事前のお電話で
「フロントフォークが柔らかすぎるので地元のショップで診てもらったら逆に固すぎてストロークしないので見てほしい」
という依頼
ご予約いただいて、いざ当日
現車を診てぶっ飛んだのは
フロントはわずかに動くだけ、リアは動かず
完全に前後リジット状態

この状態でおよそ40kmの道のりを走ってきたそうな
これだけでも
「チャレンジャー」というか「無謀」と言いたいところですが
新たに「ブレーキの引きずり」も追加で依頼され
フロントを持ち上げホイールを回すと確かに引きずっている
その場でキャリパーを外し、パッド、ピストンの動きの確認....
と思ったら、ピストンが戻らない???
マスターシリンダーのゴミ噛みですやん
キャップを開けてオイルの汚れ状況の確認
えっ、ブレーキオイル空っぽですやん......
怖っ!!
絶句です!
さて、早速事情聴取
○車輌自体はインターネットオークションで車輌を見ずに購入した。
○フロントフォークはやわらかすぎたので地元の「ドリーム店」に持ち込み対処してもらった=硬くなって帰ってきた。
○別な店?で依頼もしないのにレバーとミラーを交換された???
本来、フロントフォークに関しては作業したお店にアフターフォローしてもらうのが筋なのですが、信用ならないので行きたくないとのこと
「ウチで診ると費用が発生しますよ」と云うも「お願いします」と
意外とそのようなパターンは多いようですね
実際、当店で作業して万一不具合が出て他店に行かれている方もいるのでしょうか?
きちんとフォローしますので遠慮なく云ってくださいね
さて、フロントフォークから
ストロークの確認ですが

わずかこれだけ...1Gで沈んでほとんど動かない状態ですね。
リアは「KONI」当時モノ好きにはたまらないアルミボディ

これは完全にビクともしない
内部でオイルが変質したものが通路を詰まらせているであろうことは
毎度のことですね
要O/Hです。
早速、フォークを外してオイル量のチェックから
右側

約200cc
左側は

約225cc
スプリングに付着してる分、内部に若干残る分を考えても異常に多い量
本来、
交換時:165〜180CC
分解時:185〜191CC
ですから、ストロークせずにロックするのは当たり前(左側はてきめんです)
後で詳しく聞いたら、「車輌を工場内に入れて1時間程度で出てきたのでオイルを足しただけだろう。」とのこと
っていうか、それは無いだろう!
スプリングがやわらかければスプリングの交換かワッシャーなどでプリロードをかけてあげる
減衰がやわらかいならO/Hしてピストンリングを替えたり、オイルの硬さを替えてみるとか
それがセオリーではないでしょうか?
オイルを足すって....お茶濁しにもなってないですね。
その場でストロークさせておかしいと思わないのか......
オイルシールも左右で違う為、念のために分解チェックします。
そんな中で、預かったときから思っていたことが現実化してきます。
「この車輌、メーターの距離は実走なのではないか?」
インナーチューブの先端、大概大きくかじっているものですが

非常に少ない。
メーターは.....

14666km!?
もうひとつのチェックポイント

ガバナーのカム
これまたキレイ!
ポイント、コンデンサは社外品に変わっています。
(私自身では社外品は絶対に使いたくない部分です。)
さて、次はブレーキ
ゴミ噛みするとどうなるか?

こんな、クランプ使って強制的に戻そうとしても
マスターシリンダーの細〜いリターンポートが詰まっているから
ビクともしません
こういう場合はオイルラインすべて洗浄が必要になります。
オイルパイプはフレアナットレンチを使います。
これでも固い!!!普通のスパナじゃ確実に舐めてしまいます。

適材適所で工具も用意したいですね。
ピストン自体はセーフ!わずかなクレーターは居ますが微細なので今回は良いでしょう
しかし、白い粒がたくさん...

こんなのが諸悪の根源でしょうな
全バラ完了!
マスターシリンダー内部.....

居ますね〜赤い錆も溜まっています。
スリーウエイジョイント......

オイルボルトとの段差のところだろう、白い堆積物が見えますね
オイルボルト、ホース...............

白い付着物がすごい
ホース、パイプともに総交換決定!
単純に考えてもホース内部、パイプ内部にも張り付いているのは容易に想像できます。
だからこそ、ブレーキホースも定期交換部品となっているのです。
キャリパーやマスターシリンダーを分解して粒粒が見られたら
全バラして洗浄することを具申いたします。
走行距離から乗らなかった時間が長くあったと想定できます
そのときにブレーキフルードを変質、付着させてしまったのでしょうね
メタル周り、シリンダー内壁がちと気になるところ
しかしながら、距離が少なくオリジナル度が高い為
良い車輌です。
この車輌の落札価格は先日書いた記事のやはりオークションで購入した車輌と金額的にはほぼ同額
コンディションはこんなにも違うのです。
オークションに出品されている車輌はすべてが悪いわけではないのです。
きちんと吟味できればこのようなパターンもあると言う見本です。
11/29更新
フロントフォークパーツ洗浄作業していて嫌なものを発見
1本だけですがステムのあたりに白い筋
計測してみると...

あ〜曲がってる〜
また、組んだときにオイルシールのリップの上あたりに円周上に錆の痕がたくさんある

これは使っていてにじみが止まらないでしょう
先端の磨耗が少なくオリジナルのインナーチューブですが
見ちゃった以上はインナーチューブを交換したいところ
オーナーさんと作戦会議ですね。
11/29 23:00更新
オーナーさんよりインナーチューブの交換の許可を得ました。
実はメンテナンスキャンペーンを継続中
当店でフロントフォークのO/Hをする場合
リーズナブルなメニューを用意しているのです。
部品代 ¥20,475−
インナーチューブ(社外)x2
ダストシール(社外)x2
オイルシール(純正)x2
ピシトンリング(純正)x2
スペシャルワッシャー(純正)x2
ホンダ純正クッションオイル#10
O/H技術料 ¥6,300−(通常¥12,600−)
合計 ¥26,775−
リアショックも社外品リプロの純正風クロームメッキのものに変更です。
ブレーキもフルO/Hですから
これで、ぶったまげるほど乗りやすくなりますね。
(っていうか、本来の状態に戻ったと言うことですね。)
まず、機能的なものを正常に戻して
きちんと走るようにして
それからカスタム......
良いことです。