エンジン、車体周りのO/Hでお預かりしたCBX400F
走行距離はメーターでは約15000km弱

メーターはあてにならないのが世の常
軽くスナップさせると回転の落ち際に「ジャラ」とも「チャラ」ともいえるような異音が微妙に出ている。
これまでの経験からコンロッド小端のクリアランスが大きくて出る音に近い
一応、車体周りも含めて覚悟するようオーナーさんには告げ
試乗して、状態を確認した後
まず、圧縮を計測すると
#1から、9、7、8、9 kg/cm2と10kg/cm2満たない
これは低いですね〜
エンジンオイルを抜いて皿に落とし
しばらくして上澄みを捨て沈殿物を確認する。

ちょっと大き目の粒が何片も見受けられる。
いやな予感がする....かなりいやな予感が!
分解開始、ヘッド周りを分解し
シリンダーを外す

全体的にオイル上がりが見られます、特に#4はWET状態
何が起きているのか?
さらにこの状態でコンロッドの動きも確認するのだが
#3の動きが重い!メタル周りのトラブル確実ですね。
※腰上O/Hをする際に必ず行ってください
4本比べて一部分動きが重かったり、横方向にガタが大きかったり
メタル周りにトラブルを抱えてる可能性大です。
そのまま腰下まで分解することを具申します。
横着してそのまま組んであとからまた全バラでは2度手間になってしまいますね
すでに外れているヘッドのバルブ周りを分解してみましょう
全体的にカーボンの堆積が多いですね
濡れているINバルブはオイル下がりしています。

判りにくいですけど、フェイス面も磨耗して段が付いています。
ステム部分を見ると...

INバルブ、ステムシールが掛かる部分に傷が円周上に入っています。錆びさせた?
フェイス面の磨耗もあり、径が使用限度以下のため全部交換です。

こちらはEXバルブ2箇所だけですがコッターの接する部分が変形していて
リューターで擦って外しました。
この2本は交換です。EXバルブはIN側より硬い材質のため磨耗はギリOK
このようにコッター部が変形してスムーズに外れないバルブをグリグリ無理やり外さないでくださいね
やわらかいバルブガイドに傷を付けて外しているということです。
また、CBXの場合バルブスプリングは使用限度以下になっていることがほとんど
高回転型エンジンはまわし過ぎでのバルブ周りのトラブルも致命傷になります。
レブリミッターも付いていませんから
あっけなくレッド以上に回り「ニャー」とサージングを起こします。
へたったスプリングでコッターでも外れようものなら
バルブが落ちて燃焼室くちゃくちゃ状態、シリンダーもNG
最悪コンロッドも曲がります。
きちんとマニュアル見ながら測定し、使用限度以下の部品は交換する
大事なことですね。
プラグホール周辺にクラックを発見!
圧縮抜けやシートリングの緩みにも繋がります。
#1

#2

#3

#4

これはスリーブを製作して対応します。
なぜ起きるのか?
熱的要因が大きいと感じています。
たとえばXLR250RやXR250の単気筒エンジン
エンデューロなどの過酷な競技に使われたエンジンで同様のクラックが入っていることが多いのです。
プラグホール〜シートリング間の肉厚が薄いこともあるでしょう
さて、シリンダー
左から#4、#3

見事に錆びさせた経歴のあるエンジンでした。
UP画像

#2、#1

全体的に縦傷も多いようです。
さらに腰下も分解すると
案の定、#3コンロッドのメタルは焼きついていました

左から#1〜#4
メイン側は...

#3ロアケース側が下地が見えるほど磨耗しています。
距離乗っていますね〜
肝心なクランクシャフト側は
#4〜

〜#1

どうにかラッピングで済みそうです。
ピストンピンはすべて磨耗していてクリアランスが大きくなっていました。

新品が出ればコンロッドごと交換したいところです。
焼けたクラッチプレート
変に磨耗しているプライマリーチェーンのテンショナー
エンジンだけでも見積は大変なことになっているのですが
次回は車体編です。