昨日お預かりした車検車両
早速試乗するとスロー不調
開け始めのもたつき感
一時停止が多い試乗ルートで走ると顕著に感じる
プラグを確認するがやたら濃いわけではない
エアスクリュー調整でも変わらない
自家用車のタンクに交換し試乗すると症状は消えた

ガソリンか...
即、事情聴取
「ちょっとお聞きしたいのですが
タンク内のガソリンっていつ頃入れたものですか?」
「ガソリンは、行く前の始動暖気の時リザーブになり、3リットル入れてから
シオハウス様に向かいました。
この2か月くらいは、継ぎ足しでいれていたかも、と思います。」
この返事からして日常的に継ぎ足しで乗っている可能性がありますね
例えば今回リザーブで足したということで4ℓ+3ℓで7ℓ、満タン14ℓですから常に半分程度しか入れて無いのかな?
ガソリンの美味しい成分は揮発しますから空気に触れている面積が少ないほうが劣化スピードは遅くなる
満タンに近いほうが劣化が遅いということ
また、置き場が暑くなる場所か涼しいかでも変わってくる
涼しいほうがより良いでしょうね
心当たりがある人は一度ガソリンを全量入れ替えて乗ってみて欲しい
スロー系で顕著に違いが出ます。
さて、午後から足回りの分解だ〜
14時に昼ご飯を食べて
自力でエンジンをO/H中のお客様が新たにばらした部品を見せに来た。
今回はカムシャフトが外れたので診て欲しいという
前回、ヘッドカバーを持ち込まれたときにロッカーアームのスリッパー面はかじりもなくきれいだったので
カムシャフトも摩耗があるもののかじりによる縦スジは無く良い状態です。
これまでのオイル管理が良かったのでしょう
問題点はカムスプロケット固定用ノックボルトの頭を1個舐めさせたこと
ヘッドを外そうとしたら外れないという
サービスマニュアルを見せられ

マニュアル通りナット4個外したがヘッドがびくともしない
横の説明は

「外側から徐々に緩める」とありますが
最初に番号順に緩めてその後は対角で内側に向かって緩めればよい
全部緩めたらナットを外してヘッドを外します。
いぢわるクイズみたいな言い回しが多いので注意が必要
お客様がお帰りになってから車検車両の分解を始める
シリンダーフィンにオイル溜まりを発見

ケースを伝って床にまで落ちている

手前のオイルがそうです
以前ヘッドカバー面のオイル漏れの修理はしたが
ヘッドガスケット面は高速道路走れば出る程度だったので様子見していたが
ここにきてひどくなったようですね
奥のおびただしいオイルはオイルパンから落ちている
覗くと...

オイルパスキャップAから出てますね
更にLカバー内部からも出ているのでカバーを外す

ミッションのオイルシールから出ていますね
オイルポンプも怪しい
腰下のOリングはこれまで手をつけていないので全部やっておいた方が安心だろう
お客様にオイル漏れの打診をすると
「やってください」とのこと
順序としては
足回りの分解〜エンジン分解
このようなスケジュールで今日中に見積もり書いて
明日には作業指示もらい順次作業
金曜日に陸事に行って週末渡せるかな?
購入後初めての車検
これまで単発で修理はしているが
預かりでの点検整備は初めて
元は中古車ショップの広告に出ていた車両を買おうとしたら
タッチの差で売れてしまい
ショップ側で別の車両を見つけてくるよと探してくれたのがこの車両とのこと
納車整備で一部社外品に換えられてはいたが未再生原型車状態であった。
メーターもおそらく実走行だと思われる
フロントブレーキから
ピストンを抜く

堆積物は少ないですね

ピストンに錆も無し
マスターシリンダーのタンクはちょっと汚れあり

ホルダーのボルトはフルードが染みて錆びていることが多い
ホースは細かいヒビが出始めています、交換します

メーカー推奨は4年ごとですが、ヒビの有無やホース内の汚れの堆積で判断しています。
フロントフォークもO/H
結構汚れています。

オイルがATFでないのでO/H歴があるようですね
堆積物もありますが少ないです。
今度はリア
リアホイールを外して
スイングアームを外します
センターカラーの状態は...
ちゃんとグリスが充填されていて良い状態です

いつのグリスか分からないので新しいグリスに交換
ほぼ車体周りは終わり次はエンジン
けっこう出ていますね
御開帳〜

結構、かじりがありますね(画像は上から#1〜)

おのずとカムシャフト側も
#1

#2

#3

#4

この前の車検車両のロッカーアーム、カムシャフトとは大違い
オイル管理が悪く油膜切れを起こしたか
この辺はカムシャフト修正とリビルトロッカーアームで対処できます。
(若干お高いですが純正ロッカーアームもチョイスできます。)
今後減らさないために共にWPC処理も良いでしょう。
カムチェーンテンショナーのスリッパーを見れば
この前のエンジンよりは走行が少ないのが分かります

上がこの前のエンジンのもの、下が今回のエンジンのもの
摩耗深さが違います。
カムスプロケットのボルトを外す際に自分はこんな外し方をします。
T型レンチを使って外します。

高強度の緩み止め剤が使われているとかなり固いです。
マニュアル通りに外から対角にナットを緩めてヘッドを外します。
ヘッドの具合は?

多分初めて開けたであろうヘッド
シールワッシャーの座面も荒れてなく良いですね
カムジャーナルもきれいなものです。
あぁ、シリンダースタッドガスケット部から漏れたかな
シリンダーを外します。
シリンダーガスケット面から漏れはなかったが
万一後から漏れた場合にまた開けるとなるとお客様に大きな負担を掛けることになるので
思い切って外します。
ピストンが露出、診てみると
#1、#2

ありゃスカッフ(かじり)がある、これは暖機運転もせずに高負荷運転したり、油膜切れでかじります。
#3、#4
このようにオイル管理が悪ければ距離が少なくてもダメージを与えてしまう
また、暖気運転の重要性も覚えておいて欲しい
お約束でスタッドボルトは手で緩むし

※ヘッドのキャップナットが緩かった訳ではない
最後にシリンダー内壁のチェック
「なんですと!」
#1

#2

#3

#4

#1、#2シリンダーの錆の跡が酷い
走行距離が少ないということは乗らない時間が長かったということ
その間に錆びてしまったのだろう
ここまで深いとオイル上がりの原因にもなる
オーバーサイズピストンでボーリングするしかなかろう
純正ピストンに拘るならスリーブ入れ替えで対応もできるが
かじりがあるから交換したほうが良いだろう
内燃加工が入ると長居決定です。
今日はこんな状態
これから見積もり作成です。
頑張ろう