11/12(土)今日の予約修理はCB400Fのスタッドボルト折れ
事前の事情聴取ではフランジのナットを締めたときに折れたとのことで
難易度は低いと感じ待ち修理でお受けした。
これがスタッドボルトを緩めようとして折れた場合は話が別
まったく動かずボキッと折れた場合は錆びて固着の可能性
少し緩んで動かなくなり折れたらねじ山のかじり
これは非常に厄介です。
以前にも#4の外側のスタッドボルトが折れて購入店で修理済みとのこと
他も全部交換を希望すると断られたらしい!?
今回折れたのは#2の外側

「2本目なら他も折れるリスクは高いので全交換しましょう」と提案
この一言が悪夢に繋がるとは思いもしなかった。
エンジンが冷えないうちに作業を開始しましょう
マフラーを外して、ポートを塞ぎ

冶具をセットしてドリルで揉みます
ど真ん中に貫通しました。

浸透潤滑剤を内部にも塗布して

逆タップでアタック

しかし、まったく動く気配が無い
何度も潤滑剤塗布〜ボルトを叩く〜逆タップを繰り返すもまったく手ごたえがない
また、慎重に作業しないと逆タップを折っては意味が無い
では、エンジンが冷めないうちに他のボルトを外しましょう
ダブルナットで緩めようとしますがまったく動く気配が無い
なんだぁ!?
こんなところにネジ緩み止め剤、それも高強度のものを使ってるな!
仕方なくバーナーでスタッドの根元のヘッド側を思いっきり炙り

なんとか緩んだ(それもほんのわずか)
しかし、それでもすんごく固い
潤滑剤を掛けながら緩めては締めを繰り返し時間を掛けなんとか外れ始めた
ねじ山の隙間には緩み止め剤があり潤滑剤が浸透しない
以前#4のスタッド折れの際、購入店が断ったのはこのためですね
外側の折れたものはドリルでどんどん拡大しながらボルトを削り最後はヘリサートでフィニッシュ
内側のを外そうとして思いっきり固かった為他のスタッド#1〜#3は断ったのですね
それは正解だったかもしれません
#3最初に外側から
いくらバーナーで炙ろうがまったく動かず努力の甲斐なく折れてしまいました。

次、内側は折れたらエンジン降ろしての作業が必至
これも時間を掛けて同様の作業をしましたがまったく緩まずあえなく折れてしまった。
ダブルナットの内側のナットは角が舐めたら交換
外側の高ナットは叩く為変形が大きくなったら交換
でこの有様

ここまでの作業で2時間費やしました。
この週末は嫁が出かけていて不在の為
14時からは事務所側に居ないといけないし
部品の出荷もしなくちゃいけない
そのため急遽預かる形になります。
この日に入庫予定の来週分の予約車両のお客様に電話して代車の要否を確認
不要とのことで代車で帰っていただくことにしました。
閉店時間の19時を回りましたが
遠方より工具を買いに来るお客様を待ち
入れ替わり仲間の金属加工業者が来て
作ってもらう冶具の打ち合わせ
その後にエンジンを降ろすための段取り
下側前後のマウントボルトは残し
後は降ろすだけ状態にして
実際下ろすのは翌日にしましょう
(明るいときにやりたいですからね)
翌日曜日
午前中は安全運転講習会のお手伝い
帰ってきてから
エンジン降ろしマシン大活躍

緑矢印が以前に修理したところ(#4)
赤矢印がお客様が持ち込んだときに折れていたところ(#2)
黄色矢印が店主がアタックして緩まず折れたところ(#3)
赤矢印のところはすでにセンターに穴開け済み
ところが緑矢印の#3はスタッドが両方無く
センター出しの冶具がセット出来ない
このエンジンはスタッドボルトが全部同じ方向を向いている訳ではないので
角度出しが非常に大変
根本的に
「なんでエンジン降ろさなくちゃいけないの?」
と疑問に思う人もいるかと思いますが
それは
「正確な作業をするため」
#2と#3の内側のスタッドボルト穴修正はフレームのダウンチューブが邪魔になって作業がし辛いということです。
これからどのようなアプローチで進めるか思案のしどころです。
「折れたところだけしか手をつけなければ良かったろうに」
といわれそうですが
これは性格的なものですから仕方が有りません
いい勉強になりました。
「こんなところにネジ緩み止め剤を使う人が居るんだ!?」
ということ、折れたらどうなるのかを考えたら絶対に出来ないことですね。
これまで数えきれないほど多くのエンジンをO/Hしてきましたがこんなのは初めてです。
(CBX,CBRでも固いのが有りますが、ヘッド側が8mmだからより締まっているということ)
運よくお客様はセカンドバイクもお持ちなので
時間掛けて作業させてもらいましょう