久々のCBXネタ
メールで相談のあったお客様
「マフラーに穴が開いてしまって修理が出来ないか?」
とのこと
お近くでもあったので一度診せてもらうことにしました。
このCBX400F、5万キロ越えていますが新車で購入したワンオーナー車
診させてもらうと純正マフラーの左側、センタースタンドのアームの逃げ部分がバックリ穴が開いている。
さすがに修理は無理なので手持ちの中古品に交換することにしました。
また、総合点検も依頼されお約束ですが「初めて点検整備をさせて頂くとかなり不具合箇所が露呈する場合があり、ヘタすると10万越えも普通にありますよ。」と
覚悟を決めていただきます。
※もちろん事前に解る範囲で御見積りして、承諾を得てから作業進行し分解しないとわからない部分だけを都度お伺いする形で作業します。
まず、試乗すると
ステムベアリングの傷があり真ん中で引っかかる
オーナーさんは身体が慣れてしまっているから解らないと思いますが
私らは常にいろんな車両を乗りますからネガな部分はすぐに解ってしまいます。
そのせいだか、CBX特有のハンドルの振れが一切なし!
「ベアリング交換してスムーズに動くようになったら出るかもしれませんよ」
と一応は話をして置きます。
次にメーターからの異音、走行中にメーターから微細な唸り音が出るそれも信号待ちなどで止まると消える=スピードメーターのシャフトとメタルの焼き付きですね。
この場合修理は結構掛かるので今回はメーター単体にして潤滑剤掛けて消えればラッキーと思って頂くことにしました。
消えなければ後にO/Hという形でも良いでしょう。
さて早速作業に入ります。
問題のマフラー

マフラー下部の水抜き穴が詰まり、水が抜けずに内部を腐らせて穴が開いてしまう
特に多段膨張型で隔壁が多い純正マフラーでは良くあること
メーカー側も水抜き穴を開けていますがカーボンなどで詰まってしまうと抜けようがありません
長い距離走ったり、長時間エンジンを掛けてマフラーがちんちんに暖まれば水分も溜まりにくいのですが
中途半端に掛けてエンジン止めれば内部に水分が残ったままになりますね。
挙句、バルブが開いているところからシリンダー内部に水蒸気が入り込んだりする可能性もありますね。
水抜き穴は定期的にエアブローしてカーボンで詰まらないようにしておきたいですね。
(小さなコンプレッサーでも一台あると役に立ちます。)
センタースタンドが付いている車両は作業がしやすいです。
前後一気に分解することが可能です。

当店の総合点検ではスイングアーム、リンク周りも完全分解
古いグリスを洗浄し新しいグリスを塗布して組みます。
がしかし、距離乗るなら車検ごとにグリスUPして欲しいこの部位も
乗りっ放し状態だと酷い有様

完全にグリスが切れて水も浸入し真っ赤っか!
コンロッドの太い方のカラーがかじりやすいのですが事もあろうにメーカー絶版!
こういう部位こそ磨耗させないように気配りが必要です。
今回はカラー、キャップフルセットで交換です。
キャップはゴムシールの役目もしていますからリップが磨耗、破損していれば水が浸入する原因になります。
コンロッドの太いカラーはもちろんリプロで製作しました。(硬質な特殊合金製)
これもおなじみですねリアブレーキマスターシリンダー

オイル漏れ〜漏れたオイルが結晶化〜マスターシリンダーボディも塗装が侵されている。
キャリパー側

スライドピン部分で固着、
先のBBSの質問にもありましたがヘタすると引きずりの原因にもなりえます。
スライドしない=パッドが片方こすりっぱなし!
なんてことにも.....
ピストンにも錆が見られるため
リアブレーキ周りO/H決定
フロントキャリパー

ぱっと見問題無さそうですが......
マスターシリンダーのインナーキットを見ると

ブーツの状態を見るととても数年手をつけては居ない様子
フロントブレーキもインナーキット、シールを交換することにします。
実はこの車両、去年の11月に車検を取ったばかり
ということはユーザー代行でただ通しただけの車検ということでしょう。
このユーザー車検という制度
いかがなものかと感じています。
これはもうしつこいくらいにここで書いていますが
「なにもしないで安上がりに車検が通せますよ」という制度ではなく
これまで整備工場で行っていた作業を自分の責任のもと自分で行い車検場にもちこみ工賃分の負担を軽減させようというもの
また、現行車は壊れなくなった部分もあるためと解釈していますが
何もしないで当たり前のようになっているのはいかがなものかと感じます。
当店でもお客様と相談して車両の状況からユーザー代行にするのか整備するのか決定します。
特にブレーキ周り、クッションリンク周りは定期的にメンテナンスを行っておきたい部分です。
ユーザー車検が無いころは漏れなく行っていた部分です。(サービスマニュアル定期点検項目参照)
さて、話がそれましたが
タペット調整のためにヘッドカバーを外そうとしたら.....ん゛〜外れない!
ヘッドカバーパッキンが張り付いている。

なんとか外れたが、ちぎれました。

昔ながらの中番-MA6-のヘッドカバーパッキン!
いったい何年ものなんだろう?10年以上開けていないのか?
これもお約束ですね
エアクリーナー......

すでに合掌状態です。
大体薄いグレーになったら、感度の良い人なら不調を感じます。
出来ることなら新品を手元にストックしておいて常に色の比較が出来るようにしておきたいものです。
交換時には日付、距離数は書いておきたいですね

何キロでどれだけ汚れるかデータ取りも出来るわけです。
インシュレーターマニホールドも交換時期

ボルト止め部周辺が割れてしまっています。

周辺が赤くなっているのはガソリンの色素、中のOリングが終っているのも確定です。
インシュレーターのトラブルは致命傷になります。
二次エアーを吸って薄くなったらエンジンを壊すことになります。
早めの交換を具申いたします。
(ちなみにLインシュレーターはメーカー長期欠品中!5月中旬まで入ってきません)
そんなこんなでこの車両も中古マフラー代を含めて約20万円コース
エンジン本体も調子が良いものの圧縮は#2、#3が10kg/cm2無い状態
将来的にもっと落ちて不調になった場合にエンジン腰上O/Hなどを考えてはいかがでしょうと提案
これまで車検の面倒を見てもらっていたショップさんに憤りを感じると話されていましたが、
逆にオーナーさん自身が依頼時に「何処までやって欲しいか」「どんな不具合を感じるか」を明確にし、ディスカッションをすることが大事だと感じます。
たとえば馴れ合いのお店で「車検お願いね〜安くやっておいてね〜」「はいよ〜出来たら電話するね〜」なんて形が普通にあるかと思いますが
これではいかがなものかと思います。