今週のお預かり車両はCB400F、それも貴重な国内408
依頼事項は「キャブレターのO/H」と「ウオタニSPUフルパワーキット取り付け」

「発進時のもたつき、再加速時のもたつき、燃費が悪い」とのことで
昨日お預かりしたときにオーナーさんを待たせて試乗、
軽くその辺を試乗してみるとキャブはとんでもなく調子が悪いわけでなく
ステアリングの重さのほうが気になった。
戻ってきて軽く粗探し
エアクリーナーを診ると
ありえない状態
居合わせた他のお客様も苦笑

メインハーネスもおかしな取り回し
テスト用のエアクリーナーと比較

試しにテスト用に交換してひとっ走りしてもらうと
戻ってくるなり「全然違う!!」と
もちろんエアクリーナーの詰まりでも燃費に影響する
タイヤの空気も少なかったからなおさら
「エアクリーナーだけで良いんじゃないの?」と聞くと
O/Hは絶対にやりたい様子
聞けば車両を買ったばかりだが調子が悪く乗っていなかったとのこと
万全の状態にして乗りたいのだろう
エンジンを掛けてみるとキュルキュル音が酷い
これは聞きなれた音
ポイントカムの油膜切れ
グリスホルダーで油分を供給しますがカラカラで用をなしていない
グリスUPで一発解消
今日は日曜日だがあまりに寒くお客様は来ないだろう
当店の場合、おっさん率が高く寒くても暑くても来訪者が少なくなる
午前中にデスクワークを済ませ午後から診始める
まずはタンクを外してざっと一回り粗探し
サイドスタンドのブラケットはオリジナルのままこれは貴重ですね

しかし、よ〜〜〜〜く覗き込んでみると溶接のビードの端に錆が見える

ダウンチューブも若干凹んでいる????
もしかしてクラック入っているかも
サイドスタンドボルトもスプリングも塗ってある
(スイングアームピボットボルト/ナットも同様)
ばらさずにペイントしたのか!?
ケーブル、ハーネスの取り回しもオリジナルと違いますね

メインハーネスはステムの下を、スイッチのハーネスはフレーム右側からメインチューブの上を通り左側へ
ブレーキホースにはクラック

この辺は当時物にはこだわれません、交換を具申します。
ってことはキャリパーも怪しいな
どれどれ
ん!
パッドの色が違う

それはブレーキフルードが染みているから
パッドを外してみましょう
あぁ嫌な予感

しっかり漏れて濡れています

漏れている痕跡もくっきり
左フロントフォークにオイルの輪

ダストシールを外し中を確認
オイルシール自体は当時物ではなく統合になった現行品
しかし、溝にオイルが溜まっている

何だろう?困ったなぁ
チェンアジャスターがあり得ないほど引かれている

調整しろはあとわずか
かといってチェーンはだるんだるんに伸びているわけではない

これはチェーンのコマ数を間違えているに違いない
実際数えてみると本来96リンクのところ98リンク
パーツリストを見れば書いてあるのに〜
ブレーキシューも減ってアジャスターでここまで引っ張って
ブレーキロッドの調整も一杯です。
Lカバーを外すのにばらしたチェンジペダル
何時のグリスだか?乾いています。
どこから漏れているのかオイルが流れた痕跡

厚みのあるドライブチェーンが使われていてクランクケースを削ってある
その時に出た金属粉かスプロケ前方のオイル汚れはキラキラしています。
さて電装系
ん!バッテリーアースケーブル何故そこに!?

見上げればバッテリーのブリーザーホースが居ない!?

落とした??
ヒューズボックス、古そうなのでチェック

蓋を開けると...メインヒューズの根元溶けていますね

裏蓋を開けると...
これ以外にゴムパーツはけっこうきています。
さて、いよいよキャブに着手、差し当たり#1キャブのフロートチャンバーを外してみましょう
合わせ目からはみ出ているものに不安全開

ドレンからガソリンを抜きますよ

なんかゼラチン状の塊がたくさん出てきました。
液ガス使ったな...
ドレンボルトのOリングを見ると交換歴はしばらく無さそう

ビス4本外してフロートチャンバーを開けます
案の定...

液状ガスケットを塗りすぎて内側にはみ出たものが剥がれてフロートチャンバー内に浮遊していたのでしょう
その塊がジェットを詰まらせたかマフラーが一部焼けて変色している
ジェット類を外しました

ニードルジェットの摩耗の確認、これは新品と比較しないとわからない

減ってるので交換です。
昨日他のお客様が
「エアスクリュー、純正品を再メッキしている」と言っていましたが
これだけ再メッキはないでしょうからおそらくオリジナル
他の部位のメッキはやれているのにここだけきれいなのはおそらく樹脂キャップが付いていたのではないでしょうか?
どこかのタイミングで外してそのままになってしまったか?
エアスクリューの調整時には邪魔なだけ、外して調整してまた付けておくしかし#2、#3キャブは脱着が非常にやりづらい
実際うちでも全部についていた場合は両サイドだけ付けてセンターの2個はお客様にお渡ししている。
とりあえずキャブレターを外す
フロートチャンバーを外し、ジェット類も外してみた
酷いな
O/Hすればきれいになるのか聞かれたが
鉄部品は再メッキできれいになるが
キャブボディは無理、このキャブの特に#4は表面があばたになっている

漬け置きタイプのキャブクリーナーに長時間漬け過ぎていないか?
材質が亜鉛ダイキャストのキャブは注意が必要
それを裏付けるのがダストプレートAとC
ゴム部品を付けたまま浸すと硬化してしまう

注意して外してみたが上側の小さい丸の部位が3個割れてしまった。

Pekeさんとこのリプレイス品に交換です。
あらかた分解しました

鉄部品の再メッキを行う場合はさらに分解します。
何気なくマフラー出口を触ると...

ずいぶん粘り気がある
エンジン掛けてすぐなら水蒸気で濡れることもあるが
時間が経っているのでオイルを噴いているのだろう
プラグを外しピストンヘッドの状態を確認

ピストンヘッドのインテーク側にカーボンが付着しておらず地金が見えている
中には全面濡れているところもありオイル上がり/下がりが疑われる
ただし、それでプラグがかぶって不調になっているわけではないので
オイル漏れが始まるまでオイル量をチェックしながら乗っていてもらえば良いだろう
とりあえず概算見積もりを出してお客様と相談で決めます
実際、車両の状態を考えると
ブレーキ周りはやったほうがよいでしょう
命に係わる重要保安箇所です。
キャブはやらないといけませんが
予算が潤沢にあるなら全箇所
限りがあるなら点火系は問題ないのでウオタニは次回に回して
足回りや電装系をやっておきたいところ