで部品交換するのか、どんな作業するのかを把握しておくことです。
また、交換部品はお金を出したお客様のものですから引渡し時までとっておいてもらいましょう