今回の記事はあくまでも、
「O/Hする際にこんなことに注意してください。」
という臨床例を画像で紹介し、注意を促すものです。
自分でO/Hを行なう場合に同様の不具合が起きないように
慎重にセオリー煮どおりに作業されるようお願いいたします。
また、お客様への「こんなでしたよ〜」という連絡画像掲示板も兼ねています。
去年の10月ごろに修理でお預かりしたCB400F
メインの修理はスタッドボルト折れ
ところがオイル漏れも云われていて
チェックをしてみるとカウンターシャフトのオイルシールから漏れている

車両自体は7月にフルオーバーホール済み車両と言うことでショップで購入したばかり
確かにケース合わせ目の液体パッキンは新しいものなのでケース開けているのは間違いない
場所が場所で漏れたオイルがスプロケット〜チェーンに移り、リアタイヤに飛んでいるため
非常に危険なので修理を即す。
当店で作業すれば修理費用も発生しますから
まず、購入後間もないので買ったショップに相談するように具申しました。
エンジン開けたのにオイルシールからオイルを噴くのはまずいでしょう
作業した側が責任持って修理すべき部分ですが......
しばらくして
「購入後3ヶ月以内でないとクレームは受けられないと断られました。」と
肩を落としてお客様がお越しになりました。
費用がかかってもとご予約を頂きました。
さて、年が明けていざお預かりしてみると....
オイルまみれのスプロケット
チェーンから飛んだオイルがタイヤに付着
オイルパスキャップ

ここのOリングも熱にさらされ寿命が短いですね〜
ダイナモカバー下

オイルが溜まっていますね〜
開けてみると

あれぇ〜、パスプラグのOリングかと思いきや
オイルシールから漏れています。
(クランクとシールのリップ部にオイルの粒が見えると思います。)
それどころかローターが付くテーパー部分に信じられないものを発見!
エンジンを降ろして分解し始めます。
まずヘッド

あたり幅広いな〜
よく摺り合わせだけで済ましてしまう方が多いようですが
バルブの当たり面の幅が広いとカーボンの噛みこみなどを起こしやすくなります。
シートカットで規定値に切削(研磨)し修正したいですね
摺りあわせだけでは幅が広がることは有っても狭くなることはありませんね
シリンダー
これもお約束状態
錆の痕が2つのシリンダーにありました。

染み程度の爪に引っ掛からないものなら我慢もできますが
深いものはダメでしょう、凹に残ったオイルをリングが掻き揚げてオイル上がりの原因になりかねません
オーバーサイズピストンが手に入るのですからボーリングしたいですよね。
こんな堅っ苦しいこと言うのは当店だけかしら?
さらに爪に引っ掛かる縦傷も....

シリンダーってうまく写せなくて、光ってしまって傷や錆の痕がリアルに表現できません
実際に見て触ってもらうのが一番です、
ピストン

#1、#2ピストン
#2のピストンのかじりと両方のピンのカジリが酷いですね

#3、#4ピストン
ピストンピンのカジリが酷いですね
圧縮の抜けもO/H後8000Kmだといかがなものかと思います。
シリンダースタッド
これはビックリです。本来シリンダスタッドボルトには
専用のハイテンションボルトが使われますが
ステンレスの長ネジを寸法にカットして使われていました。

それも本来、この2本はケース側は10mmの特殊なものですが
ケース側のネジ穴に安直にヘリサートを入れて
8mmの長ネジを入れてあるだけです。

本来、8mmのヘリサート用のネジ穴サイズは10mmより細く
10mmのネジ穴をそのまま使用したため緩くて締まらずこの有様
BRCさんからスタッドボルトは販売されていますから
新品を買って使ってくださいね。
オイルパンを外すと....
そこにはフィルタースクリーンが居ますが
とんでもないことになっていました

びっちり目詰まり
端からパーツクリーナーを吹きかけると....

うへへ〜
こんなにゴミが付着していました。

ほとんどが繊維くず
これは何でしょう?
組む際に軍手して組んだ?部品をウエスで拭きながら組んだ?
そんなところでしょう
組んだその場では解りませんがエンジンオイルに洗い流され
このスクリーンに集まります。
ここが目詰まりするとどうなるか.....解りますよね〜
オイルポンプ

深い傷が少々、余裕があれば傷の少ないものに替えたいですね
さて、問題のオイル漏れしていたオイルシール
ダイナモ側

リップのスプリングがずっこけています。
原因はこれですね、リップが均等に当たらないので漏れたのですね。
それよりもクランクのローターが付くテーパー部分に注目!
カウンターシャフトオイルシール

これも中央のリップのスプリングがずっこけています。
よく見るとわかりますが奥のリップと中央のリップの間に油圧が掛かり
カウンターシャフトを潤滑します。
リップが変形し手前側にオイルが流れてきて
外に流出したようです。
しかし、油圧が掛かっているのにそれくらいの出方で済んだのか.....
(じゃーじゃー出て良さそうだが)
それは.....

オイルポンプからケースのラインを通ったオイルがオイルシールの小さな穴を通って内部に入り、カウンターシャフトに流れて行くのですが
見てのとおり穴が液体パッキンで塞がれて居ます。

ひどいなぁ
コンロッド

コンロッドベアリングにカジリがみられます。
メタルアタックっぽいなぁ......いつ入った傷なんだろう。
ピストンピンから小端も嫌な状態....交換したいな〜
クランクシャフト
全体的にジャーナル部分に傷が多いです。

ラッピングするにもテーパー部分が気になるので中古良品に交換したいですね。

この傷、こんなところにこのような傷が入るのは
ウオーターポンププライヤーなどで咥えてクランクを回そうとしたくらいしか考えられない
スターターワンウエイ

プライマリーダンパーラバーもカッチカチ、8000km程度でそんなに硬くなるものか.....
せっかく開けたら替えなきゃ損だゼイ!
エンジンO/Hに関しては定義は無く
どんな作業をしたのか?
部品交換はどの部分か?
新品なのか?中古なのか?
詳しく突っ込んで聞くことも大事なことです。