2006/5/16
先日、レッスン中に中学生の生徒さんからこんな相談を受けました。
「先生、キーがゴチャゴチャいっぱい付いてるクラリネットって知ってます?」「マウスピースも変な模様が入ってるんですよ〜。」これを聞いてエーラー式(ジャーマンシステム)のクラリネットの事を言っているのかな?と思い、「マウスピースの模様って縞々の溝みたいな模様じゃない?」「それから、小指のキーの形や数が全然違う奴でしょ?」と聞き返すと「そうですそれです。」との返事。

「あ〜それはね・・・」と日本で多く使われているベーム式(フレンチスタイル)のクラリネットとの違い等を話そうとすると「1年生がインターネットで買って来たクラリネットがそれみたいなんですよ。」「どうやって教えれば良いですか?」と深刻な顔で相談して来ました。
「顧問の先生は怒っちゃって『勝手に練習しろ!』と言ってるんです。」と切迫した状況も。
「インターネット?」「それってプラスチックのクラリネットじゃない?」聞き返すと「そうです。」「先生知ってるんですか?」との返事。
「きっとネット販売やオークションで見かける3万円弱で売られているものだろう。」と想像が付きました。
ちょっと間を置いて「それを教えるのは難しいと思うよ!」「それから、リードもこの辺じゃ手に入らないし、運指表も手に入らないと思う(※運指が全く違います)。」「申し訳ないけどどうしようも無いね〜。」
「えっ?そんなに色々違うンですか?」寂しそうな生徒。
お母さんが娘の為に買って上げたらしいのですが、それがアダになりきっと家庭内も・・・色々な状況が頭に浮かびます。
「何とかしてあげたい。」「でも、どうしよう。」と考えた時に我が家で眠っているクラリネットと交換してあげる事を思いつきました。
お母さんと何度か連絡を取る間にその楽器と交換する事で一見落着。
これで家庭内も部活も平和になり、安心して音楽を楽しんでもらえると良いのですが・・・。

交換した後、その楽器を色々とチェックしたのですが、この楽器問題が多いです。
キーが2カ所曲がっていて吹ける状態ではありません。まぁ、これは扱いに慣れていない中学生が曲げてしまったのかもしれませんので、大目に見るとして、問題は出荷調整も楽器のチェックもした形跡が全くない事です。
有るべき所にコルクが無い。キーの調整が出来ておらず、正常に作動しない。
コルクが剥がれた跡や接着剤の跡等は見当たりませんし、キーの形状や調節ネジの位置等から、これらは始めからの物と思われます。
安いとは言ってもこんな吹けない状態の楽器を平気で売るとは・・・。
楽器の作りそのものは(値段の割には)悪く無いので楽器も可愛そうです。
喜望峰のリペア技術なら良い楽器に仕上げられるのに・・・。
楽器を販売する方々は「安くても責任持てない楽器は売らない。」「リペアに最善の努力を惜しまない。」etc. と言う喜望峰の社長を見習ってもらいたい物です。
この楽器を喜望峰の社長が見たら悲しむでしょうね〜。
喜望峰のお陰で安くても良い楽器があると言う事が多くの人に知ってもらえる様になっている一方で、一部の業者が未調整のいい加減な楽器を安売りすると「やっぱり安い楽器は使えない。」と言う印象を多くの方に持たせてしまうかもしれません。
私も悲しいですし、こんな状態の楽器を平気で売っている方々に怒りも感じます。
このままでは、もったいないので喜望峰で調整してもらえないか聞いて見るつもりです。
調整は本来は販売した業者が責任を持ってしなければならない事のはずなのですが・・・出来れば始めからしてますよね!
楽器の事が良くわからない方は安さだけでなく信頼のおける楽器店か、楽器に詳しい方のアドバイスを聞いて買う様にして下さいね!

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