7/4の記事の京都ナンバーの車両
迷わずエンジンを降ろして折れ箇所をチェック

どうやらチャレンジ失敗したようで折れたドリルが残っている

分かりにくいので色分けすると

黄色:折れての残ったテンショナーセッティングボルト本体
赤色:最初にトライして失敗し折れて残ったドリル
青色:さらに穴あけにトライして先に残ったドリルの歯から逃げてしまいオフセットして開いてしまった穴(ドリルの歯は柔らかいほうに逃げていきます。このまま続けていたらケースのアルミ地のほうにどんどん逃げたでしょう)
ピンク:最後に真ん中にあけようとトライしてまたしても失敗して折れたドリルの歯
この時点で無理だと悟り諦めたようです。
当店でももうここまでされたら手の施しようがありません
分解してアッパーケース単体にして内燃機屋に持ち込み
工作機械にセットし折れたドリルの歯ごと切削除去してもらいます。
使用するエンドミルも痛みますから結構高いことになります。
当店の提案ですが
こんな大事になる前に持ち込んでいただいた方が良いのです。
ドリルの折れ込みなどが無ければ
エンジンは降ろして作業しますが、きっちりセンターに穴を開けて除去作業が出来るのです。
エンジンが車体に載ったまま無理な体勢で作業しても良いことはありません
ギャンブルして後で泣くか、手間でもエンジンを降ろすか
良く考えて作業して欲しいものです。
さて、走行6000マイル(約1万キロ)と言われているこのエンジン
あけてみると確かに走行が少なく状態が良い

クラッチアウターも減り(打痕)が少なくスタンプも残っている

ロッカーアームもカムシャフトも減りが少ない

フリクションディスクも昔の縁に地の金属が見えるタイプ

ここが走行距離の判断になりますが、ニュートラルストッパーの磨耗が非常に少ない
ギアチェンジの度に動く場所です、距離が伸びれば磨耗も増えます。
ただし逆輸入車と国内車両では度合いが違う場合があります。
そんな程度の良いエンジンでも
とんでもないものを発見
オイルポンプからミッションのベアリングへのオイルライン
なんとケース加工地の切りカスが残っていました。

メインシャフトの方、穴に何かいますね〜

引っ張り出すと....おぉ〜詰まっていたら大変です。

カウンターシャフト側もこの通り
こんなこともあるのです。
次にクランクをバラしてみると
コンロッドメタル全部におびただしい傷が

UPしてみると〜

小端はきれいなものです。

メインベアリングも良い当たりで問題なし
どういうことでしょう
考えられるのはドライスタートでかじらせてしまったであろうこと
万一金属粉やサンドブラストの砂ならメインベアリングからいたるところにダメージがあります。
走行距離から長いこと寝ていた車両であることは予想できます。
何年間と動かさずに置いておき、オイルがすべて落ちてしまい
ドライ状態でいきなりエンジン掛けたら、オイルがいきわたる前に金属同士がこすれかじりを起こします。
メタルを使う軸受けはオイルを強制的に供給して油膜でベアリングの役目をするのです。
たとえば「メタルはどんな当たりが良いのでしょう?」という質問には
「当たらないのが良いのです。」という答えになります。
ただし、ケースの歪などで絶対に無理ですけどね
当店のバックナンバーにも長期放置車のエンジン始動には強制的にオイルを回してからエンジン始動することを書いています。
特にCBXのようにクランク周りが弱い車両は普段の使用でエンジン始動時にセルで空回ししてから火を入れるよう指導しています。
いきなりエンジン掛けるよりはセルで回した方が回転が遅いですからね