何ヶ月も前にこのような修理依頼のメールを戴いて
「日頃はブログを興味深く拝見させていただいております。
私、2006年10月にxxxxで初めてバイク(ヨンフォア)を購入し、その後乗り続けておりますが
エンジンのメカノイズとでも言うのでしょうか、エンジン内の金属音が少し気になっておりました。
2008年4月、転勤で北海道旭川にヨンフォアも帯同し、初めて車検を通したあたりでイグニッションコイルが
ダメとのことで取り替えました。
2011年にももう一つのコイルもダメとのことで取り替え。シーズン終わり頃に馬力が出ないなと思っておりましたら
雪が振り出し、本格的にガレージに保管しようとしたところエンジンがかからず不動のまま冬を超しました。
2012年春に現住所の秋田に転勤となり、不動のままxxxxで診断してもらったところキャブレターが原因らしく
一応はエンジンがかかるようになりましたが、馬力がでない。xxxxではこれ以上改善はできないようなことでした。
御社のキャブレターOHパーツを購入して、じぶんでやってみようとも思いましたが、何せ機械に素人のため
取り返しのつかない事になってもまずいと思い、メールさせていただいた次第です。」
一般整備の順番を待ち、陸送で秋田から到着したCB400F

こちらの業者さんは平積みトラックなんですね〜
雨降ってもこのまま運んじゃうのかしら?
普段利用している陸送業者は西は九州、東は山形以南仙台あたりまで
秋田は守備範囲でないため
今回はお客様に手配していただきました。

サイドスタンドが妙に寝ている.....変に溶接補修でもしてあるのか?
慢性的な作業の遅延から
手をつけられるまで店の中に保管します。
さて、やっと診断です。
妙に寝ていたサイドスタンド
(事情聴取でお客様も気にはなっていたらしい)

あら〜ぱっくり割れています。
溶接補修が必要です。
これもきちんと角度を合わせて修復しないと
元の角度に戻りません
いい加減な補修で寝たままの車輌も少なくないですね
依頼事項であるエンジン不調
実際にエンジンを掛けると#1が爆発しないで3気筒の為にまったくふけない
「あぁ、なるほどこのことか....」
プラグを見ると他は真っ黒なのに
#1だけ真っ白

電極は濡れているので混合気は来ているだろう
ハイテンションコードをチェックしようとプラグキャップを引っ張ると
「するっ!」

あらま、プラグキャップがコードに刺さっていなくて浮いていたのですね
ネジの部分の腐食していますから要交換です。
ちなみに#3も緩めでした
念のためすべてのキャップとコードを確認し
エンジンを掛けると
4気筒すべてに火が入り
空ぶかしでもちゃんとふけあがります。
さて、軽く見回して
試乗します。
走り始めると
「あぁなんだ、普通に走るじゃないですか〜♪」
と、思いきや
そのうち温まってくるとアイドリングが妙に高くなって
正規の位置に1200rpmに合わせると
低域でぐずり始めてきた
温まって不調になる=濃い
プラグも真っ黒だったしうなずけますね
戻ってきて
#1プラグをチェック

見事に真っ黒!!
さらに
エアクリーナーをチェック

合掌状態です
しかし、主原因はキャブレターのようです

おやぁCB350Fのキャブですね!
ジェットニードルの磨耗と思われますので
各ジェット類と合わせて交換、フルO/Hといったところでしょう
エンジンの異音について
金属音といった指摘がありましたが
カムチェーンのジャラ付いた音は調整で対応できますが
それ以外の「チャラチャラ」風味のヘッド上部からの音は
カムシャフト、ロッカーアーム、ロッカーアームシャフトなどすべてを新品に替えないとまず消えません
走行距離やオイル管理で磨耗の大小、かじりの有無で音は変わります。
オイル漏れもいたる所から
ヘッド周りは結構いろんなところから出ています。

この場合ヘッドガスケット面からも出ていますから
処置は腰上開けるかたちになり
万一シリンダーにトラブルでも発見したら
ボーリングなんて話にも発展します。
シリンダーに溜まるようになって、ウエアに飛んでしまうようになるまで
我慢するのもひとつの方法です。
CB400Fは発熱量も多くゴムパッキンの寿命は短い為
滲み程度であれば
「もったいないからもう少し乗りなさい」と帰すこともしばしば
今回は微妙なところです
お客様の予算次第で余裕があればやりましょうか?
といったところです。
腰下はミッション、クランクのオイルシールはケースを割らないと交換できないですが
オイルポンプやセルモーターのOリングは交換できますから
腰下は今回処置しておきたいですね。
フロントフォークにオイルの輪

オイルシール自体は新しいようですが
(統合後のエアサス対応のダブルリップのもの)
インナーチューブに細かい縦傷が無数に有る

上部に点錆も見られますから
インナーチューブ交換、
または雪国で乗らない時期の錆が心配であればハードクロームメッキで再生するのもひとつの方法ですね。(ちとコストがかかります)
フロントブレーキも乗ってみてタッチがやわらかく嫌な感じ
事情聴取で車輌を手に入れてからブレーキは何もしていないとのこと
ってことは約6年手付かず????
車検のときにオイル交換程度しかしてないのかしら?
マスターシリンダー

オイルは6年モノということは無いが
一度、長期放置かなんかで内部を腐らせた形跡あり

いやな感じですね、シリンダー内部も荒れていて漏れの原因になってなければよいのですが
レバーブッシュ、同セッティングプレートも不在です。

しばらく分解していないのは確実ですね。

ホースもヒビが入っています。
キャリパーは....

あぁお約束、漏れていますね
フロントブレーキは要全バラ、フルO/Hといったところです。
フロントタイヤ....
TT100 GPが付いていますが

オゾンクラックだらけ
本来要交換ですね。
私的には試乗も遠慮したいレベルです。
このTT100GP、やわらかくグリップするので良いタイヤですが
通勤なんかで使うとセンターがあっという間に無くなる...
乗らないと...山が充分に残っているのにオゾンクラックが発生してしまう
賞味期限内に上手く使い切りたいタイヤです。
ちなみにTT100のGPでない通常コンパウンドのものも存在しますが
こちらは曲者で変な挙動が出るのでお薦め出来ません。
ドライブチェーンもところどころ固着気味
これからお見積もりですが
これまた良い金額になりそうです。
メーカーの交換基準でお見積もりを出して
お客様と相談しながら内容を決めていきます
9/17更新
お見積もりを出して
エンジンに関しては
腰上を開けることになりました。
音の原因もはっきりすると思われます。
ヘッドカバーを外し、カムスプロケットを動かしてみる
きちんと張っていれば動かないのですが
「カタカタ」動く
これじゃカムチェーン音出ますね
テンショナーセッティングボルトを緩め
プッシュロッドを強制的に押しても動かない!?
セッティングボルトを外してみるとおかしいぞ???
まず腰上を分解して降ろしてみましょう
(サイドスタンドブラケットの修理もしますからね)

判るかな〜
穴の奥に縦線が見える
プッシュロッドとケースの境目
そんなの見えるわけがありません
何故か?
斜めに穴開けしてるから
それもプッシュロッドまで切削している。
セッティングボルト緩めても外しても動かないの当たり前ですね。
周辺のオイル汚れが酷いのも
ボルトが斜めに刺さってOリングは居ないアルミワッシャーだけ
隙間からオイル出放題!!
こういうところは確実な作業が必要なところ
「たぶん大丈夫だろう」という
安易な、また確実な作業が出来る自信も無いのに行なう
おっつけ仕事が大惨事に繋がります。
降ろしてみるとオイル漏れの酷さが判ります。
分解した部品
白煙に関しては云われてはいないのですが
シリンダーとピストンに傷が見られます
ピストン

スカッフ(かじり)+縦傷
シリンダー

錆の痕+縦傷
オイル上がりの原因にもなりますが
この辺はむずかしいところ
作業者のストライクゾーンの違いで
「旧車だから多少は白煙出てて当たり前」
なんてスルーしちゃう方も居られるようですが
当店の流儀は状態を見ていただいて
(遠方の方は画像を見ていただいて)
どんな症状が起きるか(これからどうなるのか)
ご説明して
ボーリングする?しない?を決めて戴きます。
燃焼室をみると結構オイルが燃えているようですね
カーボンの量が多いです。
また、バルブステムにも傷

ステムシールが接する部分の傷は嫌ですね〜
ロッカーアームは比較的程度良好

2本だけ側面にかじりがありました。

向こう側ですね。
何故起きるか?

カムシャフトのロッカーアームの当たっている部分とそうでない部分の段差
当たっている部分は磨耗して段差となり、そこは当たりがきつい為かじりやすいですね
また、ロッカーアームシャフトも磨耗やかじりが発生
このエンジンはオイル管理が本当に重要で
定期的に交換して磨耗、かじりを最低限に抑えたいですね。
カムチェーンは唸るほど張っているのに
ヘッド周りがちゃらちゃら、しゃらしゃらうるさいのは
上記のようなものが影響しています。
それこそ、ヘッド、ヘッドカバー、カムシャフト、ロッカーアーム、ロッカーアームシャフトなど全部新品に替えれば静かになりますが
今となっては無理な話。
O/Hをしても、元の磨耗状況によって
完全には消せませんし、エンジンごとに音の大きさは違います
ここもオイルの影響を受けやすいところ

現行車のようにダイレクトにカム軸を潤滑するわけではなく
隙間から浸透させるくさび潤滑ですから
サイドスタンドでの傾けての暖気や劣化したオイルの使用でかじりを発生する場合があります。
減ったものは元には戻りませんからねぇ