2009年3月29日 日曜日
従業員や構成員(以下従業員)に企業や組織(以下企業)の目的が共有されていることは、その企業や組織が生きた活動をするために必要なことです。
組織と個人の目標が異なっているとき、構成員と組織は反目しあいます。バラバラでは力を発揮できません。
しかし、多くの場合、それは中途半端です。まず企業じたいの目的がそれほど明確になっていない場合があります。
それでも営利企業の場合には収支を通じて組織が存在することができるかどうか決まるので少なくとも「利益」を出す、ことが求められます。
その利益があまり全面に出ない他の組織ではどうでしょう、倒産の心配のない公務の組織、国家の補助金をもらっている組織などです。法律に裏付けられた存在意義はありますが、それを言葉に出して言うことができる、中身を理解している、という構成員は少ないでしょう。幹部になれば言うことくらいはできるでしょうが。
このような組織の場合所属する組織の目的を言うことができる・理解している従業員がどれだけいるかという数値的な目標が問題にされなければならない、これは時間がかかります。昨日のような今日を過ごすだけで給料がもらえます。とりあえず、倒産の心配がなければ、そんなことをしようとする発想じたいが出ません。
もうひとつ、理解の深さとも言えますが、組織の目標の理解が自分の行動にどの程度影響を与えることができるかを計るモノサシが必要でしょう、「組織の目的が理解できているから従業員や構成員が自主的に物事を判断できる」というレベルから「組織の目的は理解できているがお客さまのクレーム処理などには反映されない」とか「新しい提案には結びつかない」などのレベルまでです。
日本の企業はどうも精神論で行っちゃってるところが多いと感じます。今の時代、経営計画とか、経営戦略を作っている企業は多い(それが神棚に祭ってあったり、ホコリをかぶっていることも多い)と思いますが、それでも社長からは「従業員のやる気が足りない」という言葉を聞きます。
もちろん、自分の使命とは何か、自分の生命のよって立つ存立基盤は祖先から与えられたものではないか、こういうこととのつながりを意識すれば、例えば座禅を組むとか、問答を繰り返すなどによって、自らを精神的に鍛え昇華することまで高められるものでしょう、つまり最後には精神論です。
そんなことをする従業員にはいません、そこまでの人は自分で事業を起こします。今勤務する企業にないものを求めて、自らを高めようと新しい道を切り拓ける人です。
だったらどうするか?このような企業において全員の意識を高める方法があります。
まず、企業の目標を明確にする前に社長さんご自身の実現したい価値観を明確にする必要があります。次に会社のドメインです。これも明確にしておく必要があります。「儲けられるだけ儲ける」みたいなのはダメです。社会や消費者の関係で位置づけることが必要です。
そして次に来るのが今から記述する方法により具体的問題を解決に結びつく目的の享有=共有です。
1、業務や事業に関わるすべての関係者の意見を聞き出します。
ステークホルダー、つまり企業にはいろいろな利害関係者が存在します。まずお客さま、従業員、経営者、金融機関、行政、地域など、実にさまざまです。目的に従ってフレキシブルに射程範囲を決めればいいと思います。
例えば、ある商品・製品の問題についてならば、上記のような大枠で捉えるのではなく従業員はさらに細分化されます。作る、販売する、そしてその間にロジスティックが入ります。さらに作る前段階には購買や下請けで協力してくれている下請け会社も、その下請け会社の従業員も入ります。
これら利害関係者のナマの声を聞きだすわけです。これらの中ででてくる自社の課題(自社への要望→自社の課題)、自社への不満(自社への不満の解消→自社への満足)、自社への意見(自社へのより大きい期待→自社へのコミットメント)をメンバーで明確化するためのディスカッションを行ないます。
もちろん、利害関係者の意見は「利」「害」があって、あちらを立てればこちらが立たず、議論の過程では、こういう場面がいくつも出てきます。しかし、それを調整していくことが、自らのプライオリティーを明確にする過程でもあります。
2、小目標をツリー化する
このようにして出された一つ一つの要望・不満・意見を抽象化してナマの声を体系化していきます。
そうすることで自分たちが何をしなければいけないのか、ということが明確になり、はっきりします。同時に自社の持つ強みや弱みを意識することができるようになります。それを基に抽象化したレベルでの行動目標を設定します。
つまり問題の所在が明確になれば、その問題を解決すれば問題はなくなります。たとえば「食品の日持ちが悪い→食品の日持ちを長くする」というレベルから、さらに何によって日持ちを長くするか、包装か、添加物か、加工方法か、材料か等々の選択肢を基に細分化していきます。
抽象的なものから具体的なものへのブレークダウンをしていきます。やや行動目標ともなりうるところまでブレークダウンできたところで、もう一度逆にそのことを抽象化する議論を進めます。企業の「本当の目標とは何か」抽象化するようにさらに議論を続けます。
それぞれのステークホルダーの「意見」が、理念によって修正・昇華し企業のやらなければならない価値観と混じりあい、一つの実現すべき目標が言語化されます。そういう議論を続けるわけです。日持ちを長くするという課題に対してその後ろにある価値観、例えば他の類似品に対する比較だったり、個別の店舗の在庫管理だったり、消費者の当該商品に対する人気のバロメータだったりするわけです。そこを明確にする必要があります。
「個別の店舗の在庫管理が大変だから日持ちを長くしてほしい」ということなら、ロジスティクスをも含めたリテールサポートが必要だということです。リテールサポートの効率化やメニュー開発のために参加者が自発的に動くことができます。
3、このように進むと参加者が自らの課題について方法や費用対効果を調べたりヒアリングで聞いたりできるようになります。
これこそが一つの目標を共有化することに他なりません。お客さまから言われるクレームを処理することは大事ですが、さらに突っ込んでいくとクレーム処理を企業の目標に基づいた従業員の行動に結びつけることが可能になります。
通常はトップによる指示・命令ですが、正しい指示・命令であっても、従業員にはその正しさや意義が自分自身のものとして理解できません。ましてその指示・命令が従業員の考えていること、お客さまの求めていることと相反するものであったときには、行動を躊躇する原因になったりトップへの不信感に繋がります。
従業員を目標設定に参加させることで、従業員みずからが目標に基づいた行動を選択することの意義は限りなく大きいのではありませんか?

0