ようこそ、お入りを・・・。

2014/9/30

正午茶事1  他会記
先日
ある方から
ご自宅でのお茶事のお招きを受けました

客は
私ともうひとかたの二人


当日は
緊張と感動の中で
一日が過ぎ

その後三日ほどは
余韻にひたっておりました

やがて
自分の茶人としての振る舞いの未熟さばかりが
思い返されてきて

後悔しきり
心が落ち着かなくなって参りました

しかし
1週間たって
そんな心の波風も徐々に静まり

ようやく
冷静な気持ちで
此の度のお茶事を振り返り

「楽しかったなあ・・・!」と

素直に思えるような
心境になってきました


今日は
その一会の思い出を
あらためて味わい返しながら

感謝をこめて
記事にしたためてみたいと思います


お道具のことを書くのは
差し控えさせていただきますが

よろしければ
少しの間
お付き合いくださいませ

記事は
茶事の流れに沿って
上から順に1〜12となっております
9

2014/9/30

正午茶事2  他会記
日取りのお約束をいただいたのは
一と月ほど前のことでした


しばらくすると
巻紙にしたためられた
墨の色も瑞々しい
招待状が届きました



本当に
お招きいただけるのかと
初めは半信半疑だった私ですが

いただいた美しい招待状を何度も読み返し
こんな有難いことはめったにないことと
お受けする覚悟を決めました

硯箱と巻紙を取り出し
孤軍奮闘
なんとかお返事を書きました 


やがて
お約束の日が近づき

前礼は
お省き下さいとのことでしたので

お葉書で簡単に
必ずお伺いする旨をご連絡しました



当日は
用意していた列車の切符を手に
早めに家をでました


連客の方と
早朝 時間通りに駅で待ち合わせ
定刻の25分ほど前に無事到着


入口前の小路には
たっぷりと水が打たれ

「在釜」の木札が
掛かっています


手がかりにそっと手をかけて
玄関に足を踏み入れました




8

2014/9/30

正午茶事3  他会記
玄関に入りますと
目の前の障子戸に
少し手がかりが開けてあります


その手がかりから
そっと中をうかがうと

暗闇に莨盆の火入れの小さな火が
赤く浮かんでいます


おもむろに障子戸を開き
連客と二人
寄付へと上がりこみました


ほとんど
光の届かない寄付の中では
暗さに目が慣れず

目を見開いてみたものの
何も見えません


ただ
部屋の中央に置かれた
莨盆の火だけが
静かに私たちを迎えてくれています


暗がりの中
道中着ていたコートをたたみ
席入りのための支度をしていると

襖が静かに開き

ご亭主自ら
お白湯を差し出して下さいました

梅の入ったお湯でした

やがて
少し目が慣れてきた頃

壁に掛けられた掛物を
拝見させていただきしました



此の度のお茶事をしてくださる
ご亭主の思いが感じられて
胸がじーんと熱くなりました


気づくと
部屋の隅の文台の上に
硯箱と紙が置かれていました


暗くてよく見えないので
少し障子戸を開けて
外の明かりを入れて

墨をすり
書き方などよくわからないままに
署名を書かせていただきました



さて
露地へはどちらへ出たらよいのかと
部屋の中を見回していると

先ほどの襖が開き

ご亭主が汲み出しを引きに現れて
露地への降り口を指し示してくださいました

暗くて見えなかっただけかもしれませんが
思いがけないところに
出口が作ってあり

私は
まるで忍者のからくり屋敷のようだと
思いました


半東さんに
お預けするつもりにしていた手土産などは
この時
ご亭主にお手渡しさせていただきました




8

2014/9/30

正午茶事4  他会記
ご亭主に教えられた戸口を開けますと
そこは露地への降り口となっていました

用意されている露地草履を履き
露地に足を踏み入れますと

左側に縁側があり
円座と煙草が置かれていました


円座といっても
藁やい草のではなくて
丸い柔らかなお座布で

さっそくその上に腰を掛けさせていただきました


あらためて
目の前の坪庭風の露地に目をやると

文字通り塵一つなく

綺麗に整えられた
黒っぽく美しい土が
形よく盛られています

奥には大きな灯篭が据えられ

ところどころに
葉蘭がリズミカルに植えられていました


露地全体に
ほどよく水が打たれていて


ほんの少し前に
ご亭主がこの場所で
心をこめて清められていたお姿が
目に浮かびました


気づくと
私たちが腰掛けているすぐ横には
蚊やりが置かれ
ご亭主の細やかなお心遣いを感じました


心洗われる思いで
静かに
露地の風情を味わっていますと

やがて
茶室の方から
ご亭主が釜をあらためられている音が
聞こえてきました


ややあって
座を掃く音



ご亭主が蹲踞をあらためておられる音が
聞こえて参りますと

緊張は
いやが上にも高まって参りました



そして
ご亭主が近づいて来られる気配に
中潜りに歩みよりますと

潜り戸が開き
ご亭主がすぐ目の前に
蹲っておられます


私も腰を低くして
御挨拶をしようとしますと

ご亭主が
小声で「どうぞそのままで」と
おっしゃいます

着物の裾が
打ち水された露地の土で濡れることを
気遣ってくださったのでしょうか・・・



お言葉に甘えて
軽く腰をかがめ

頭だけを低くして
無言でご挨拶をさせていただきながら

私の胸の鼓動は
感動で高鳴っておりました







8

2014/9/30

正午茶事5  他会記
迎え付けを受けた後
私たち二人は一旦腰掛に戻り
呼吸を整えてから

あらためて
中潜りに向かって
歩を進めました


頭を打たないように気を付けながら
潜り戸の内側へ入りますと
左側に蹲踞がありました


蹲踞の海には
ちょうど
ビリヤードの玉のような
形の整った石が
濡れて黒く光っていました


柄杓を取り
習い通り手と口を浄めます


いよいよ
席入りです
7


AutoPage最新お知らせ