平成20年11月29日(木曜日)
国民健康保険の未払いによる国民健康保険証がないために医療保険にかかれないヒトがいます。いわゆる無保険証者・無保険証児です。報道され尽くした感じがします。
さて、事実を見てみます。病気や収入の激減などの事情がないのに国民健康保険料を1年以上滞納すると保険証を保険者である市町村に返さなくてはいけません。そのようにして全国で保険証がない世帯が33万世帯あります。そのうちの約2万世帯3万人の子供が保険証がないということです。
病気やケガをしやすい子供の問題はマスコミでも報道され短期の保険証を交付して対応できるようになりました。しかし親はどれだけ重病でも病院にかからずに我慢しているのが実情です。風邪や軽度の腹痛で一過性のものならいいでしょう、たとえば末期がん罹患者はどうでしょうか?
被保険者の場合には病院にかかると通常3割の自己負担分を払うだけで済み、残り7割は病院や診療所から保険者に支払われます。
保険者証がないと医療機関にかかったときには全額を払い、そして保険料を払うと自己負担分を除外して戻してくれることになります。7割を払い戻ししてほしければ滞納分を一括して払うか、払い戻しをする分を保険料に充当するか、どちらかになります。一部払い戻し・一部充当という制度もあると思います。これを償還払いと呼びます。
政治の世界で行われることですが、このままではアメリカの無保険と変わらなくなります、というか日本もそういう制度作りを目指しているのでしょうが。
マイケル・ムーア監督の「シッコ」を観られた方も多いと思います。日本語のカタカナ表記では苦笑する題名ですが、SICKの俗語SICKOだそうです。医療機関が保険会社の経営になっているために告知がなかったとか、あなたの保険ではその治療は対象外だとか、指の欠損に対してどちらを手術するかとか、保険に入っていない場合には最初から医療機関にはかかれないので自分で怪我を縫合するとか・・・・・!
保険会社が儲かるためには医療を抑える、医師もそう動かざるをえない、その代わり最先端医療もできる仕組みです。アメリカの医療費支出は世界で突出していますが、実態はこの仕組みにより民間保険による高度医療に莫大なお金がかかっているのだと想像します。
キューバの医療はわかりません。今年キューバ革命の英雄チェ・ゲバラの長女アレイダ・ゲバラ氏が来日してましたが、キューバは医療には力を入れているようです。ただ、どの程度の質が確保されているかは、気になります。
旧ソ連時代、直接ではありませんが空港での医療給付を見たときには、とても医療といえるものではない、と感じたからです。白衣は汚れ、救急にしろ器具は少なく、薬も道具も満足にはないことが素人のわたしにもわかりました。
よくソ連などの医療や教育が無料だという社会主義国の宣伝を聞きましたがそれを見聞したときの感想は「これでカネ取ったら怒るぞ!」です。その後ソ連の医療費無料についてタダより高いものは無いとの評価を見て納得しました。
アメリカもAIGなど保険会社は実質倒産しているのですから、これから保険事故が起きたときには支払が抑制されることは当然予測できます。他人の命より自分の儲けを優先するでしょう。
それがきっかけで国民皆保険の導入のきっかけが作られるかも知れません。シッコで指摘される以上の保険料支払抑制が行われていると。とくに100年に一度の経済危機対策として、何らかの社会保障を打って国民を救済しなければならないわけですから。
またクリントン民主党時代には医療保険制度導入をしようとしたものの保険会社の反対で実現しなかった経緯があります。保険会社は事実上国営化企業なのですからNOとは言えないでしょう。
アメリカの保険制度ができるかどうか、対岸の火事ですが、日本の行政もそろそろ新自由主義的な政策を転換すべき時期ですよ。そもそも滞納者を減らすという対策を作る際には国庫負担の増加を恐れる厚生官僚の意図があったはずです。無保険の子供たちが一定の確率で出てくることは当然予測できていたはずです。それを無視したのか、あるいは気づかなかったのか。どちらにしても制度設計が狂っています。政治の選択が官僚を動かす行政にすることは急務です。

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